制約を乗り越える。限りある人材・機材で工夫する

西日本高速道路エンジニアリング四国 代表取締役社長 濱野 光司さん

Interview

2008.05.07

2005年(平成17年)、日本道路公団が3つの会社に分割民営化され、当時色々な面で批判もされたファミリー企業も今回整理統合・再編され子会社に。その一つが西日本高速道路エンジニアリング四国(株)だ。
日本道路公団でエンジニアだった濱野 光司さんが、2007年(平成19年)4月、初代社長に就任した。使命はグループ会社と一緒に高速道路を守ることだが、親会社からの自立が大きな課題だ。
四国の高速道路は対面交通が多い。会社の人材と機械整備は限りがある。「制約を乗り越えて、四国の特色を生かしつつ他の地域の高速道路ではやれないことにトライします」。濱野さんは本当のお客様に視点を向ける会社つくりをスタートした。

道路事業で利益を出せない!

スタートは意識改革から始まった。「今までは資本関係が無かったので独立した会社として活動していたが、新会社は使命が根本的に違います」。

これまでの日本道路公団は、工事の発注者であり、お客様だった。その日本道路公団が使命を共有する親会社のNEXCO西日本になった。だから「親会社だけを見ていたのでは役割が果せません。本当のお客さま、利用客のために契約書に書いていなくても、安く早く効率的に出来る方法が見つかればそれでやります」。仕事の基本はNEXCO西日本とのパートナー契約だ。国の資産である高速道路をNEXCO西日本と共に管理するが、維持管理では基本的に利益を出さない契約だ。技術開発・業務改善によってのみ利益をあげられるという厳しい内容だ。

※ (NEXCO西日本)
ネクスコ西日本。親会社、西日本高速道路(株)の通称。

会社の強みを作る

維持管理業務で利益を出せないから自立が課題だ。技術開発や道路事業以外の仕事を増やして、その利益を社員や株主、社会へ還元するしかない。培った技術力を活用する開発部門を今年4月に編成した。

「現場から改善案がいっぱい出てきますので、地元企業や大学と共同で技術開発します」。赤外線を利用したコンクリートの損傷調査手法を開発して、今までより大幅に効率化できる調査手法に関する特許を取得した。また、コンクリート構造物は中の鉄筋との間に一定の厚みがないと、鉄筋が錆びてコンクリートが剥がれる。民間会社とNEXCO西日本と共に、3社共同で『コンクリートかぶりセンサー』を開発して特許を出願している。検査費用が何分の一かに減る優れものの測定器だ。

高速道路の対面交通は走りにくい。「センターラインを『光る物』ではっきりさせると経費を余り掛けずに危険回避になり、圧迫感を減らす効果もありそうです」…制約は工夫を生む。
事故などで通行禁止になる時間を短くするため、補修専用車輌をあらかじめ配置して、出動と事故処理を短縮できるか試験中だ…人材と機械に限りがあるから工夫する。
前身の四国道路エンジニア(株)は、道路のノリ面やトンネルの電灯、非常電話の通信設備などの点検管理を担当し、高速道路本体の修理や保全の工事部門は別会社だった…「二つの会社を一つにしたことにより、故障から修理まで早く安く出来そうです」。

事後保全より予防保全

電光掲示板の電球が切れたら交換までに時間が掛かる。「電球が切れる直前に新しい電球と交換する方法はないでしょうか」。開発部門の研究課題の1つだ。今後は、事後保全より予防保全が大切だ。高速道路は建設から維持管理へ重点が変わった。アメリカで1970年代後半から道路や橋の老朽化で大きな被害が出て「荒廃するアメリカ」が社会問題になった。

「その二の舞にはさせません」。四国に高速道路が出来て22年。劣化が進む前に補修をこまめにするとライフサイクルコストが安くなる。

※ (ライフサイクルコスト)
製品や構造物などの製造、使用、廃棄の段階をトータルした費用。

濱野さんの信念

転勤した先々で用地買収や工事のトラブル、災害の補償交渉など対応に追われた。
「ご迷惑もお掛けしましたし、苦労もありました」。川之江から高知道の法皇トンネルで工事長を務めた。工事の出水で地域の飲み水も田んぼの水も枯れて、土日昼夜をかけて給水設備を仮設した。辛いこともあった。橋の架設工事や集中豪雨で人命事故も起きた。
「責任者は、『自分の責任でできることはやります』と対話を積み重ねて信頼を得る以外に方法はないんです」。何度も難局の矢面に立った濱野さんの信念だ。

濱野 光司 | はまの みつし

1951年 島根県浜田市生まれ
1974年 愛媛大学工学部土木工学科 卒業
    日本道路公団(現 西日本高速道路株式会社)入社
2007年 西日本高速道路エンジニアリング四国
    代表取締役社長就任 現在に至る
写真
濱野 光司 | はまの みつし

西日本高速道路エンジニアリング四国株式会社

住所
香川県高松市花園町三丁目1番1号
代表電話番号
087-834-1121
設立
1992年10月27日
社員数
402人(2019年4月1日現在)
事業内容
高速道路の建設・維持管理に係る構造物及び設備等の調査・設計・施工管理・点検・補修工事 他
資本金
6000万円
地図
URL
http://www.w-e-shikoku.co.jp/
確認日
2019.09.14

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