違いを知り、いろいろな面から物事をみる

三井住友海上火災保険執行役員 四国本部長 高樋 毅さん

Interview

2020.05.08

海外赴任の経験がある上司や先輩の話を聞き、いつか自分もチャレンジしてみたいと思っていた。実現したのは33歳の時。会社の海外研修制度を活用してアメリカのロー・スクールに留学した。その後アメリカに6年間、タイに4年間、駐在員として勤務した。

アメリカでの業務は、経営企画、法務、コンプライアンス、リスク管理など。「日本では“一を聞いて十を知る”ような中で仕事ができていたので、とにかく強く主張しないと何事も動かない環境に最初は腹を立てたりもしました。けれど、他意があるわけではなく価値観や文化の違いだと思えば、面白くなってきて。いい経験をさせてもらいました」

保険商品にも違いがあった。雇用慣行賠償責任保険、いわゆるパワハラ、セクハラなどを理由に会社が従業員から損害賠償責任を追及された際の保険についても、2000年ごろすでに専用商品があり、男性から男性へのセクハラという事例も。ほかにもさまざまな場面で、賠償責任に対する日本との意識の違いを実感したという。

ロー・スクールを目指したきっかけは、1993年に日本で会社法が改正されたのを機に発売された「役員賠償責任保険」(注)を勉強し始めたこと。会社は誰のものか、従業員は突き詰めると労働力という商品を会社に販売している“アウトサイダー”である……。「調べるほど新しい発見があった。アメリカで会社法、司法制度などを本格的に学びたいと思いました」

海外赴任を経て、改めて日本や日本人に興味をもった。「熱帯の作物であるお米を寒冷地である日本で作るためには、ちゃんとしたスケジューリングと高い規範性がないとできないな、とか。いろいろな分野で“日本人とは”を考えるようになりました。古事記や日本書紀、武士道などの本も読みました」。日本と海外、どちらがいいというわけではなく、さまざまな価値観がある。物事を表、裏、ななめ、多方向から見ようと心掛けるようになった。

ボート部どうしの連帯感

ボート部で(1987年インカレ、右端本人)

ボート部で(1987年インカレ、右端本人)

中学・高校の陸上競技部とは違うことをやりたいと思っていた大学入学時、誘われてボートの試乗会に参加した。「当時、学食の一番高い定食が400円ぐらいなのに試乗会の帰りに先輩が800円もする定食をおごってくれて、恩義を感じてそのまま入部です」

合宿続きの練習は厳しかったが、漕手の息がぴったり合い、水をつかんでボートが進む感覚になった時は本当に気持ちがいいという。「マイナーなスポーツなので、同じ学校でなくてもボート部出身者どうしの連帯感は強いです。それが人脈づくりに生きたこともあります。あと、つらいことに耐えられる力がついたかもしれません」

初の地方赴任が楽しみ

仕事風景

仕事風景

初めての地方勤務となる香川での生活が楽しみだという。「関西出身なので、うどんのだしは好みの味です。瀬戸内海の風景も、山が見える景色も懐かしさを感じます」

地域のことを知り、課題を見つけ、行政や地元企業とも協力しながら香川が元気になる取り組みをしたいという。「社としてSDGsに取り組んでいます。これから企業は自分たちの利益だけを考えていては存続できない。交通事故削減、災害対策、環境分野……損害保険業としての力が生かせる分野で地域のお役に立ちたいと思います」


注=企業の役員などに不当な行為があったとして損害賠償請求を受けた場合に、保険金が支払われる。D&O保険ともいう

高樋 毅 | たかとい たけし

1965年 東京都生まれ
1983年 兵庫県立川西明峰高校 卒業
1988年 神戸大学法学部 卒業
    大正海上火災保険 入社
2003年 三井住友海上火災保険 人事部 給与厚生グループ業務課長
2004年 MS Marine Management USA出向 兼 国際業務部課長(米・ウォーレン駐在)
2010年 東京企業第一本部 総合営業第二部次長 兼 物産営業第一室長
2013年 監査部海外チーム 部長
2014年 タイ支店長 兼 アジア持株会社事業 ラオス現地法人
2018年 東京企業第二本部 企業営業第二部長
2019年 執行役員 東京企業第二本部 企業営業第二部長
2020年 執行役員  四国本部長

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