“ケタ違い”のものづくりで世界の物流を支える

マキタ 社長 槙田 裕さん

Interview

2025.11.06

高松市朝日町のマキタ本社

高松市朝日町のマキタ本社

陸の象、空の鳥、そして…海のクジラ

小型船舶用エンジンで世界トップシェアを誇るマキタ。マキタ製のディーゼルエンジンを積んだ約1700隻の貨物船が世界中の海を巡り、国から国へ様々な荷物を届けている。

まさに世界経済を支えるマキタを率いるのは41歳の若き社長、槙田裕さんだ。曽祖父が興した家業を2016年、31歳で継ぎ、今年でちょうど10年目になる。「香川で世界の物流に関われているのは誇らしいことです。とても貴重で魅力的で、責任ある仕事だと実感しています」
マキタが製造する船舶用ディーゼルエンジン

マキタが製造する船舶用ディーゼルエンジン

海上物流は絶対に無くならない。槙田さんは断言する。「論理的に説明できるんですよ」。その論理とは……

まずは陸上を走るトラック。「より多くの物を運ぶには、タイヤを増やして接地面積を増やすか、地面を補強しない限り、限界がきます」。続いては飛行機。「翼で浮力をつくるので、翼を大きくしない限り、やはり限界がきます」

では、船はどうか。「船には浮力が作用します。大きくなればなるほど比例して重いものが運べる。つまり限界が無いんです」

さらに、動物に例えて説明を加えてくれた。「陸上の象。空を飛ぶ鳥。海のクジラ。比べてみてください」。なるほど、分かりやすい。

最大の強みは「4つの組み合わせ」

ケタ違いの浮力の原理で大量の荷物を運ぶ巨大な船。その心臓部がエンジンだ。マキタは小型船舶向けの世界シェアで3割超。なぜトップランナーで在り続けられるのか。槙田さんは「4つの特徴がある」と話す。

1つ目は『地域の特性』。マキタは四国唯一の船舶用エンジンメーカーで、全国の造船所の7割ほどが瀬戸内海に集中している。「香川県に本社があるアクセスの良さが親密度や信頼感構築に繋がっています」

2つ目は『品質』。創業から漁船向け、内航船、外航船とステップアップしながらエンジンを製造してきたノウハウが、品質の高いエンジンを生み出している。
社員と

社員と

3つ目は『生産能力』。「競合他社の倍以上です。そのスケールメリットが価格交渉やコストカットにも生きてきます」。また、他社の倍以上の生産能力を誇ることで、「1年で経験する仕事量も倍以上です。我が社の2~3年目の社員は、他社の7~8年目の社員と比べても遜色ないと自負しています」

4つ目は『アフターサービス』。エンジンを納めるのは基本的には国内の造船所だが、使用者は全世界に広がる。使用者のもとへ営業マンやエンジニアを派遣し、部品交換やメンテナンスなど、柔軟で、きめ細かな対応に努める。

これら4つについて槙田さんは、「一つ一つは決して特別なことではない」と話し、こう続ける。「でも、それらを組み合わせることで、他社が真似できなくなります。それが我が社の最大の強みだと思っています」

「150年企業」を目指して

明治43(1910)年創業。115年の歴史を誇る、香川を代表する企業の4代目。だが、「継ぐ気は全くありませんでした。幼い頃、父から仕事の話を聞いたこともなく、会社に立ち寄ったのも数えるほどでした」

プロサッカー選手を夢見て、中学卒業後に単身、神奈川の強豪校・桐蔭学園高校へ。夢は叶わなかったが、依然、「継ぐつもりはありませんでした」

考えが変わったのは大学時代。「経営者の親を持つサークル仲間が多かったことで意識し始めましたね」。経営を学ぶため慶應義塾大学の大学院に進み、三菱商事を経て、2013年にマキタに入った。

入社して感じたのは「数字では確かに世界一ですが、会社のカルチャーや体制は決して一流ではありませんでした」

槙田さんがまず始めたのは「カイゼン」だ。「コンサルタントを招集して、舶用エンジンの製造過程における特殊な事情を汲み取りながら“カイゼン”を進めました」

それだけではない。それまでには無かった会社の経営理念やビジョン、中期計画などを示し、数値目標を設定し、人事制度を改め、DXやAIを進め、リモートワーク、時間単位有休や副業を認め……「いわゆる“昔の会社”だったんですね。『自分たちの常識は決して常識じゃない』という意識改革が必要だと感じました」

果たしてマキタのカルチャーは変わったのか。
精密かつダイナミックな船舶用エンジンで香川から世界へ

精密かつダイナミックな船舶用エンジンで香川から世界へ

槙田さんが入社する前から勤める社員はこう話す。「最初は多少のハレーションはありました。でも次第になじんで、今ではそれが普通になった。改めて振り返ると、会社は大きく“意識変革”したと思います」

マキタのホームページを開くと、こうある。

『“ケタ違い”を造る。』

「我が社の採用のキャッチフレーズです。エンジンは高さ約10m、重さ約250t。でも、1mm寸法が違ったら動かない。“巨大かつ精密”です。これからもケタ違いのダイナミックなものづくりで、世界の物流に貢献していきたい。目指すは150年企業です」

篠原 正樹

槙田 裕 | まきた ゆう

1984年 高松市生まれ
2008年 慶應義塾大学総合政策学部 卒業
2010年 慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 修了
2010年 三菱商事株式会社 入社
2013年 株式会社マキタ 入社
2014年 常務取締役 営業統括本部長 就任
2016年 代表取締役社長 就任

株式会社マキタ

住所
香川県高松市朝日町4丁目1-1
代表電話番号
087-821-5501
設立
1910(明治43)年4月1日創業
社員数
382人(2024年末)
事業内容
舶用ディーゼルエンジンの製造・販売
資本金
1億円
地図
URL
http://www.makita-corp.com/
確認日
2025.11.06

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