謙虚さと向上心をもつ

香川県警本部長 岡部正勝さん

Interview

2020.01.03

仕事をする上で大切にしているのは、謙虚さと向上心。「警察は与えられている権限が強い。だからこそ、自分のもつ権限の大きさに慣れてはいけない。謙虚さが必要です」

向上心は、いくつになっても自分を成長させてくれる。サイバーセキュリティ担当として配属されて間もない時、部署内の専門家たちの話が分からず必死で勉強したという。1年後には、大学に出向してサイバーセキュリティの講義をするまでになっていた。

大学では、サイバーセキュリティのほかに、治安政策や犯罪捜査、テロ対策といった社会安全政策論について講義をし、ゼミも受け持った。生徒である大学生が、SNSの危険について小学校で出前授業をする際はアドバイス、同行し、自身は保護者や先生に授業をした。

「大学では新鮮なことばかり。例えば人間関係も」。警察では上下関係があって、幹部になるにつれて意見を言ってくれる人が少なくなる。「でも、学生にとって私はただの先生。授業が面白くないと聞いてもらえないし、そもそも来ない」。警察の外の世界を知り、若い人の視点に触れる貴重な経験だったという。

信頼は努力で支える

フランスの日本大使館に出向した経験もある。警察の代表として現地での情報交換や、ヨーロッパで訓練を行う日本の警察の特殊部隊(SAT)の受け入れなどの業務に携わった。赴任中の2005年に、移民系の若者を中心としたフランス全土の都市郊外での暴動が起こり、現地の状況を日本に伝えた。「結婚や就職での差別、貧困といった問題が背景にある。多様な人達が社会の中でどう生きていくか、今後の日本でも考えるべき問題ですね」

海外での生活で、日本の警察は恵まれていると感じた。「国民からの信頼という点で圧倒的に高い。これは世界の中では当たり前じゃないんだということを、警察学校の学生や若手にも言っています」。信頼は、先輩や我々一人ひとりの努力によって築かれる。そこに安住してはいけない。「信頼を支えていくのも、私たちの仕事だと思います」

1日1000本の素振り

剣道の稽古中

剣道の稽古中

興味をもったことには集中的に取り組む性格だという。小学校の時は「なぜかプロの棋士になると思っていた」ほど将棋にはまり独学で勉強。小学生名人戦にも出場した。プラモデルや鉄道模型を集め始めて鉄道マニアになり、中学の時は一人で鉄道の旅をした。

中学のころから続いているのが剣道だ。「やっていない時期もありましたが、警察に入ってまわりに師範クラスの方がたくさんいるので、教えていただこうと思って再開しました」。今も、普通の竹刀や重い木刀を使って1日1000回素振りをしている。香川に赴任してから書道も始めた。
交通キャンペーンで

交通キャンペーンで

今後香川で、交通安全、サイバー犯罪対策などにも力を入れていきたいという。「シートベルトをつける、セキュリティソフトを入れるなど、個人や企業が気をつけるだけで結果は全然違ってくることも多い。そういった啓発をしっかりしていきたいと思います」

岡部正勝さん |おかべ まさかつ

略歴
1965年 東京都生まれ
1984年 私立開成高校 卒業
1990年 東京大学法学部 卒業
    警察庁 入庁
1996年 フランス国家警察大学校 留学
2001年 警察大学校教授(兼東京都立大学法学部講師)
2004年 在フランス日本国大使館一等書記官
2009年 警視庁警務部教養課長
2011年 千葉県警察本部警務部長
2014年 警察庁長官官房参事官(サイバーセキュリティ担当)
2015年 慶應義塾大学総合政策学部教授(兼・武蔵野大学法学部客員教授)
2018年 関東管区警察学校長(兼・早稲田大学大学院法務研究科講師)
2019年 香川県警察本部長

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