備讃瀬戸と讃岐平野の造形美

香川大学特任教授・讃岐ジオパーク構想推進準備委員会委員長 長谷川修一

column

2025.06.19

昨年は瀬戸内海国立公園指定90周年、今年は瀬戸内国際芸術祭2025が開催されています。瀬戸内海の特徴は、内海の多島美からなる自然景観と島の暮らしが織りなす文化的景観です。また、瀬戸内海は古来より、海上交通で栄え、歴史の舞台でもあります。その舞台を造ったのが、大地の大変動と地球規模の気候変動なのです。

瀬戸内海国立公園指定の決め手になった写真が撮影された鷲羽山に出かけて、瀬戸内海の造形美の成り立ちを探ってみましょう。鷲羽山からの見える景色は手前から、
 ①<足元の風化した花崗岩に生育する松:白砂青松
 ②<目の前に広がる大小様々な島が点在する塩飽諸島
 ③<五色台のような台形上の丘(メサ)や飯野山等おむすび山が乱立する讃岐平野
 ④<遠くに連なる讃岐山脈
⑤<晴天時にかすかに現れる四国山地

この景色は、以下の3つの地球大変動と1つの気候変動、すなわち大災害によって造られたのです。なお、( )内は、関連する景色です。
 (1)<1億年前~:ユーラシア大陸の東縁の激しいマグマの活動による花崗岩の形成とその後の隆起・風化・侵食(①②)
 (2)<1400万年前~:日本海形成直後の激しい瀬戸内火山活動との後の山崩れによるおむすび山の彫刻。四国山地の地下に形成されたマグマ溜まりの隆起(③⑤)
 (3)<300万年前~:中央構造線の断層活動(直下型巨大地震)による讃岐山脈―讃岐平野―瀬戸内海の地形配置の形成(②③④)
 (4)<1万年前~:最終氷期からの急速な海面上昇による水没によって多島海美が完成(②)

香川県に、なぜ庵治石等の良質な花崗岩石材の産地のかは(1)に、なぜ世界的にまれなサヌカイト産出するのかは(2)に、なぜ讃岐うどんなのかは(3)と(4)に由来するのです。

私は、香川県全域がユネスコ世界ジオパークにふさわしいと考えています。ジオパーク(大地の公園)の役割は、大地と人とのつながりを再発見し、その土地ならではの未来を創ることなのです。

香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一

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香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一

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