「外から見る日本」を知る
若者たちに期待したい

独立行政法人日本貿易振興機構 地域統括センター長(四国)・香川貿易情報センター所長 水田 賢治さん

Interview

2025.01.03

高校3年まで海外には興味がなかったが、バブル期に大学生活を送り、海外留学をする同級生たちに持ち前の負けず嫌いが刺激されて、大学3年から一人旅を始めた。オーストラリアを皮切りに中国、エジプト、イスラエル、ケニアなど各国を歴訪。ケニアで見た大草原のスケールの大きさに衝撃を受けて「海外で働きたい」と考えるようになったのが、日本貿易振興機構(ジェトロ)に入構するきっかけだった。

14年にわたる駐在経験で リアルな中国市場に精通

新潟事務所で地域企業とのかかわりを学び、香港事務所で1年間の研修を経て、30代前半で上海事務所に配属。中国における日本製品の模倣品が問題視される中、知財業務担当として年間約400件の相談を受けた。「ジェトロは地域のためにある、と上司に叩き込まれていましたから、目の前の問題を放っておけず、50社くらいのグループをつくって対策に乗り出しました」。次第に中国市場の実情に精通した模倣問題の第一人者として認知されるようになり、メディアでもたくさん取り上げられるなど、自身でも「絶好調でした」と振り返る30代を過ごした。

東京本部に戻ってからは知財のほかヘルスケア産業、サービス産業などを担当し、2017年から大連事務所で3年、上海事務所で4年間所長を務めた。特に上海は日系企業が数多く進出し、世界76カ所のジェトロ海外事務所の中でも最大規模。それまで培ったリアルな中国の知見を活かし、日系企業との連携を深めて日中貿易や投資の支援に打ち込んだ。

昨秋、上海を離れて香川貿易情報センター所長に着任。東京本部と海外駐在がキャリアの大半を占める水田さんにとって、地方勤務はこれまで20代で経験した新潟のみ。帰国に当たって「日本で仕事をするなら地方がいい」と強く希望して、候補地の中から香川を選んだ。「望んで来たというと香川の皆さんには驚かれますが、私は人と同じことをするのが嫌い、自分と違う人たちと話すのが大好き、という異端児なんです。実際に暮らしてみると関東の人たちがまだ知らない魅力がたくさんあり、県民性も気さく。あちこちで『香川はすごくいい!』と公私問わず発信しているところです」

若者よ、世界を知ろう

現在の支援は、地域企業の輸出サポートや外国人材受け入れのアドバイスが中心。四国をベースとしつつ、全国組織であるジェトロのネットワークを生かして他地域とも柔軟なマッチングを図るかたわら、水田さんが重視するもう一つのテーマが「若手の啓発」だ。

「若い人たちと直接交流する機会は少ないんですが、これからは日本だけでは解決できない問題が増える時代。世の中の問題はすべて地続きで、直接的・間接的に世界と自分がつながっているという意識や出会いを若い頃からしっかり育めば、将来の選択肢も広がるはず」と、若いうちに海外に出て日本を外から見るダイナミズムの重要性を訴える。「インバウンドもいいけれど、世界レベルで渡り合える強い国・地域であり続け、人口が減る中でも地方の都市機能を維持していくためには、ものづくりの分野でイノベーションを起こす人材や企業を四国にも育てていく必要があります。そのために私たちが役立てることがあればうれしいですね」と語った。

戸塚 愛野

水田 賢治 | みずた けんじ

略歴
1968年 東京都生まれ
1992年 横浜国立大学工学部 卒
    日本貿易振興機構 入構
1999年 日本貿易振興機構 上海事務所
2017年  同 大連事務所 所長
2020年  同 上海事務所 所長
2024年  同 香川貿易情報センター 所長

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