「やりたいこと」に向かって
全力で努力する

NHK高松放送局 局長 池田信浩さん

Interview

2019.08.15

高松放送局ロビーにある8Kシアターで

高松放送局ロビーにある8Kシアターで

最初の勤務地・北海道でカメラマンとして配属されて以来、キャリアのほとんどを報道カメラマンとして過ごしてきた。業務はニュースの撮影だけでなく、話題を拾って原稿も書き編集にも携わる。ベテランになると番組の撮影も行うが、まずは撮ることの基礎を叩き込まれた。「ニュース撮影で最も大切なのは、“何を撮るか”なんですが、最初に現場に行った時は、何を撮ればいいのか全く分かりませんでした」

そこで、翌日のネタが決まると予定原稿を書いて撮るべき映像を頭に思い浮かべる。それを丹念に続けているうちに予定原稿を書かなくても現場でどういう映像を撮るべきか自然に分かるようになったという。「書いた原稿はデスクがチェックして直すけれど、映像は変えられない。最初はそれが不安でしたが、だんだん“一発勝負”の感覚が快感になってきて。カメラマンは自分に合っていたんでしょうね」

経験を重ねると、自分が撮りたいものも見えてくる。「北海道にいたからかもしれませんが、『自然と人間のかかわり』をテーマにしたネタが多かったですね」。今も覚えているのは、ゴルフ場に出没するキツネの話。キツネがゴルファーたちの打ったボールをくわえて逃げてしまうという話題だが、そこに自然開発が進む現実や共存の難しさといったテーマを、キツネを追いかけるゴルファーたちと恨み節のインタビューを交えて表現した。「社会的なメッセージがないと報道として意味はない。独自ネタの企画リポートを制作する時は、放送する意味を常に自分に問いかけるようにしていました」

会心の作品

マダガスカルの子どもたちと(カイロ支局カメラマン時代)

マダガスカルの子どもたちと(カイロ支局カメラマン時代)

入局してすぐに、海外特派員を目指した。「テーマを決め、取材、撮影、原稿執筆、中継リポートなど、すべてをこなすのが特派員。インド・ニューデリーへの赴任で念願がかないました」。紛争、テロ、貧困、差別など過酷な現実に何度も直面した。「だからといって感情移入しすぎることなく、自分のフィルターを通して事実を伝える。今この場所に自分が立つために、多くの人の労力がかかっているんだから、全力でやるしかないと思いました」

ドキュメンタリーも制作した。マザー・テレサ没後1年にその功績を振り返る内容だ。生前、彼女が支援していたハンセン病の治療・自立施設で本人がいない中、多くの人が集まり誕生会が開かれる。カースト制度があるインドで、身分も宗教も関係なくすべての人がお祝いの言葉を述べる。「マザー・テレサが身分も宗教もすべて超越した存在だった、という本質が伝えられた会心の作品でした」。放送後の反響が高かったことも嬉しかったという。

後輩たちへ、環境を整えたい

四国全土走破の旅(室戸岬にて)

四国全土走破の旅(室戸岬にて)

自身、NHKの報道カメラマンとしては、やりたいことをやり切ったと感じている。「後輩たちもきっとやりたいことがあって入局してきたと思います。特派員になりたければ語学を勉強して、潜水カメラマンならプールに通う。努力して絶対、目標を実現してほしいですね」。そのための環境を整えることが、今の自分の仕事だと考えている。

あとは、趣味と実益を兼ねて自転車で香川を隅々までまわりたいという。「松山にいる時に四国全土を走破しましたが、もう少しじっくりと見て香川の魅力を吸収し、仕事のモチベーションアップにもつなげていきたいですね」

石川恭子

池田 信浩 | いけだ のぶひろ

略歴
1963年 長崎県生まれ
1982年 長崎県立長崎南高校 卒業
1986年 青山学院大学 卒業
    日本放送協会(NHK) 入局
    札幌放送局放送部カメラマン
1993年 本部報道局映像取材部カメラマン
1997年 インド・ニューデリー支局カメラマン
2000年 本部報道局映像取材部デスク
2005年 エジプト・カイロ支局チーフカメラマン
2007年 本部報道局映像取材部総括デスク
2012年 名古屋放送局報道部専任部長
2015年 鹿児島放送局副局長
2017年 松山拠点放送局副局長
2019年 高松放送局局長

NHK高松放送局

住所
高松市錦町1-12-7
TEL.087・825・0151(代表)
地図
URL
http://www.nhk.or.jp/takamatsu/
確認日
2018.02.15

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