栄養管理ソフトで安全・安心な「食」を支える

コーエイコンピューターシステム
社長 尾松 賞昭さん
専務 髙橋 智子さん

Interview

2023.09.07

コーエイコンピューターシステムのソフトウェア開発を担うフリースタイル=坂出市旭町

コーエイコンピューターシステムのソフトウェア開発を担うフリースタイル=坂出市旭町

全国に広がる「EIBUN」

保育園、幼稚園、病院や福祉施設など、様々な施設の「食」や「栄養」を管理するのが、コーエイコンピューターシステムが開発したソフトウェア「EIBUN(エイブン)シリーズ」だ。
栄養管理ソフト「EIBUN病院版・施設版」のトップページ

栄養管理ソフト「EIBUN病院版・施設版」のトップページ

管理栄養士など学校給食や病院食に携わる人のサポートを目的に開発されたこのソフト。必要な数値などを入力すれば、健康管理のための栄養計算をしたり、価格や季節感まで考慮した献立をつくったり。アレルギーの管理やカロリー計算など、食に関するあらゆる情報の管理に加え、食材の発注や在庫管理、納品のチェックや帳票の印刷などなど、様々な業務を手助けしてくれる優れものだ。さらに、データは全てサーバー上で一括管理しているため、利用者はweb上でリアルタイムで情報共有でき、複数の施設をネットワークで結ぶこともできる。

導入しているのは北海道から沖縄まで全国2万施設以上。利用者の数で言うとその何十倍にも膨れ上がる。業界では「自治体で給食業務ソフトといえばEIBUNシリーズ」と言われるほどで、「東京、大阪、神戸や札幌に仙台など、政令指定都市のほとんどが使ってくれています」と社長の尾松賞昭さん(60)は胸を張る。
「EIBUN」を利用する学校給食センターの栄養担当教員

「EIBUN」を利用する学校給食センターの栄養担当教員

なぜここまで「EIBUNシリーズ」が全国に広がっているのか。開発を率いた専務の髙橋智子さんは「過去の献立がどんどん蓄積されていくので、新しいメニューをつくるのも簡単。もし担当の栄養士さんが替わってもすぐに業務を引き継げるし、帳票の印刷や、保健所に提出する書類づくりなどもカバーしています。実はこの『書類をつくる作業』は栄養士さんらにとってかなりの重労働なんです」と話す。

だが、理由はそれだけではない。尾松さんが加える。「学校や病院などあらゆるタイプの施設全てを網羅し、ここまで栄養計算に特化したソフトは他にはないと思います」

「病院」と言っても、外科や内科や精神科など様々で、「病院食」と言っても、糖尿食もあれば減塩食もある。「高齢者施設」には入居者向けだけではなく、デイサービスもあれば、ショートステイもあり、「保育園」だと「乳児食」もあれば、「幼児食」もある。「『EIBUNシリーズ』にはいくつものバージョンがあり、あらゆるパターンに対応している。それが一番の強みですね」。尾松さんは力を込める。

“営業” “開発”の名コンビ

きっかけは些細なものだった。「親が商売人だったので、何か商売を始めたいなと」。そこで尾松さんが目をつけたのが、当時はまだ珍しかったパソコンだった。20代後半で大学に入り直してパソコン言語を学び、坂出市でパソコン教室を始めた。「教室に通っていた生徒の中に栄養士さんがいたんです。ある時、『栄養管理が大変…パソコンでできればいいなあ』と話していて」。その言葉にピンときた。

栄養管理ソフトの開発に乗り出し、間もなく中学・高校の同級生だった髙橋さんが合流。髙橋さんも「改めて大学に入って、10代の子たちと一緒にパソコンを勉強したんです」。すると、2人の間で昔話が始まった。

尾松さん「あんたはいつここに来たんかなあ」、髙橋さん「ずっと一緒やから分からん。あれしろ、これしろと、こき使われたわ」、尾松さん「そんなことないわ。いつも嫌われ役を買って出てくれて感謝してます」…

主に、“商売人気質”の尾松さんが営業を、髙橋さんがソフト開発を担当。試作品ができると自治体や企業に売り込みに走り、手直しし、先方からの要望を組み込んで、また売り込む…。時にはケンカもしながら、二人三脚で会社の土台を築いた。

軸をぶらさず「食」に貢献

会社を立ち上げて30年余り。食や栄養を取り巻く環境は大きく変わった。「昔はただ『栄養を摂れ』と言っていたのが、今は『栄養は計算して正しく摂れ』という時代。以前は『糖質制限』とか、『炭水化物がどうのこうの』なんて言っていなかったですから」。国が示す食品の標準成分表も定期的に改訂され、「それに伴って、計算方法や分析方法も変わっていく。私たちも柔軟に対応し、時代にくっついていって、進化していかないと」。髙橋さんは話す。

しかし、時代は変わっても2人がかつて志した思いは変わらない。「やはり食事が何よりの健康の源。今は手軽に食べられるものが増え、それと同時に、食べる危うさも生まれてきている。食や栄養のために頑張っている栄養士さんらに一番に頼りにしてもらえるソフトをつくり続けるのが私たちの使命」と髙橋さん。尾松さんは「英語バージョンなど海外向けソフトの開発にもチャレンジしてみたい」と今後の目標を話しながらも、「でも、『栄養』に関わるもの以外をつくるつもりはない。軸を絶対にぶらすことなく、食の安全・安心にこれからも貢献していきたい」と力強く語る。

篠原 正樹

尾松 賞昭 | おまつ よしてる

略歴
1963年 坂出市出身
1989年 香川大学商業短期大学部 卒業
1997年 株式会社コーエイコンピューターシステム 設立
     代表取締役社長

髙橋 智子 | たかはし ともこ

略歴
1962年 丸亀市出身
1992年 香川大学商業短期大学部 卒業
1999年 株式会社コーエイコンピューターシステム 入社
     専務取締役

株式会社コーエイコンピューターシステム

住所
香川県坂出市旭町一丁目1-27
代表電話番号
0877-44-1668
設立
1989年
社員数
37人
事業内容
オリジナルソフトウェア及びコンピューターシステムの企画・販売・保守・機器販売
(主に医療関係・食育・特定保健指導・栄養管理を中心としたソフトウェアの販売・ネットワーク構築・機器販売)
沿革
1989年 創業(主目的はパソコン教室、業務用ソフト開発)
1991年 「EIBUN養護学校版(現特別支援学校版)」発売
1996年 有限会社コーエイコンピューターシステムとして企業登記
1997年 株式会社に組織変更
2003年 東京支店 出店
2005年 ソフトウェア企画開発部門を株式会社フリースタイルとして分社
資本金
3000万円
拠点
東京本社、名古屋支店、大阪支店、広島支店、福岡支店 他
グループ
株式会社フリースタイル(ソフトウェアの企画・開発)
地図
URL
https://tera-net.co.jp/koei/
確認日
2023.09.21

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