新キャンパスを拠点に自ら学び、交流し、熱中してほしい

徳島文理大学 理事長 村崎 文彦さん

Interview

2025.04.03

ディスカッションスペースもある図書館で

ディスカッションスペースもある図書館で

「満たされない」を原動力に

香川県立アリーナや商業施設のオープンで注目される高松駅周辺エリアに、徳島文理大学香川キャンパスが移転。2025年の4月から新キャンパスでの授業が始まった。

教育を取り巻く状況が目まぐるしく変わる中で、理事長の村崎文彦さんは「移転を構想する前から、さぬき市志度の香川キャンパスでは学生や教員からの声を聞き、よりよい環境を追求し変化してきました」と話す。現場や時代に即した機器・設備の導入はもちろん、学生と教員がよりコミュニケーションしやすいよう教員の部屋のドアのガラス面を広げたり、教育実習を行う学生のため中学校で使うサイズの机や椅子を入れて同じような雰囲気を再現したり。「そういった改善を積み重ねた延長線上に、学生たちの要望や時代背景、どういった教育を目指すのかといった理念を盛り込み、新キャンパス像を形にしていきました」と振り返る。

新キャンパスは情報・機械・ロボット・医薬分野などの最新機器や設備がそろい、音楽ホール、屋上運動場やトレーニングジムなどの施設も充実、交通アクセスも便利なこの上ない環境だ。だが、環境が整っただけでは学びは深まらない。「だから、学生たちにはあまり“満たされてほしくない”んです」

何かを知るとその次、さらに次、というふうに知識への意欲を持ち続けてほしい。「例えば、あるアイドルを好きになったらその人の出身地のことが知りたくなるように、きっかけさえあれば知識はいくらでも深められる。18歳で興味のある分野を選んだ学生が、“ハングリーさ”を持って自ら知識を追求したいと思えるようにするのが私たちの役割です」
「文理でよかった」と思ってもらえることが何よりの喜び

「文理でよかった」と思ってもらえることが何よりの喜び

「想い」を受け継ぎ、つなぐ

構想から移転の決断、新天地に向けての準備など、村崎理事長とともに走ってきた父であり前理事長の村崎正人さんが開学の約1年前に亡くなった。「様々な話をする中で父は『想い』という言葉をよく口にしていました」。少子高齢化が進み、社会がめまぐるしく変化する中で人気の学部学科の入れ替わりも激しい。「地方で私立大学を運営するのは大変な時代です。ただ、採算が合わないからその学部をなくしてしまうと子どもたちはどこで学べばいいのか。数字だけでは計れない教育への想いを創立者から受け継いでいけることが私たちの強みだと思っています」

徳島文理大学のルーツは、小豆島生まれの村崎サイさんが「女性の自立」を目指して徳島で創立した裁縫学校。開学から半年は生徒がおらず、ようやくやってきた自身より年上の生徒一人から学校が始まったという。「それから今年で130周年。私も想いを受け継ぎながら、いま目の前にいる学生たちに全力で向き合っていきたいと思います」
地上18階・地下1階の東棟と地上8階の西棟からなるキャンパス

地上18階・地下1階の東棟と地上8階の西棟からなるキャンパス

「街」が学びの場

新キャンパスの特徴の一つが「交流」だ。専門分野だけではなくその周辺の知識や広い視野が求められる時代に、同じ建物の中に全学部があり他学部の学生と交流しやすい環境は、学生を成長させ新たな化学反応も生み出す。例えば、保健福祉学部の臨床工学科が医療機器の素材について工学部のナノ物質工学科とともに研究する、薬学部が世界初の陸上養殖に成功したあおさのりの販売方法を短期大学部の食物専攻と一緒に考えるなど。学部を越えた学びだけではなく、同じ大学として高松駅キャンパスと徳島キャンパスの交流も積極的に進めたいという。

高松市街への移転を機に、地域との交流もより深まると考えている。通学の途中で見つけた繁盛店を訪れその理由を探る、プロムナード化が進む駅周辺エリアから都市設計を学ぶ……街で学ぶことは多い。

また、「大学には地域課題の解決も求められていると思います。例えば、災害で損傷してしまった文化財を修復するために、文化財学科と機械創造工学科が共同で技術研究するといったことなど。自治体の財政も厳しい中で、採算は合わないけれど専門家として地域に貢献できる分野はあると思います」。地域課題の解決に向けては、待っているだけではなく徳島文理大学では何ができるか、積極的に発信していくことも必要だという。

新たなスタートを切ったキャンパスで、学生たちには“ハマる”ものに出合ってほしいと考えている。「学問だけではなく、地域で過ごすことで香川を好きになる、かけがえのない友達ができる、どんなことでもいいから何かに熱くなれる経験をしてもらいたい。そして何より“文理でよかった”と思えるような学生生活を送ってほしいと思います」
高松駅のプラットホームを眺めながらランチができる食堂

高松駅のプラットホームを眺めながらランチができる食堂

石川 恭子

村崎 文彦 | むらさき ふみひこ

略歴
1981年 徳島市生まれ
徳島文理大学附属幼稚園、徳島文理小学校、徳島文理中学校 卒業
2000年 徳島文理高校 卒業
2004年 東京大学教育学部総合教育科学科教育学コース卒業
2007年 同コース大学院修了後、渡米
2011年 ボストン大学大学院修士課程修了
    帰国後、学校法人村崎学園勤務、徳島文理小中高の学監を務める
2024年 村崎学園 徳島文理大学・徳島文理大学短期大学部 理事長
現在、日本私立短期大学協会 運営問題委員会委員、日本私立大学協会 学校法人政策部会委員、大学・短期大学基準協会 広報委員なども務める

徳島文理大学

住所
香川県高松市浜ノ町8-53
代表電話番号
087-899-7100
設立
1895年
大学概要
大学概要
【徳島キャンパス】徳島市山城町西浜傍示180
TEL. 088-602-8000
学部
<高松駅キャンパス>香川薬学部、保健福祉学部、総合政策学部経営学科、理工学部、文学部
<徳島キャンパス>薬学部、人間生活学部、保健福祉学部、総合政策学部、音楽学部、短期大学部
学生数約4000人(2025年4月)
地図
URL
https://www.bunri-u.ac.jp/
確認日
2025.04.03

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