世界が注目する備讃瀬戸の魅力

香川大学創造工学部長 教授 長谷川 修一

column

2019.03.21

2月に香川大学創立70周年記念イベント「瀬戸内国際芸術祭2019香川大学参加記念シンポジウム~これからの瀬戸内とアート~」が開催されました。創造工学部・柴田悠基講師が率いる「香川大学×小豆島夢プロジェクトチーム」が香川大学として初めて瀬戸芸に作品(演劇)を発表します。基調講演では、北川フラム瀬戸内国際芸術祭総合ディレクターが冒頭で、2019年の旅行先として世界が注目しているのが「瀬戸内」だと紹介しました。

瀬戸内海は、島々が集まった瀬戸(=海峡)と、島がほとんど分布しない灘から構成されます。灘は広くて単調です。瀬戸内海の多島美は瀬戸にあるといえます。瀬戸芸の会場は、1934年に日本初の国立公園に指定された備讃瀬戸とほぼ一致しています。備讃瀬戸は、他の瀬戸と何が違うのでしょうか。

瀬戸内海の土台を作っているのは、約1億年前の花崗(かこう)岩類です。花崗岩は、マグマが地下深所でゆっくり冷え固まってできた、庵治石のように硬い岩石です。しかし、地表付近では数千万年にわたる風化を受けてもろいマサ(砂状)になっています。その風化花崗岩を土台として、上に瀬戸内火山岩類が分布することが瀬戸内海の景観を特徴づけました。

瀬戸内火山岩類は約1400万年前に噴出した硬い溶岩等から構成されます。瀬戸内火山岩類は崩れにくいため、これが山頂付近にある島の多くは、標高が250mより高くなっています。一方、土台となる風化花崗岩は崩れやすく、1400万年の間に侵食されました。そのため、屋島や豊島のようなメサ(テーブル状の台地)、大槌島のようなおむすび島、寒霞渓のような渓谷と、険しくて変化に富む地形が造られたのです。

直島や大島のように風化花崗岩のみから構成される島は、標高100m前後と低く、なだらかな形をしています。また、マサが土石流となって流されてできたのが、瀬戸内の白砂青松です。

備讃瀬戸の島の地形の多様性、また島だけでなくおむすび山が乱立する讃岐平野の造形美は、地質の多様性に起因しています。その多様性から生まれた独自の名産・食文化を楽しむことができるのも備讃瀬戸の魅力です。

香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一

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香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一

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