“経営者意識”で幸福(しあわせ)を追求する

三和電業グループ各社 社長 山地 一慶さん

Interview

2022.03.17

高松市太田下町の三和電業グループ

高松市太田下町の三和電業グループ

大手に負けない“無形の強み”

企業の工場やビル、公共施設や福祉施設、太陽光発電所など、全国様々な建物の電気設備や空調設備、制御やFAシステムなどを手掛ける三和電業グループ。高松市サンポートに再来年竣工予定の新香川県立体育館の電気設備工事も担う予定だ。

2018年、創業70周年のタイミングで社長に就いた山地一慶(かづよし)さん(42)は、「私たちに、他社が真似できないような特別な技術があるわけではない」と話しながらも、「でも、決して『大手にかなわない』とは思わない」と言い切る。「私たちの会社は小さくとも社員一人ひとりが『経営者』ですから」
三和電業がJVで電気設備工事を手掛ける予定の 新香川県立体育館(完成イメージ)=香川県提供

三和電業がJVで電気設備工事を手掛ける予定の
新香川県立体育館(完成イメージ)=香川県提供

三和電業グループは、母体の三和電業の他、三和プラントエンジニアリングや三和空調、三和エコ&エナジーの国内4つと中国3つのグループ会社に、多くの支店や営業所を持つ。それぞれの部門ごとに予算、責任、権限をセットで与え、部門別採算制を敷いて収支を明確化。技術者集団でありながら、顧客との交渉をはじめ、現場管理、設計、資材発注など若いうちから「全部やる」のが三和流だ。「技術職社員は様々な現場で『現場代理人』を名乗りますが、何の代理なのか?『社長の代理』なんです」

権限や責任があれば仕事が面白くなる。利益を追求するシビアな世界も試練として楽しみ、乗り越えることで成長していく。「みんなが『中小企業の経営者』としてイキイキと仕事にあたる。そうすれば、お客様や協力会社さんはファンになってくれます」。一度ファンになると、「また頼みたい」と思ってもらえて、困った時に頼ってくれるようになる。「技術力だけでは『強み』にならない。社員一人ひとりが『経営者意識』を合わせ持つ無形の強みが、私たちの最大の武器だと思っています」。山地さんは強い口調で語る。

「しっかり苦労をしている」

2004年、24歳で三和電業に入社。間もなく中国・蘇州のグループ会社に出向し、現場責任者として3年程勤務した。「それなりにこなせるだろうと高を括っていました。コテンパンにやられましたね」

 現地の作業員とはうまくコミュニケーションが取れず、思うように動いてくれない。「これは違う」と指摘すると「何が違うんだ」と逆上してくる。注文と違った材料が届き、納期に間に合わず、お客さんには怒鳴り散らされ、何も解決しないまま問題だけが増えていく……。「『もうやっていられない』と完全にふてくされていた。『俺は悪くない』と人のせいにして、言い訳ばかりしていました」

ある日、上司が「これを見ておけ」と一冊の冊子を手渡してくれた。当時社長だった父が、経営塾「盛和塾」での学びをもとに三和電業グループ社員の考え方の指針をまとめた『三和フィロソフィ』。その中の一文を見て、突然込み上げてきた。

― 逃げるな青年! 不都合も愉しもう! ―

「トイレに駆け込んで大泣きしました。目の前の問題から逃げ回る最低な自分に気づかされ、情けなくて恥ずかしくて。俺は何をやっているんだと」
盛和塾の「塾長例会」で発表する山地さん =2016年、鹿児島市

盛和塾の「塾長例会」で発表する山地さん
=2016年、鹿児島市

泣き尽くして現場に戻ると景色が変わって見えた。「逃げ回っている私に代わって部下が頑張っていた。現地の作業員も必死だった。何も見えていなかったのは私だったんです」。決して出来はよくなかったが、部下が仕上げた製品を見て「ありがとう」と言えた瞬間、「“つきもの”が一気に取れた気がして。そこから物事が少しずつ好転していきました」

帰国後、山地さんも盛和塾に入塾。2016年、経営体験を発表する「塾長例会」で中国での体験を報告すると、京セラ創業者で塾長の稲盛和夫さんが声をかけてくれた。「しっかり苦労をしていて、いいね」
成長できた中国での日々を山地さんは懐かしそうに話す。

人生見つめる「幸福宣言」

創業者の祖父がよく口にしていた。「社員みんなが元気で立派になる。それに一生をかけても悔いはない」。その言葉をもとに山地さんは「社員の幸せを追求する」という経営理念を掲げる。

幸せとは何なのか。『私の幸福宣言』と題して2年掛かりで全社員に研修し、シートにまとめてもらった。「いい家に住みたい、いい車に乗りたい……。いろいろな幸せがあります。でも多くは『周りの人を笑顔にしたい』『みんなと一緒に幸せになりたい』、そんな利他の声だったんです」

各地の工事現場を見て回る際、これまではベテラン社員の案内がほとんどだったが、最近は若手が案内してくれるようになった。

「社長、ここを見てください!」「この部分の交渉が難しかったんです」

イキイキと胸を張って案内する姿に「立派に育っているなあと幸せを感じますね」。山地さんはうれしそうに話す。「顧客満足を追求し、自分自身の幸せも追求していく。この思いを一人一人が持って、もっとたくましい会社になっていきたいですね」

篠原 正樹

山地 一慶 | やまじ かづよし

略歴
1979年 高松市出身
1998年 高松商業高校 卒業
2002年 大阪学院大学経営科学部 卒業
     建設・不動産開発会社勤務を経て
2004年 三和電業株式会社 入社
2018年 代表取締役社長

三和電業グループ

住所
香川県高松市太田下町2580-3
代表電話番号
087-865-8585
社員数
102名(中国除く)
事業内容
電気設備・計装設備・給排水衛生設備
空調設備・冷凍設備・電気通信工事等
創業
1948年4月
設立
1953年12月
事業所
高松支店、徳島支店、東京支店、関西支店、北島支店、福岡営業所、郡山営業所 他
関連会社
三和電業株式会社
三和プラントエンジニアリング株式会社
三和エコ&エナジー株式会社
三和空調株式会社
三和科技(蘇州)有限公司(中国)他
地図
URL
http://www.sanwanet.co.jp
確認日
2022.11.17

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