防災×観光は郷土愛とレジリエンスを育む

香川大学特任教授・讃岐ジオパーク構想推進準備委員会委員長 長谷川修一

column

2024.10.17

人口減少の最大の要因は東京一極集中で、大学へ進学する時に地方から一気に若者が流出します。ハザードマップを勉強して、避難を促すだけの防災教育は、若者の大都会への定着を促進し、結果として地域の防災力を低下させます。地域の弱点(影、災害)だけでなく、地域の強み(光、恵み)を合わせて、地域を深く理解する必要があるのではないでしょうか。

私は、2022年度から2年間、NHK高松放送局ゆう6かがわの「とち知り」の案内人を担当させていただきました。「とち知り」では、五味哲太アナウンサーと香川県の観光名所や名産地などを巡り、大地の成り立ちから土地の災害のリスクを知ると共に、災害の跡地を地域の名所や名産地に転換した先人の知恵を学びました。鬼無の盆栽、小豆島のオリーブ、豊南の梨は土石流跡地を逆手に取った名産なのです。

近い将来発生するとされる南海トラフ地震を想定すると、巨大災害後に生き延びて、地域を復興する若者の定着は不可欠です。そこで、高校生を対象に大地の成り立ちから深く地域を理解する「ジオアート Jr .マイスター養成講座」を24年3月に実施しました。講座では、高松中心部、東かがわ市白鳥、丸亀市中心部、観音寺市中心部、小豆島の5地区を歩き、過去の災害を克服した歴史を見て回りました。実施前と実施後のアンケートを比較すると、実施後には大学進学後の進路も地元に帰ってきたい生徒が増加し、ほとんどの生徒が自然災害の被害を受けた時は地元に残って復興に貢献したいと回答しました。

大地の成り立ちから地域を深く理解するジオパークのアプローチは、郷土愛とレジリエンスを育む防災教育につながる可能性があります。防災は、地域の魅力を発信する観光(地域の光を観る)とかけ合わせて進めたいものです。観光をきっかけにご縁(関係人口)ができれば、被災後の支援と受援にもつながるのではと期待もしています。

香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一

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香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一

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