製塩事業をルーツに多角化
「縁」をつなぐビジネスモデル

林田塩産株式会社

column

2025.03.06

かつての林田村周辺の塩田風景

かつての林田村周辺の塩田風景

安価な海外産の砂糖が流通し始めた明治時代、古くからサトウキビ栽培で栄えた林田村(現・坂出市林田町)の産業は大きな打撃を受けた。暮らしが困窮する村民を救うため、当時の村長が新たに塩田事業を立ち上げたのが明治16年のこと。私財をなげうち、時には周囲に冷笑されながらも、15年以上をかけて本格的な製塩をスタートさせた。それが同社のルーツであり、製塩事業を終えた今も社名に残る「塩産」には、村の歴史も重なる。

創業当初から一貫してオーナー経営ではなく、現在の代表取締役社長・谷俊広さんは祖父の代から経営にかかわるようになった。当時の瀬戸内海沿岸は塩の一大産地だったが、製塩事業は天候や不安定な市場価格に振り回されがちでもある。経営安定を図るため、塩田の堤防に使うセメント、製塩に使う重油や消泡材などの代理店業務を担う商事部を開設。1971年に全国で塩田の原則廃止が決まった際は、谷さんの祖父らが株主を説得し、解散ではなく商事部を専業とする新たなスタートを切った。「製塩という売上の大半がなくなって悲壮感のある再出発だったはず。しかしすぐにオイルショックが到来し、当社の扱っていた商品が高騰して、一気に勢いづきました」。

この急成長が今に続くコングロマリット型経営の礎となり、現在は不動産から建材卸・工事、ガス・エネルギー、水環境、米穀倉庫、生コンまで幅広い分野が互いに連携するビジネスモデルを確立。しかし事業が多角化し、AIが台頭する時代にあっても、140年にわたって育んだ義理と縁を大切にする経営方針は変わらない。

埋め立てられる前の塩田を駆け回ったこともあるという谷さん。「倉庫を整理していて『身寄りのない男子を雇用し、成人して独立するまでサポートした』という古い記録を見つけた時は驚きました。おそらく祖父も父も知らないと思います。そんな会社だったのか、と胸を打たれました。これからのビジネスにおいても、人のつながりと人情を大切にする企業であることは揺るぎなく、社員の個性が織りなすものが当社の価値につながると信じています」と語る。
現在の林田町周辺

現在の林田町周辺

林田塩産株式会社

住所
香川県坂出市入船町1丁目3番12号
代表電話番号
0877-44-2828
設立
1894(明治27)年2月2日(明治16年創業)
社員数
グループ計100人
事業内容
不動産の管理運営、賃貸借
米穀低温倉庫運営
セメント各種販売、生コンクリート販売
各種ALC(クリオン)工事一式、押出成形セメント板(メース)工事一式、各種耐火被覆工事一式、スレート、サイディング工事一式、断熱工事一式(現場発泡ウレタン吹付工事)、外付けブラインド(ヴァレーマ)工事一式
石油製品販売(燃料油・潤滑油)、ガソリンスタンド経営(坂出東SS・郡家SS)、LP ガス販売、太陽光発電事業
水処理薬品販売、水処理装置販売・メンテナンス、化学洗浄工事一式、各種水処理機器関連機材販売、各種用水・排水の分析検査
グループ
高松レミコン株式会社、中讃協業生コン株式会社
地図
URL
https://h-ensan.com/
確認日
2025.06.05

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