
瀬戸内サーカスファクトリーの田中未知子さん。
旧上西小学校の体育館を現代サーカスの拠点
「ShionoēAIR(シオノエアー)」に

代表理事の田中未知子さんは「サーカスファクトリーという名前のとおり、サーカスを生み出す場所にしたい。校舎の建物も生かして、ゆくゆくは事務局の機能や図書館も整備できたら」と話す。
5月12日にはワークショップの成果発表会を開催。フィンランドと日本の外交樹立100周年を記念した現代サーカスプロジェクトの一環で、東京と福岡の団体との共同で行ったものだ。日本とフィンランドのアーティストが演技を披露し、約100人が鑑賞した。
現代サーカスは1970年代にフランスで生まれ、現在、世界約50カ国に広がっている。猛獣が曲芸をするなどの従来のサーカスとは異なり、現代サーカスは美術や演劇、ダンスの要素を取り入れたもので、カナダの「シルク・ドゥ・ソレイユ」もその一つだ。日本独自の取り組みや公演は「ここ1~2年で盛り上がってきた」という。
田中さんは北海道出身で、地元新聞社で文化事業を担当しているときに、現代サーカスを知った。「技術よりも先に、アーティストたちの優しくまっすぐな目、存在そのものに魅了されました」。新聞社を辞めて、現代サーカスに携わるようになった。瀬戸内国際芸術祭をきっかけに香川県を訪れて、2011年に移住、瀬戸内サーカスファクトリーを立ち上げた。練習や公演ができる場所を探して、たどり着いたのが塩江町だった。周辺の環境の良さと地域住民の温かさが決め手になった。ShionoēAIRがあることで「にぎやかになってうれしい」と地域住民からも喜ばれている。

田中さんはクオリティの高い現代サーカスを香川から生み出すことで、観客にアートを楽しんでもらうだけでなく、地域の人との交流が生まれたり、観客の視野が広がったりするなどの「副産物」に期待している。「自分も含めて人の可能性を信じています。何かのきっかけで固定概念を打ち破って、新しいアイデアが湧き出てくる。私の場合、それが現代サーカスでした。その楽しさを多くの人と共有できたら」。県内の幼稚園や保育所に出向き、子どもを対象にした出張型のワークショップも随時開催している。

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