市場を開拓し 暮らしにもっと彩りを

スリーキューブ 社長 後藤 幸祐さん

Interview

2023.02.16

綾川町東分のスリーキューブ香川支店

綾川町東分のスリーキューブ香川支店

必要とする人のもとへ

「そうは問屋が卸さない」

古いことわざがある。「物事はそれほど都合よくいかない」という意味で、背景にあるのは、安く商品を買おうとしても、仲介する問屋が納得しないと売ってもらえないというシーン。主導権は「問屋」にある。

だが、「今の問屋は、昔ほど強くないですから……」。スリーキューブ社長の後藤幸祐さん(47)は苦笑する。「でも、何とか問屋を復権させたい。問屋の存在感をもっともっと高めるのが私の大きな目標です」

スリーキューブは家庭雑貨を取り扱う卸売業者。「“家庭雑貨”とは、家をひっくり返したら落ちてくるもの全てです」。香川、愛媛、高知それぞれで100年以上の業歴を持つ3つの老舗卸業者が、将来の人口減を見越して業務の効率化を図ろうとタッグを組み、2013年に設立した。香川が拠点の「株式会社後藤」を継いだ後藤さんが舵取り役を務める。
大量の商品が保管されているレックス総合物流センター=綾川町東分

大量の商品が保管されているレックス総合物流センター=綾川町東分

抱える商品は約4万点。設立以降順調に売上を伸ばし、中四国のスーパー、ホームセンター、ドラッグストアの雑貨売場には、スリーキューブが卸した商品がずらりと並ぶ。ネット通販向けの卸しも好調だ。その強みについて後藤さんは「商品の“出口”が多いこと。あとは……大手ができないことをやっていることですかね」

ドラッグストアやスーパーでは置いてもらえなくても、ホームセンターなら置いてもらえる商品もある。その逆もしかり。また、ライバル会社や大手EC業者が扱わない「輸送コンテナに入らない大きな商品や長さのある商品」「一定額に届いていない安価な商品」「あまり売れない商品」でも、もれなくカバーする。「採算が合わないからと“大手が捨てた”商品でも、必要とする人はいます。私たちまで取り扱いをやめるわけにはいかない。たった一人しか必要としていなくても届けるのが、我が社の社会的責任であり、矜持でもあります」

得意の中国語生かし海外へ

後藤さんが特に力を入れるのが海外展開。日本から家庭雑貨を輸出し、アメリカ、カナダ、台湾や中国など世界12の国と地域の小売店や輸入商社に卸している。

海外志向のルーツは先々代の祖父にある。「海外への憧れがとても強く、台湾に日本の雑貨を販売する店を出したり、セブ島近くでリゾート開発する野望をもったり……とてもユニークな人でした」

祖父の影響を受け、後藤さんも高校卒業後、台湾やアメリカの大学に留学。マスターした中国語を生かし今広げているのが、各国に暮らす“華僑”向けの家庭雑貨や食品の販売だ。 「肝になるのは、売れる商品を見極めることですか?」と尋ねると……「全く違います。大事なのは“どうやって売るか”です」
カナダ大手T&Tスーパーマーケットの「Best Supplier Award」などを受賞

カナダ大手T&Tスーパーマーケットの「Best Supplier Award」などを受賞

例えば、風呂場で使うボディタオル。中国では使う文化が無いので、ただ店に置いているだけでは売れない。「どうやって使うのか、ボディブラシとどう違うのか……店頭で説明することで売れる商品もあります。これからは、売り方や商品の魅力の伝え方をもっと追求していこうと思っています」

一昨年、カナダの大手スーパー「T&Tスーパーマーケット」が毎年表彰する「Best Supplier Award」を受賞。「カナダでは180万人もの中国人が暮らしています。今私が最も注目している大きな市場です」。後藤さんは目を輝かせる。

欲求を100%満たしたい

「失敗してもいいから、新しいことにどんどんチャレンジしたい。現状維持は嫌なんです」

スリーキューブが現在抱える商品4万点のうち、6000点がホームセンターへ、残りはスーパーやドラッグストアへ向かう。「弊社の4万点全てに加え、四国でストックされている商品が一つのプラットホームで扱えたら、めちゃめちゃ強くなると思うんです」

商品の“新たな売り方”を提案するECサイトのほか、今広まりつつあるネット通販の「コンビニ受け取り」とは違ったタイプの“新たな届け方”などを次々と計画中。後藤さんの“現状打破” への情熱はとどまるところを知らない。

「とにかく“モノ”が好きなんです。先日たまたま見つけた『しなる包丁』。切りたいものに合わせて刃がしなるので、骨付き肉などをカットする時にすごく便利。『こんなモノがあるんや!』と感動しました」。だが、そんな包丁を売っている店はそう多くはない。

「どんなに大きな店やECサイトでも、消費者の欲求を100%満たしているわけじゃない」。後藤さんは力を込める。「家庭雑貨は食品などと違って“無くても”生きていける。でも、“あれば”暮らしに彩りが増します。市場をもっと開拓し、『千差万別の商品が、必要とする人の手元に届く』。そんな環境をつくっていきたいですね」

篠原 正樹

後藤 幸祐 | ごとう こうすけ

略歴
1975年 高松市生まれ
1994年 高松商業高校 卒業
     国立台湾師範大学、
     カリフォルニア大学バークレー校などを経て
1998年 株式会社後藤 入社
2022年 株式会社スリーキューブ 代表取締役社長

株式会社スリーキューブ

住所
高知県高知市7819685
代表電話番号
088-882-1120
設立
2013年2月1日
社員数
100人(パート含む)
事業内容
生活雑貨及びインテリア雑貨卸
事業所
香川支店:綾川町東分乙60-7 レックス総合物流センター内
TEL. 087-878-3939/FAX. 087-878-3888
愛媛支店、高知支店、広島営業所、岡山DC、神戸DC 他
地図
URL
http://www.3cube.co.jp/
確認日
2023.02.16

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