可能性は無限 地域のすき間を埋めていく

合同会社 三豊鶴

Interview

2020.01.03

この日集まった4人で。細川貴司さん、喜田貴伸さん、矢野太一さん、北川智博さん(左から)

この日集まった4人で。細川貴司さん、喜田貴伸さん、矢野太一さん、北川智博さん(左から)

三豊鶴は、約15年前まで三豊市内で造られていた日本酒の銘柄だ。廃業したその酒蔵を生かして活動するのが、2019年設立の合同会社三豊鶴。市内の30~40代の経営者5人が集まり、共同で経営している。

メンバーは喜田建材の喜田貴伸さん(44)、モクラスの矢野太一さん(42)、西日本住建の寺下幸治さん(40)、HARASHIMO BASEの屋号で農業を営む細川貴司さん(34)、瀬戸内うどんカンパニーの北川智博さん(34)。北川さんは高知県、4人は三豊市の出身だ。

地域のために何かできないか―。そんな思いで集まった5人。18年の年末に蔵を見学し、急ピッチでリノベーションを進めた。「初めて見たとき、とにかくかっこいいと思った。ありのまま、いいところを使おうと考えました」と北川さん。建物を残したい、それは酒蔵のオーナー家族の願いでもあった。瓶や樽、木箱など蔵に元々あったものを生かし、19年のゴールデンウィークに観光拠点「三豊鶴」としてオープンした。
「地域食文化継承レストラン」で提供した  荘内半島の鯛のポワレ 室本甘酒みかんバターソース

「地域食文化継承レストラン」で提供した

荘内半島の鯛のポワレ 室本甘酒みかんバターソース

地元の人には三豊の魅力を再発見してもらい、観光客にはここでしかできないことを体験してもらうことを目指した。ゴールデンウィークは、三豊市出身のシェフの協力を得て「地域食文化継承レストラン」として営業。市内でとれた野菜や魚などの食材を使った料理を提供した。

「お客さんが喜んでくれて、改めて三豊の可能性を感じた」と矢野さん。喜田さんは「漁師さんが『自分がとった魚がこんなにおいしくなるのか』と、プロの料理に感動していました」と話す。

瀬戸内国際芸術祭2019の夏会期に合わせて、ブランド豚の「讃玄豚」など三豊の食材を使った「みとよプレミアムBBQ」、秋会期にはレストランに加えてアートギャラリーとしても運営した。 

だが、合同会社三豊鶴の目的は飲食業、ギャラリー業、イベント業を営むことではない。「事業は、地域にないもの、必要とされているものを埋めていく手段です」と北川さん。自分たちの利益のためではなく、地域全体に波及効果があるような活動にしたいという。これまでの食やアート、音楽などのイベントにとらわれず「酒蔵×○○」の掛け算を増やしていく。
酒蔵をリノベーションした「三豊鶴」

酒蔵をリノベーションした「三豊鶴」

2020年の抱負を聞いた。県外出身の北川さんは「三豊鶴を汎用性の高いビジネスモデルとして、全国に発信していくのが自分の役割」と話す。「地域の人と密接に関わることで、課題が見えてきた。解決のお手伝いができれば」(喜田さん)。「農家が農業以外で観光に携わることは珍しいと思います。自分たちのチャレンジが、周りの人たちにも良い影響を与えられたらうれしい」(細川さん)。「歴史のある蔵を受け継いだので、しっかり守っていきたい。次の世代の若者が僕たちを見て『三豊で働きたい』と思うきっかけになれば」(矢野さん)

2019年はスタートダッシュの年と位置付け、メディアにも積極的に発信した。2020年は事業の軸をしっかりと作る一年にする。

現在、本蔵をゲストハウスに改修中。酒蔵時代に杜氏が寝泊まりしていた場所だ。大きな釜を置いて、酒粕や麹入りのお風呂を楽しんでもらう。湯を棒でかき混ぜて、杜氏を疑似体験。ゲストハウスの名前は「TOUJI」にしようと考えている。2020年春の開業予定。宿泊客に食べて終わり、見て終わりではない体験をしてもらうという。

鎌田 佳子

合同会社三豊鶴

住所
香川県三豊市詫間町字須田5437
設立
2019年
地図
URL
https://www.mitoyotsuru.com
確認日
2019.12.20

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