高齢者には恩返しを 子どもたちには未来を託して

らく楽福祉会グループ 会長 佐藤 義則さん

Interview

2024.12.19

社会福祉法人らく楽福祉会=高松市室町

社会福祉法人らく楽福祉会=高松市室町

55歳で挑んだ福祉の道

豪快でアグレッシブ、そして、とても真っ直ぐな人だ。高齢者福祉事業などを展開する「らく楽福祉会グループ」の佐藤義則会長(76)。若い頃は地元徳島の建設会社に勤め、その後独立。400人以上を雇用する建設会社などを経営していた。「床や壁を面で支える2×4(ツーバイフォー)工法で住宅をつくったり、住宅向けエレベーターなどを手掛けたりしていました」

福祉に舵を切ったのは2000年。父親が脳梗塞で倒れたのがきっかけだった。高齢者施設を探したが、順番待ちの人が多く見つからない。「じゃあ自分で何とかしよう」。兄に建設会社を任せ、03年に高松市でグループホームを設立。55歳での新たな挑戦だった。「当時はまだまだ社会的に福祉への理解が乏しかった。『親を施設に入れるのか』と。職員も胸を張って『施設で働いている』と言えない。そんな時代でした」でも、佐藤さんは確信していた。

「近い将来、間違いなく必要とされる事業になる」
施設の様子

施設の様子

福祉の道を歩み出してから20年余り。今では高松市を中心に、グループホーム、住宅型有料老人ホーム、クリニック、デイサービスやショートステイなど19施設35事業所を運営する。徹底しているのは「清潔感」と「過ごしやすさ」。建設業を営んでいたノウハウも生かしながら、きれいで広くて明るい「優しさあふれる施設」を目指している。「税金を使わせてもらいながら福祉施設を運営していく。それは、今の日本をつくり上げてきた人たちに、国に代わって恩返しをするということ。そんな気持ちでずっとやってきました」

最初につくったグループホーム「らく楽一宮」。もちろん初めての入所者は父親だった。「父は恥ずかしがり屋だったので、面と向かっては何も言いませんでしたが、いつも楽しそうにしていました。おそらく感謝してくれていたんじゃないかな」。佐藤さんは懐かしそうに頬を緩める。

少人数で、家庭の雰囲気で

やがて佐藤さんは「保育」にも乗り出した。「『子どもも見てくれないか』とお願いされまして……」

最初は戸惑いもあった。「何度も断ったんです。『私は教育するような人間じゃない』と」。でも、次第に考え方が変わった。「子どもたちは未来への大きな希望です。教育という、そんな素敵なことに携われる。本当にありがたくて、これ以上の喜びはないと思ったんです」

目指したのは「少人数で、より家庭に近い雰囲気の中での保育」。08年の「らく楽寺井幼稚園」を皮切りに、現在はグループの「社会福祉法人らく楽福祉会」と「学校法人らく楽学園」で、幼稚園や保育園、放課後児童クラブなど8つの施設を運営している。「ひょっとしたら総理大臣が生まれるかも、なんて私が夢見ています。とにかく子どもたちの可能性は無限大ですから」

特徴的な教育方針の一つに「英語」がある。「幼い頃から国際感覚を育んでもらおうと、外国人の講師が歌やゲームで楽しく英語を教えています」。グアムや台湾への短期語学留学も行っていて、今や「英語を習うなら、らく楽へ」と言われるほど評判に。「らく楽寺井幼稚園」は四国の幼稚園では初めての、国際的に通用する人材を育てる「国際バカロレア(IB)初等教育プログラム」の候補校にも選ばれている。

「カレー食堂」でお腹いっぱいに

らく楽福祉会グループが寄贈した校舎 =フィリピン・カパロンガ町のウバン小学校

らく楽福祉会グループが寄贈した校舎
=フィリピン・カパロンガ町のウバン小学校

社会貢献活動にも力を注ぐ。

06年、フィリピンの小学校に校舎を寄贈した。「子どもが300人以上いて、そのうちの半分しか校舎に入れない。満足に授業を受けられない状態でした」。フィリピンの子どもたちに日本の良さを伝えたいという思いもあった。「大人になった時、日本に思いを馳せてもらえたら。国同士の距離がもっと近づくとうれしいですね」

昨年は徳島県美馬市にある母校、江原中学校の野球部にピッチングマシンを贈った。「私も野球部に入っていましたが、グローブが買えず野球を続けられなかった。子どもたちには思いっきり白球を追いかけてほしいと思っています」
「らく楽で過ごせて良かった」。そう思ってもらえるだけでいい

「らく楽で過ごせて良かった」。そう思ってもらえるだけでいい

そして今、どうしても実現させたい新たな夢がある。カレーライスを無料で提供する「らく楽カレー子ども食堂」だ。「カレーはみんな大好き。ニンジンが苦手な子でも、じっくり煮込めば隠せますから。栄養たっぷりのカレーを食べて、お腹いっぱいになってほしいですね」

らく楽福祉会グループが掲げるのは「福祉と教育を感謝の心で」。高齢者には、これまでの歩みに敬意を払い、安全に安心して過ごしてもらえるよう責任を持つ。子どもたちには、人間形成の重要な時期を預かるという心構えで、未来を創り出す力を育んでいく。「みなさんに『らく楽で過ごせて良かった』と思ってもらえたら、それだけでいいんです。私の人生ももう終盤ですが、こんなに素敵な仕事に巡りあえて、本当に幸せです」

篠原 正樹

佐藤 義則 | さとう よしのり

略歴
1948年 徳島県美馬市脇町出身
1963年 徳島市の建設会社に入社
1966年 兵庫県西宮市で独立
1970年 高松市で建設会社を設立
1985年 会社経営の傍ら、近畿大学商学部を卒業
2003年 社会福祉法人らく楽福祉会 設立
     らく楽福祉会グループ 会長

らく楽福祉会グループ

住所
香川県高松市室町1903-4
代表電話番号
087-868-1111
設立
2003年3月5日
社員数
654人(2024年4月)
事業内容
高齢者福祉事業、児童福祉事業、幼児教育事業
医療事業、温泉・井戸掘削事業、不動産事業 他
グループ
社会福祉法人らく楽福祉会、学校法人らく楽学園
医療法人社団らく楽会、らく楽興産株式会社
有限会社EAST、株式会社らく楽
地図
URL
http://www.rakuraku-group.jp/
確認日
2024.12.19

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