新天地で育む “照らし合い”の精神

徳島文理大学 理事長 村崎 正人さん

Interview

2021.07.15

さぬき市志度の徳島文理大学香川キャンパス

さぬき市志度の徳島文理大学香川キャンパス

“学生ファースト”で決断

2025年4月、さぬき市志度にある徳島文理大学香川キャンパスが、高松市浜ノ町のJR高松駅横へ全面移転する。学生と教職員合わせて1500人が通うキャンパスの大移動。理事長の村崎正人さん(74)は「18歳人口が減少していく中、通学にも便利な交通アクセス、地域連携しやすい魅力的な教育環境など、将来を見据えて総合的に判断し、決断した」と口調を強め、こう加える。「構想は10年以上。キャンパス移転は、私の最後の大勝負です」

村崎さんの判断基準は全て「それが学生のためになるかどうか」だ。大学には北海道から沖縄まで、ほぼ全国から学生が集まる。「地元を大切にしてほしい」と、図書館には学生の地元の新聞40数種類が日々届く。また、「学生のために大学のレベルを常に上げ続けなければならない」と、教員には定期的に論文の提出を課す。「ただ時間をかけて教えるだけじゃダメ。教員もレベルアップしなければなりません。教員の質と学生の質は間違いなく連鎖します」
「50円うどん」「100円カレー」で学生を支援=香川キャンパスの学生食堂

「50円うどん」「100円カレー」で学生を支援=香川キャンパスの学生食堂

新型コロナ対策では、いち早く遠隔授業を導入。アルバイト収入などが減り生活苦に直面する学生を支援しようと、特別奨学金として全学生に一律5万円を給付し、今年4月からは学生食堂で「50円うどん」と「100円カレー」の販売を始めた。ワクチンの大学拠点接種も既に申請済みだ。「教育とは情熱です。少子化で受験者や学生が減るとすれば、それは私たちの努力が足りていないということです」と村崎さんは言い切る。

徳島文理大学は1895(明治28)年、曾祖母の村崎サイ先生が「女性の自立」を唱え、当時教員をしていた徳島で裁縫学校を開いたのがルーツだ。それから80余年後に開学した香川キャンパス。サイ先生は小豆島生まれで、地元香川にキャンパスを構えるのが悲願だった。
理工学部、香川薬学部など4学部9学科の他、図書館や音楽ホールなどを持ち、創立130年の節目の年に誕生する「高松駅キャンパス」。自身も小豆島で生まれた村崎さんは「さぬき市には大変お世話になった」と話しながらも、「香川県、高松市のみなさんに受け入れていただけるよう、学生や教職員らと一緒に新天地で頑張っていきたい」と口元を引き締める。

「恩師と出会ってほしい」

学生には「いい恩師と友人をつくってほしい」と呼びかける。「学校に行く楽しさが数段違ってきますから」

村崎さんにも3人の恩師がいる。一人目は高校時代の校長だった千眼智見先生。「朝礼での話が長くて、いつもうんざりしていた。でも、その話は生徒だけでなく教員にも聞かせていた。『教員を育てる大切さ』を教えてもらいました」。2人目は大学時代に出会った社会政策学者の金井信一郎先生。「社会政策の基礎を学んで来い」とドイツへの留学を勧めてくれた恩人だ。そして3人目は、その留学先の教授、マイヤー・ドーム先生。地域開発問題の専門家で、「ノートの取り方から始まって、勉強の仕方、学ぶことの面白さなど、あらゆることを教わりました。私は本当に先生に恵まれました」

ドイツの経済研究所で研究員を務めたあと、帰国した村崎さんは徳島文理大に入り、社会政策や経済学の授業で教鞭を執った。「教えるのはとても楽しいんです。学生と人間関係が生まれるのも良い。大学の運営よりずっと面白いかもしれないですね」と苦笑する。

使命は“のれん”と“新風”

地上18階、地下1階の「高松駅キャンパス」は、 香川キャンパスの全学部学科の教室、図書館、 体育館、コンビニなどが入る「都市型キャンパス」に =完成イメージ

地上18階、地下1階の「高松駅キャンパス」は、
香川キャンパスの全学部学科の教室、図書館、
体育館、コンビニなどが入る「都市型キャンパス」に
=完成イメージ

「お互いに照らし合っていこう」。毎年3月の卒業式。巣立っていく学生たちに村崎さんが必ず贈る言葉だ。「私たち残る者は、良い教育をして学校をさらに発展させる。君たちも飛び出して行った先で一生懸命努力してくれと」。母校が元気で盛り上がっていれば卒業生も誇らしく、「徳島文理大を出ています」と胸を張れる。卒業生の活躍の知らせが届くと在学生も「私も頑張らなくちゃ」とやる気が増す。

徳島文理大学の2020年度卒業生の就職率は98.1%。コロナ禍であろうと例年並みの3万件前後の求人があり、地方大学では珍しい学内で開催する就職説明会には、全国から550社以上の企業が参加する。大学内でもマンツーマンの就職指導やweb面接のアドバイスなど、独自のサポート態勢は敷いているが、「卒業生たちがそれぞれの場所で頑張っていることが大きいと思う」と村崎さんは目を細める。「これこそが“照らし合いの精神”ですね」

学祖を曾祖母に持ち、前理事長の父・凡人(ただひと)さんを継いで30余年。「自分が果たすべき使命は二つある」と力を込める。「一つは受け継がれてきた“のれん”を守ること。そしてもう一つ、大学の内外に常に新風を吹き込んでいきたいと思っています」

篠原 正樹

村崎 正人 | むらさき まさと

略歴
1947年 小豆島・旧内海町生まれ
1966年 徳島県立城北高校 卒業
1970年 明治学院大学経済学部 卒業
    ドイツ・ルール大学ボーフム留学、
    経済研究所研究員などを経て
1975年 徳島文理大学 専任講師
1988年 徳島文理大学 教授
1989年 徳島文理大学 理事長
    学校法人村崎学園 理事長

徳島文理大学

住所
香川県さぬき市志度1314-1(香川キャンパス)
代表電話番号
087-899-7100
設立
1895年
大学概要
徳島キャンパス:徳島市山城町西浜傍示180
TEL. 088-602-8000
創立   1895年
学部
<香川>香川薬学部、保健福祉学部、理工学部、文学部
<徳島>薬学部、人間生活学部、保健福祉学部、総合政策学部、音楽学部、短期大学部
学生数  4419人(2021年4月)
地図
URL
https://www.bunri-u.ac.jp/
確認日
2021.07.15

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