地域課題の解決は対話から始まる

丸亀市産業文化部 文化課 課長 村尾 剛志さん

Interview

2023.02.16

丸亀市役所との縁は、大学時代、卒論実験への協力を依頼したこと。「敬遠する市町も多かった中で、丸亀は快く協力してくれたばかりか、当時の公園緑地課長に『悪いデータだけちょうだい』と言われたのが面白くて。その人に誘われたのが、今に至るきっかけです」。スーパーゼネコンに就職が内定していたが、身近な人に見守られながら自分の力で地域に貢献できるかもしれないことに惹かれて、造園専門職として公務員の道を選んだ。

「本当の自治」は市民が主体

入庁まもなく都市公園の建設計画に携わった。ゼロから自分が描いた図面がパブリックな形になっていく面白さの半面、「本当に市民のための場所になっただろうか?」という思いも抱えるようになる。

そこで、防災公園や丸亀市民球場の整備に当たっては、さまざまな状況にある人々が対等に話し合う合意形成の場として、当時まだ先進的だったワークショップの手法を導入。市民活動団体をはじめ多くの生の声に触れ、「市民が主体となり地域課題の解決を進めていくのが本来の自治ではないか」と気づく。以来、その実現を目指すのがライフワークとなった。

2015年に完成した丸亀市民球場は、野球場としての機能だけでなくバーベキュースペースや芝生広場を備えた多彩なイベント会場として、市民が広く活用できる画期的な施設。村尾さんは17年3月に同球場で行われたプロ野球オープン戦を見守ったのち、4月から文化課に異動した。

新市民会館は人々をつなぐ場に

座談会の様子

座談会の様子

文化課で取り組んでいる一大事業が、新市民会館「みんなの劇場」の建設だ。「球場の計画では、来たくても来れない人やスポーツに興味がない層にまではたどり着けなかった反省がありました。文化施設はさらに利用者層が限られる印象があり、『劇場から最も縁遠い人たち』にどうアプローチすべきか、当事者の声を聞くところから始めようと座談会を企画したんです」。課題をオープンに投げかけ、行政との対話から自分たちなりのアイデアと着地点を試行錯誤してもらうプロセスこそが「参画」だと力を込める。

それまで育んだ市民団体らとの連携をベースに、子育て中の母親や障がい児を持つ親たちをはじめ、のべ3000人超と対話。学校や地域も把握しきれていないさまざまな課題と、そこで孤立する人々の姿を目の当たりにし、「みんなの劇場」は「文化芸術をきっかけに人が集い、新しいつながりを生む場所」とする方針を打ち出した。順調にいけば4月に着工するという。

今も心に残る「悪いデータだけちょうだい」という言葉は、目の前の課題を逃げずに見つめる村尾さんの在り方を支える。「今孤立している人たちの課題は誰もが陥りうる潜在的なリスクであり、それを予防的に解決していけば、孤立させない社会につながるはず。『みんなの劇場』は、単なる文化施設ではなく将来の丸亀市への投資だと思っています」

戸塚 愛野

村尾 剛志 | むらお つよし

略歴
1969年丸亀市生まれ
1989年 香川県立丸亀高校 卒業
1993年 香川大学農学部卒
    丸亀市都市経済部公園緑地課 入庁
2015年 生活環境部スポーツ推進課ホームタウン推進室長
2017年 産業文化部文化観光課副課長
2018年 同部 市民会館建設準備室長
2022年 同部 文化課 課長

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