
高松市太田下町の三和電業グループ
大手に負けない“無形の強み”
2018年、創業70周年のタイミングで社長に就いた山地一慶(かづよし)さん(42)は、「私たちに、他社が真似できないような特別な技術があるわけではない」と話しながらも、「でも、決して『大手にかなわない』とは思わない」と言い切る。「私たちの会社は小さくとも社員一人ひとりが『経営者』ですから」

三和電業がJVで電気設備工事を手掛ける予定の
新香川県立体育館(完成イメージ)=香川県提供
権限や責任があれば仕事が面白くなる。利益を追求するシビアな世界も試練として楽しみ、乗り越えることで成長していく。「みんなが『中小企業の経営者』としてイキイキと仕事にあたる。そうすれば、お客様や協力会社さんはファンになってくれます」。一度ファンになると、「また頼みたい」と思ってもらえて、困った時に頼ってくれるようになる。「技術力だけでは『強み』にならない。社員一人ひとりが『経営者意識』を合わせ持つ無形の強みが、私たちの最大の武器だと思っています」。山地さんは強い口調で語る。
「しっかり苦労をしている」
現地の作業員とはうまくコミュニケーションが取れず、思うように動いてくれない。「これは違う」と指摘すると「何が違うんだ」と逆上してくる。注文と違った材料が届き、納期に間に合わず、お客さんには怒鳴り散らされ、何も解決しないまま問題だけが増えていく……。「『もうやっていられない』と完全にふてくされていた。『俺は悪くない』と人のせいにして、言い訳ばかりしていました」
ある日、上司が「これを見ておけ」と一冊の冊子を手渡してくれた。当時社長だった父が、経営塾「盛和塾」での学びをもとに三和電業グループ社員の考え方の指針をまとめた『三和フィロソフィ』。その中の一文を見て、突然込み上げてきた。
― 逃げるな青年! 不都合も愉しもう! ―
「トイレに駆け込んで大泣きしました。目の前の問題から逃げ回る最低な自分に気づかされ、情けなくて恥ずかしくて。俺は何をやっているんだと」

盛和塾の「塾長例会」で発表する山地さん
=2016年、鹿児島市
帰国後、山地さんも盛和塾に入塾。2016年、経営体験を発表する「塾長例会」で中国での体験を報告すると、京セラ創業者で塾長の稲盛和夫さんが声をかけてくれた。「しっかり苦労をしていて、いいね」
成長できた中国での日々を山地さんは懐かしそうに話す。
人生見つめる「幸福宣言」
幸せとは何なのか。『私の幸福宣言』と題して2年掛かりで全社員に研修し、シートにまとめてもらった。「いい家に住みたい、いい車に乗りたい……。いろいろな幸せがあります。でも多くは『周りの人を笑顔にしたい』『みんなと一緒に幸せになりたい』、そんな利他の声だったんです」

「社長、ここを見てください!」「この部分の交渉が難しかったんです」
イキイキと胸を張って案内する姿に「立派に育っているなあと幸せを感じますね」。山地さんはうれしそうに話す。「顧客満足を追求し、自分自身の幸せも追求していく。この思いを一人一人が持って、もっとたくましい会社になっていきたいですね」
篠原 正樹
山地 一慶 | やまじ かづよし
- 略歴
- 1979年 高松市出身
1998年 高松商業高校 卒業
2002年 大阪学院大学経営科学部 卒業
建設・不動産開発会社勤務を経て
2004年 三和電業株式会社 入社
2018年 代表取締役社長
三和電業グループ
- 住所
- 香川県高松市太田下町2580-3
- 代表電話番号
- 087-865-8585
- 社員数
- 102名(中国除く)
- 事業内容
- 電気設備・計装設備・給排水衛生設備
空調設備・冷凍設備・電気通信工事等 - 創業
- 1948年4月
- 設立
- 1953年12月
- 事業所
- 高松支店、徳島支店、東京支店、関西支店、北島支店、福岡営業所、郡山営業所 他
- 関連会社
- 三和電業株式会社
三和プラントエンジニアリング株式会社
三和エコ&エナジー株式会社
三和空調株式会社
三和科技(蘇州)有限公司(中国)他 - 地図
- URL
- http://www.sanwanet.co.jp
- 確認日
- 2022.11.17
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