山田家物流に入社したのは24歳の時。それまでは、高級輸入車ディーラーで勤務していた。「いずれは帰るつもりでしたから、在籍している3年間で目標台数を必ず達成しようと思っていました」。2年あまりで目標を達成、休暇で帰省し実家の店を手伝っていた時、うどんを食べて笑顔になるお客さんの姿を見た。「うどんを囲んでみんないい顔してるんです。父や母が一生懸命つくってきたうどんはおいしいんだ、いい仕事だなあと思いました」
経理や事務、仕入れの見直し、パンフレット制作、店舗の手伝いなどの業務をしながら1年ほどたった時、突然父から製造工場の工場長を命じられた。「中学の時から手伝っていたので工程は何となく分かっていましたが、工場長という立場に戸惑いました」。教えてもらいながら仕事をする中で、職人の勘と経験に頼る部分が多い作り方に疑問をもった。「このやり方で、次の世代にどう伝えていけばいいのか、工場の生産量が増えた時に安定して品質が保てるのか」
そこで、気温や湿度で変わる塩、水、粉の量など分かることはすべて数値化した。よりよい品質を追求し、水の硬度を調整したほか、精麦度合までこだわったオリジナルの粉をメーカーと一緒に開発した。
反発もあったが長い時間かけて話をし、信頼できる従業員と新たに加わった若い職人たちで再スタートを切った。チームの中心になってほしい人に毎日手紙を書き「今日やる業務、なぜその仕事をするのか」を伝えた。「とにかく風通しがよくてずっと働きたいと思える会社にしたかった。父がやっていたように従業員といろんな話をしました。うちには社長室がありません」
心身の疲れ、ストレスからか3カ月あまり入院したこともあったが、「いざという時は山田家の社長である兄が助けてくれると思えたから、思い切った取り組みができました」
デザインは大事
現在もネットでコンスタントに受注があり、顧客リピート率は楽天市場でもトップクラス。「『お土産、特産品を売る』ではなく、買われたお客様が食べて本当においしいと感じ、大切な人に贈りたいと思ってもらえる商品、というコンセプトで企画しています。あと徹底的に大事にしているのはデザインです」
デザインへの考え方は、会長である父から受け継ぎ、創業する際に店舗をプロデュースした香川出身の画家・商業デザイナーの和田邦坊の教えを基本としている。和田邦坊は父・潔さんの叔父にあたり、店のロゴやパッケージ、内装などを手掛けた。「とにかく“本物”を使うこと。偽物は風化するが、本物は時がたつほど味わいが出てくる。いま本店にある家具は創業時のものばかりです」
インパクトがあり、かつ洗練されたパッケージはギフトとして多くの支持を集めている。
本店の味に近づけるため
材料にふさわしい昆布を探し、たどり着いた北海道のある浜。そこの浜の昆布を加工できる技術の高いメーカーと、1年半かけて通販用のだしを開発した。今でも改良を続けている。目指すのは、父母が作り出したお店の味だ。 “本物”のおいしさで、ファンが増えた。
「東京ではカレーうどんは当たり前で、専門店もたくさんある。でも実は香川では、カレーうどんは王道じゃないという扱いなんです。私もそう思っていました」。これが、開発魂に火をつけた。圧倒的にうまいカレーうどんを――。
メーカーがカレー専門店を出すのかと驚くほどスパイスの調合に時間をかけ、14種類の香辛料を使用。ガツンとした辛さの大人向けカレーうどんが完成した。パッケージには、邦坊のもとで仕事をしていた人から寄贈された絵を入れてデザイン。展示会では、バイヤーからの商談申し込みが相次ぎ、いまやギフトの看板商品となった。
仕事を通して実現したい夢がある。「名物といわれるけれど、香川のうどん職人は減っています。だから、ドイツのマイスターのように、職人がもっとみんなから尊敬されるようにしたいんです」。自分の仕事に誇りをもち、山田家で働いていることを自慢できるような会社に、業界にしていきたいと将来を見据える。
石川恭子
山田康介 | やまだこうすけ
- 略歴
- 1978年 高松市(旧木田郡)生まれ
1997年 香川県立高松商業高校卒業
2001年 同志社大学商学部卒業
ディーラー勤務を経て
2002年 山田家物流入社
2013年 代表取締役
株式会社 山田家物流
- 住所
- 香川県高松市牟礼町牟礼3186
- 代表電話番号
- 087-845-0012
- 設立
- 2002年
- 社員数
- 53
- 事業内容
- 生うどん・冷凍うどん製造、販売、卸売
- 確認日
- 2020.05.08
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