
サヌカイトは、叩くと美しい音を奏でるかんかん石です。溶岩が地表で急冷したので、細粒かつガラス質ですが、普通の溶岩のように火山ガスが抜けた空隙がほとんどありません。この緻密で、音波の伝播が減衰しない特性が、美しい音を奏でる理由なのです。しかしこれだけでは「天使の音色」と称される癒しの音色の説明はできません。サヌカイトの音色の科学的研究はこれからです。
サヌカイトは二酸化ケイ素成分が約60%の安山岩に分類されます。しかし、マグネシウムを多く含む古銅輝石からできている変わった安山岩なので、1891年にドイツ人岩石学者が、主な産地の讃岐に由来したサヌカイトと命名しました。
サヌカイトマグマは、ユーラシア大陸から分離・移動した日本列島の地下に沈み込んだ、できたばかりの熱いフィリピン海プレート(玄武岩)が融けて、1400万年前に地表に噴出しました(巽好幸博士の世界的な研究)。サヌカイトは、地球上で最初の大陸をつくったマグマと似ており、地球上の太古の大陸ができた謎を解く鍵と考えられています。サヌカイトは「太古の響き」を奏でているのです。
香川県は、約3万年前からサヌカイトを使い続けたサヌカイト県です。サヌカイトは、香川県の至宝だけでなく、地球の至宝です。サヌカイトを活用しながら、守り、継承するは私たちの責務ではないでしょうか?サヌカイトが天然記念物に指定されると、楽器として活用することができません。このため、ユネスコ世界ジオパークの仕組みを活用して、サヌカイトを利用しながら、保全しようではありませんか。
香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一
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