
坂出ゆかりの万葉歌人・柿本人麻呂に扮する綾市長=坂出市沙弥島のナカンダ浜
寒くても大雨でも


市内各地で行われている早朝のラジオ体操
綾さんが目指すのは、健やかで幸せに暮らせる「健幸」なまちづくりだ。全国的に設置が広がっている「認知症カフェ」にもいち早く取り組んだ。坂出市は高齢者の約3人に1人が認知症、またはそのおそれがあると推定されている。「認知症の専門医に直接相談できるカフェです。コーヒーでも飲みながら気軽に話してもらい、楽しい時間をみんなで過ごすことで予防に努めようというのが狙いです」
坂出市の高齢化率は、県内でもトップクラスの約34%まで上昇している。「延ばさなければならないのは、寿命ではなく『健康寿命』。元気なお年寄りが増えれば、高騰する医療費や介護費を抑えることもできます」
坂出市の市制が施行された1942年の7月1日にちなみ、綾さんは7月1日に一番近い日曜日を「ラジオ体操の日」と制定した。今年のラジオ体操の日も、大勢の市民がこぞって早朝から爽やかな汗を流した。
「あなたといると飽きない」
大学卒業後、ことでんに入社したが、設備工事会社の社長にヘッドハンティングされ転職。その後脱サラし、坂出市の実家で小さな雑貨店を始めた。商店街や商工会を行き来する中、地元国会議員の選挙を手伝ったことで、「政治の世界にはまっていきました」
34歳で坂出市議に初当選。連続6期に、議長も務めた。「市長になりたいわけではなかった」と話すが、「人口減少や少子高齢化がどんどん進行していく。早急に手を打たないと、坂出の将来がダメになる」と一念発起。2009年の市長選に立候補し、現職を大差で破った。「市長になって思ったのは、『まるで体力テスト』。こんなに忙しいとは思わなかった」と苦笑する。
座右の銘は「千思万考」。何度も考え、様々に思いを巡らせる。「たまに『市長、それはできません』と言ってくる職員がいる。『どうやればできるかを考えなさい』としつこく言い聞かせています」。今年5月で3期目に入り、「働きたい、住みたい、子育てしたいまちの実現」にも力を注ぐ。20代、30代の若手職員に「子育てをサポートする、とにかく斬新な企画を考え提案してほしい」と発破をかけ続ける日々だ。
「商売をやっていたかと思えば、市議に議長に市長・・・・・・。家内には『あなたといると飽きないわ』とよく言われます」。綾さんは笑顔で話す。
コスプレでまちをPR

崇徳上皇の墓「白峯御陵」=坂出市青海町
沙弥島に名歌を遺した万葉歌人・柿本人麻呂、「学問の神様」菅原道真に、「塩田の父」久米通賢、白峯寺近くにある崇徳上皇の墓は四国にある唯一の天皇陵だ。綾さんは「古(いにしえ)のロマンのまち さかいで」と題し、坂出ゆかりの偉人たちの足跡をたどる観光コースをつくった。
番の州工業地帯を持つ坂出は、重工業のまちで暗いイメージが強い。それを何とか払拭させたいと綾さんは力を込める。「私は広告塔。目立ってナンボ」と、イベントなどでは率先して偉人のコスプレを身にまとったり、演劇に出演したりする。「あんな市長がいるまちは他とはちょっと違うのかなと、少しでも注目してもらえればうれしいですね」。さらに来年は瀬戸大橋開通30周年を迎える。「これまでは行政にも経済界にも『橋があれば勝手に繁盛するだろう』という甘い考えがあり、策を講じてこなかった。この節目に次のステップを考えなければならない」と綾さんは口元を引き締める。
坂出で生まれ育ち、坂出とともに人生を歩んできた。「このまちには大いに可能性があると思う。でも、私一人じゃ何もできません」。まちづくりには、市民の自主性と継続性が不可欠だと繰り返す。「自分たちのまちに自信と誇りを持って、市民みんなが活性化していってほしい。そして私自身も活性化し、ともに将来へ向かっていきたい。いつまでも元気で止まらない市長でありたいと思っています」
篠原 正樹
綾 宏 | あや ひろし
- 1953年 坂出市生まれ
1972年 大手前高松高校 卒業
1977年 学習院大学経済学部 卒業
高松琴平電気鉄道株式会社、三喜工事株式会社、自営業を経て
1987年 坂出市議選で初当選(連続6期)
2009年 坂出市長選で初当選
2013年 再選
2017年 3選 - 写真
坂出市
- 所在地
- 坂出市室町二丁目3番5号
TEL.0877・46・3111(代表) - 市制施行
- 1942年7月1日
- 総人口
- 5万2160人
男2万4946人/女2万7214人 - 世帯数
- 2万1406世帯
(総人口、世帯数とも2017年10月1日現在) - 地図
- URL
- http://www.city.sakaide.lg.jp
- 確認日
- 2018.01.04
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