香川の農林水産業に寄り添い
挑戦を支えるパートナーに

日本政策金融公庫 高松支店 農林水産事業統轄 山浦 泰さん

Interview

2024.12.19

善光寺の近くで生まれ、リンゴの木に囲まれ冬はスキーが盛んな信州・長野市で高校まで育った。中学が吹奏楽の強豪校だったことから高校、大学でも音楽に打ち込み、プロ奏者に師事しつつオーケストラの魅力にどっぷりつかった。バブル期の花形・銀行業界に就職する同期を横目に、公的機関である農林漁業金融公庫(当時)を選んだ。以来、地方支店も経験しつつ東京本店で計17年、うち予算関係9年という公庫内でも異色のキャリアを築き、今年4月に初めて四国に赴任。高松支店の農林水産事業統轄として香川の一次産業を見つめる。

公庫統合に奔走… 本店勤務で深めた見識

最初の配属は、当時いぐさの一大産地だった熊本支店。刈り入れ時期の農家で1週間作業を体験し、現場の苦労を実感するところから始まった。単なる融資にとどまらず地域全体の農業を考える方針のもと、その地域の将来像や振興すべき農産物を市町村と一緒に考える調査に従事した。認定農業者向け長期融資「スーパーL資金」の立ち上げ時期の1996年、盛岡支店に異動。畜産業を中心に、キャリアの中で最も融資活動に注力した時期となった。

30歳目前で本店秘書室に移り副総裁の秘書を務め、長野支店で債権管理や食品営業などを経験した後、再び本店経理部へ。国民生活金融公庫・農林漁業金融公庫・中小企業金融公庫を統合し「日本政策金融公庫」を立ち上げるワーキンググループのメンバーとして、2年がかりで組織をまとめ、財務省と折衝する大仕事に取り組んだ。

「各公庫は組織の規模が違いますから、統合後の予算や業務を均等に配分というわけにはいきません。どのように割り振るか交渉を重ねつつ、農林漁業金融公庫の経理とともに共通管理部分の経理も担当して、本当に目まぐるしかった。でも、その後も本店に長く勤務していろんな業務を経験する貴重な機会をいただけたからこそ、地方においても『本店の視点』を踏まえて見えることがたくさんあります」と振り返る。

香川の一次産業とともに

2008年の統合後は、農林水産事業本部の営業推進部や予算管理室でグループリーダーを務め、近畿地区管内の総括課長、札幌支店農林水産副事業統轄を経て、事業統轄として香川に着任。「日本一小さい県でありながらオンリーワンやニッチでのトップ品目がいくつもあり、農業者が元気で考え方も堅実。大消費地が近いため『朝採れ』などのタイムリーな流通も強みですね」と印象を語る。

収益化まで耕種では1年、肉用牛では2年以上を要する農林水産業態に合わせた長期を旨とする同公庫農林水産事業の融資は、民間の金融機関とお互いに補完し合いながら事業者と伴走することを目指す。「日頃の運転資金は民間金融、規模拡大等の大きな投資は公庫で、といった基本的な役割分担の下、農業にあっては最長25年を固定金利で提供できるのが特長です」と語り、地域の金融機関との連携について「香川はとても親和性が強く、いろんな連携が図れそう。農業者が生き生きと営農できるよう、柔軟な連携で安心と挑戦を支えたい」と意気込む。エリア内での競合を避け、外に販路を求める場合は他地域の支店とマッチングできるのも、全国組織ならではの強みだ。

やると決めたらとことん突き詰めるのは、音楽で培ったマインド。コロナ禍で一時離れていたクラリネットの練習も再開し、オンオフともに充実した日々を送っている。

戸塚 愛野

山浦 泰 | やまうら やすし

略歴
1969年 長野県生まれ
1993年 同志社大学法学部 卒
    農林漁業金融公庫 入庫
2014年 日本政策金融公庫 農林水産事業本部 営業推進部営業支援グループリーダー
2016年 同 予算管理室予算管理グループリーダー
2020年 同 近畿地区総括課長
2023年 同 札幌支店 農林水産副事業統轄
2024年 同 高松支店 農林水産事業統轄

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