現場に出かけ、五感を使って観察し、考える

香川大学創造工学部教授 長谷川修一

column

2020.12.03

写真はイメージ

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コロナ禍を受け、香川大学ではオンラインによる会議や講義が急速に広まった。しかし、大学教育の神髄はオンラインではできない体験や活動から学ぶことではないだろうか。

そこで、長谷川研究室では、日本原子力文化財団がNUMOより受託した「地層処分理解に向けた選択型学習支援事業」に応募した。新型コロナ感染拡大が一時的に落ち着き、大学の警戒レベルが緩和された9月初旬に、4年生4人と技術補佐員の6人で、北海道にある日本原子力研究開発機構「幌延(ほろのべ)深地層研究センター」を、徹底した感染対策を実施した上で見学することができた。

この施設は、地下300m以深に高レベル放射性廃棄物(いわゆる核のごみ)を埋設する「地層処分」に必要な人工バリアの性能や、地下深部における岩盤の特性を調査する技術の開発などを検証する実験施設で、その役割が終了すると見学できなくなる。

当日は、展示施設で高レベル放射性廃棄物の地層処分の説明を受けた後、地下250mの調査坑道で岩盤を直接観察することができた。地表では風化で脆(もろ)くなっている岩盤も地下では硬く、ち密、透水性も極めて低い。作業する人間にとってはとても良い環境とはいえない地下で、地道な実証実験が行われていた。しかし、ここ幌延は実験施設であるため処分場にはならない。

自国で発生した放射性廃棄物は自国内で処分する決まりがあるので、日本でも地層処分場を選定し、処分事業を進めなければ、廃棄物が溜まり続けることになる。現地見学中に北海道内の自治体が、処分場の適地選定のための文献調査に応募するとのニュースが報じられた。

必要性は認めても、自分の裏庭はダメだと拒否するのが人情である。

今回の見学によって、学生たちは現場でどんなことを感じ、学んだのだろうか。地層処分地の選定が日本にとって重大な課題であることを認識した学生の一人は、「自分たちが関心を持ち続けて、自分ごととして考えることが大事だ」とつぶやいた。

香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一

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香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一

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