暮らしを支える “ガスの魔法使い”

高松帝酸 専務 太田 貴也さん

Interview

2022.06.02

高松帝酸本社に隣接する、今年夏に竣工予定の「フッ素ガス技術開発棟」=高松市朝日町

高松帝酸本社に隣接する、今年夏に竣工予定の「フッ素ガス技術開発棟」=高松市朝日町

紙はなぜ白いのか?

木を原料につくられる紙がなぜ白いのか、疑問に感じたことはないだろうか。そこにあるのは「ガス」だ。オゾンガスが木材パルプの茶色の色素を漂白することで、紙は白くなる。「オゾンガスは酸素からつくられます。製紙会社では大量の酸素ガスが使われ、漂白後の排水処理にも酸素ガスが使われています」

ガスは私たちの暮らしのあらゆるシーンを支えている。だが、高松帝酸の太田貴也専務(40)は、「世間にはあまり知られておらず、『御社のガスって何に使われているんですか?』とよく聞かれるんです」と苦笑する。

高松帝酸が主に製造販売するのは、「産業用」と「医療用」の高圧ガスだ。「ほぼ全ての製造業で、何かしらのガスが使われています」。スマートフォン、テレビ、冷蔵庫、LED電球など様々な家電製品に組み込まれる半導体は、回路形成やクリーニングなどのあらゆる処理工程でガスが必要不可欠。車や船をつくる鉄板は、切る時には切断用のガスが、くっつける時には溶接用のガスが使われる。医療分野でも、治療や手術、人工呼吸器などにガスは欠かせない。「総合病院では水道水の蛇口より、酸素ガスの蛇口の方が多いくらいです」
高圧ガスを運ぶタンクローリー

高圧ガスを運ぶタンクローリー

酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、フロン……扱うガスは分子レベルで数十種類。四国をエリアとしてシェアを拡大するが、高松帝酸のフィールドはガスの製造販売だけにとどまらない。掲げるのは「ワンストップソリューション」。ガス供給設備の設計や施工はもちろん、様々な関連機器や資材の供給などもカバーする。「お客さんは決して“ガス”が欲しいわけではない。目的はその先にある、それぞれの『仕事』をするためなので、『酸素1本いかがですか?』と売り込んでも買ってもらえません」

ガス自体は純度を高めていけば、どのメーカーでもほぼ同じものができる。では、どうやって差別化するか。「“モノ”より“コト”です。技術力に加え、トータルでの提案力を磨き、困った時に頼ってもらえる『まちのショッピングモール』のような存在を目指しています」。病院の中で血管のように張り巡らされている酸素を送るパイプ。香川県内の病院の半数以上で、配管工事やメンテナンスは高松帝酸が手掛けている。「『ガスは後からついてくる』。それくらいの気持ちでやっています。ガス屋らしからぬ発言ですが……」と太田さんは笑う。

理工系に長けたDNA

高松帝酸は1950年、フランス製のガス製造技術を導入し、太田さんの曽祖父が塩田跡地で「高松酸素」として創業したのがルーツだ。「理工系が好きなのはDNAですね。曽祖父は、製材工場のガスエンジンの故障を“爪楊枝でピッと刺して直した”という逸話もあるほど。祖母もいわゆる“からくり好き”です」。太田さんも自然と物理が好きになり、大学は理工学部へ。「地球上のあらゆる現象を解き明かせるのが物理。物事の本質を突き詰め、真実に近づき、世の中の根本を知ることができる。とても面白い学問です」

面白さをさらに求めて、いま現社長の父・賀久さんとともに進めるのが、フッ素の応用技術を開発する新研究棟の建設だ。「フッ素は、様々な原子の中で最も反応性が高く魅力的。フッ素樹脂を用いるテフロン加工のように表面をツルツルにしたり、バリア性や吸水性を高めたり……何か面白いことを生み出していきたいと思っています」。延床面積約1000㎡の新研究棟は今年夏に竣工する予定だ。

「出前授業」に高校生驚く

2030年の高松帝酸はどうあるべきか。近く4代目として会社を率いていく太田さんは、中期経営計画策定のためのプロジェクトチームを社内で立ち上げ、3年がかりでビジョン「V2030」をつくった。掲げた基本方針は「みんなで考える」「幸せな未来に向けて」「多様性に感謝」の3つ。「経営者任せではなく、自分たちで会社の将来をデザインし、社員と家族の幸せを追求し、経験や価値観が違うそれぞれを認め合おう、という思いを込めました」
高松東高校で行った「出前授業」

高松東高校で行った「出前授業」

目標の一つに「地域社会との共生・共創」がある。先月、社員が高松東高校で初めての「出前授業」を実施。液体窒素を使って花やバナナを瞬時に凍らせる化学実験などを行った。「高校生たちに好評だったそうで、私も一緒に行けばよかった……」と太田さんは残念がる。「でも、あまり知られていない、私たちの特殊な技術やガスのことを、高校生のみなさんに知ってもらえたのは良かった。化学への関心が高まればうれしいですね」

世の中を便利に豊かにし、生命を維持していく。「そのためになくてはならないガスを安定供給することが私たちの使命であり、醍醐味」と力を込める。「これからも、様々なガスを自在に扱って社会を支える『オズの魔法使い』ならぬ、『ガスの魔法使い』でありたいですね」

篠原 正樹

太田 貴也 | おおた たかや

略歴
1981年 高松市出身
2000年 高松高校 卒業
2004年 上智大学理工学部物理学科 卒業
     ジャパン・エア・ガシズ株式会社
     (現・日本エア・リキード合同会社)入社
2008年 高松帝酸株式会社 入社
2013年 取締役
2020年 専務取締役 営業本部長

高松帝酸株式会社

住所
香川県高松市朝日町5丁目14番1号
代表電話番号
087-822-5222
設立
1972年7月(創業1950年5月)
社員数
195人(2021年12月)
事業内容
産業用ガス、ガス機器・設備工事、溶接機材、電子資材、
医療用ガス、医療機器、フッ素ガス処理技術開発 他
地図
URL
https://www.takatei.co.jp/
確認日
2022.06.02

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