財産は「人」。安全・安心・快適を届ける

西日本高速道路エンジニアリング四国
社長 後藤 由成さん

Interview

2025.12.04

道路性状測定車「スマートイーグル」を背に =高松市林町の高松自動車道・高松中央IC

道路性状測定車「スマートイーグル」を背に
=高松市林町の高松自動車道・高松中央IC

高松道4車線化を率いて

お酒は一滴も飲めないが、飲み会は大好き。ゴルフは決して得意ではないが、コンペ好き。「神戸からの単身赴任は通算13年になりますが、妻とは電話で毎日話をしています」。今年6月、西日本高速道路エンジニアリング四国(エンジ四国)の社長になった後藤由成さん(58)はそういう人だ。
お気に入りの栗林公園で

お気に入りの栗林公園で

四国、香川との縁は深い。出身は兵庫県。1989年に日本道路公団(当時)に入り、その後、西日本高速道路(NEXCO西日本)へ。2012年からの3年間、四国支社の高松工事事務所長として高松自動車道4車線化の大プロジェクトを率いた。本社と四国支社などを行き来しながら、香川暮らしは間もなく10年になる。

「NEXCO西日本の人事には、私は四国の人間だと思われていたんじゃないでしょうか」と笑う。「でも、香川に戻るたびに『お帰りなさい』と迎えてくれる。温かい人柄や暮らしやすい気候……私は本当に香川が大好きで、グループのエンジ四国に移るのは念願だったんです」

四国を越え、高速道路を越え

四国の高速道路の点検やメンテナンスなどを行うエンジ四国。エンジ四国と言えば「技術力」だ。「全国のNEXCOグループの中でも、他の高速道路会社やインフラ会社の中でも、秀でていると自負しています」

通行止めにすることなく、走行しながら路面のひび割れなどを調べる点検車両「イーグル」。赤外線カメラによるAI解析で橋脚の損傷などを見つける「Jシステム」。その画像解析技術を応用し、インターチェンジの入口などでスタッドレスタイヤ装着の有無をチェックする「冬用タイヤ自動判別システム」。道路沿いやサービスエリア内の樹木がどのくらいの強風に耐えられるのかを画像解析し、倒木のリスク軽減を図る樹木点検システム「RTチェッカー」。さらに、事故や災害時、通行止めにする時間を短縮するため効率的に復旧作業を行う緊急対応車両「クインビー」……。

ビジネス香川では過去に何度もエンジ四国を取材しているが、取材するたび次々と登場する画期的な新技術に毎回驚かされる。「エンジニアリングとメンテナンス、両方を行う会社だからこそ、新たな発想が生まれ、技術力が磨かれていくんだと思います」
エンジ四国が生み出した様々な製品やサービスは四国内に留まらず、国土交通省や全国のNEXCOグループからも引き合いが相次いでいる。そして“高速道路”だけではない。コンクリートの傷みを見つける技術はビルなどの構造物でも活用でき、冬用タイヤの判別は国道や市道でも。また、「RTチェッカー」は公園や学校の樹木や街路樹にも活用できる。

四国を越え、高速道路をも越えていくエンジ四国の技術。後藤さんは「今後様々な場面で必要とされる可能性は大いにあると思う。ニーズを見定め、活躍の場を広げていきたい」と目を輝かせる。

すぐに動いた社員たち

社長に就任して間もない頃、徳島自動車道の暫定2車線、センターポール設置区間でトラックと対向車のバスが正面衝突し、炎上。14人が死傷する重大事故が発生した。後藤さんはこの日を振り返る。「社員たちがすぐに動いてくれました」
反対車線からの進入を防ぐコンクリート製センターブロック =徳島自動車道

反対車線からの進入を防ぐコンクリート製センターブロック
=徳島自動車道

反対車線からの進入を防ぐコンクリート製センターブロックの早期設置が望まれた。材料調達を短縮できるか、測量も無しで秋の夜間工事で一気に施工できるか……。

「施工リスクを我が社の設計計画で回避することが必要。高知自動車道でコンクリート製センターブロックの設計・施工管理に携わり、ノウハウを持つ私たちが短縮策を提案するぞ!」

施工者や製品メーカーとの調整は親会社が実施することに。
事故から4カ月後、高さ60cm、長さ300mの頑丈な壁が事故現場に完成した。「安全・安心を一刻も早く確保するために努力しなければならない。“ONEチーム四国”、どこにいても思いはひとつ。社員の熱い思いを感じた出来事でした」

“気持ち”も運ぶ高速道路

「人が一番重要。会社の財産は人です」。社員を思う後藤さんならではの好きな言葉がある。

『金を残して死ぬのは下、事業を残して死ぬのは中、人を残して死ぬのが上』

明治期に活躍した後藤新平が遺した言葉。後藤さんは「人材の育成に努めるのが私の使命」と力を込める。
間もなく10年。温かい人柄や暮らしやすい気候の香川が大好き

間もなく10年。温かい人柄や暮らしやすい気候の香川が大好き

働き方改革は大切。リモートワークも効率的で良いと思う。でも、「車線規制を行う危険性の度合い、コンクリートの熱量、構造物の大きさ……現場に行くことで、より分かることもある。社員にはやはり現場にこだわってほしい。『現場から学ぶ』ことを常に忘れないでいてほしいですね」

人やモノを運ぶ高速道路。さらに「例えば愛する人のもとへ花束を持って車を走らせる。『会いたい』という“気持ち”まで運ぶのが高速道路なんです」と後藤さんは加える。

「安全・安心・快適に走行できる環境を24時間365日届けるのが私たちのミッション。そのミッションを一緒に遂行していく社員たちが最高の思い出をつくることができる。そんな会社にしていきたいですね」

篠原 正樹

後藤 由成 | ごとう よしなり

略歴
1967年 兵庫県尼崎市出身
1985年 関西大学第一高校 卒業
1989年 関西大学工学部土木工学科 卒業
     日本道路公団 入社
2010年 西日本高速道路株式会社
     四国支社 企画調整課長
2012年 高松工事事務所長
2017年 本社 グループ経営戦略課長
2019年 本社 危機管理防災担当部長
2024年 四国支社 支社長
2025年 西日本高速道路エンジニアリング四国株式会社
     代表取締役社長

西日本高速道路エンジニアリング四国株式会社

住所
香川県高松市花園町三丁目1番1号
代表電話番号
087-834-1121
設立
1992年10月27日
社員数
447人(2025年4月1日現在)
事業内容
高速道路の建設・維持管理に係る構造物及び
設備等の調査・設計・施工管理・点検・補修工事 他
資本金
6000万円
地図
URL
http://www.w-e-shikoku.co.jp/
確認日
2025.12.04

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