時代の変化をとらえて 体を動かす楽しさを提案

都村製作所 社長 都村尚志さん

Interview

2019.12.19

自社製の遊具がある「田尾坂公園」で=坂出市

自社製の遊具がある「田尾坂公園」で=坂出市

「いい遊具」を追求して

「子どものころ、学校や公園のどんな遊具で遊びましたか?」
 
世代によって答えは違うかもしれない。遊具は時代によって変化してきた。時流をいち早くとらえ、明治時代の創業から126年続いてきた公園遊具と体育器具の専門メーカーが香川にある。

都村製作所の5代目となる都村尚志さん(54)が銀行勤務を経て入社した1994年ごろ「公園の遊具といえばまだブランコ、すべり台、砂場が『三種の神器』でした」。その後、遊具は大型化、一つですべり台やネットなど多彩な要素を組み合わせた複合遊具が増える中で、さまざまな製品を世の中に送り出してきた。

「いい遊具とは、子どもが『やってみたい』と思わず駆け寄るようなワクワク感やスリルがあること。ワクワク感をなくさないようにしながら、いかに安全なものをつくるか。難しいですが工夫のしがいがあります」
オリジナル遊具「やまびこの樹」

オリジナル遊具「やまびこの樹」

いい遊具を追求する中で生まれたのが、木の形をしたオリジナル製品「やまびこの樹」だ。らせん状に組まれたネットを迷路のように登っていく。ネットは登っている途中で寝転んだらハンモック代わりになり、転落防止の役割も果たす。頂上付近にはツリーハウスがあり野鳥観察もできる。

「どんなふうに遊ぶかは子どもたちの自由。想像力を刺激して飽きないこともいい遊具の条件なので、我ながらいい製品だと思っています」。やまびこの樹は現在、北海道から沖縄まで約40カ所に設置されている。

「2本柱」の強みを生かして

BMXフリースタイルのセクション

BMXフリースタイルのセクション

同社は、公園の「遊具」と、バスケットボールのゴールやトランポリン、バドミントンポストといった「体育器具」の2本柱で事業を展開する。どちらも「少子化」の影響は避けられない。「遊具=公園・子どもたち、という枠にとらわれていると厳しい。体育器具も学校向けの製品だけでは先細りです」

そこで、もたれて背中を伸ばせるベンチ「のびのび」や、前屈運動ができる「しんしん」といった大人向け健康遊具「ちょいトレ」シリーズをいち早く手がけた。また、100人が一斉にのれる約163mの円形ブランコを製作し、ギネス世界記録に認定された。大型アミューズメント施設とのコラボにも取り組んでいる。「これからは幅広い世代に向けて、遊具を含めた空間全体を提案していきたい」

体育器具の分野でも新たな取り組みを進めている。スポーツを「観る」楽しさを演出する、エンターテインメント性の高い製品の提案だ。例えば、アリーナの天井から吊り下げて4方向から見ることができるスコアボードや大型ビジョンなど。映像や音楽、照明を使った華やかな演出ができ、バスケットボールBリーグやアイスホッケーの試合会場で採用されている。

体育器具と遊具は材料も製作工程も全く違うため、作業効率やコスト面を考えると課題もある。業界で両分野の製品を作っているのは都村製作所だけだという。しかし「2本柱である“強み”の方が大きいと思っています。両方やっていなかったら『スケートパーク』への参入もなかったかもしれません」

スケートパークとは、スケートボードなどでジャンプする時に使う、傾斜を付けた工作物(=セクション)を設置した施設のこと。セクションは遊具と同じように屋外の公園などに設置するが、競技用のスポーツ器具としての側面もある。「当初は手掛けたことがない製品でしたが、2本柱のノウハウがあるから絶対できる、チャレンジしたいと思えたんです」。少しずつ実績を積み重ね、今では全国ナンバーワンの公共スケートパークビルダーとなった。

選手と一緒に世界を目指す

世界中のアスリートから絶賛される製品を、つくってみたいですね

世界中のアスリートから絶賛される製品を、つくってみたいですね

ツムラのセクションの品質が競技者の間で知られるようになった頃、自転車競技「BMXフリースタイル」のセクションをつくる話が競技連盟との間でもち上がった。BMXフリースタイルは東京五輪で新たな種目になる競技だ。
 
社内でBMX専門チームをつくり、スケートパークの技術を生かしながら試行錯誤。試作品を国内のトップ選手に試走してもらい意見を聞き、それをフィードバックして何度も改良した。「大変でしたが、アスリートの意見を直接聞けるのはおもしろかった。選手と一緒に世界を目指している感覚です」。ツムラのセクションはいいジャンプができる―と選手たちの評価も高く、18年・19年の全日本BMXフリースタイル選手権に採用された。

銀行を辞めるとき迷ったという。しかし「全国にあまりないニッチな業種だからやりがいがある。何より、うちの製品で子どもから一流アスリートまで笑顔にできるなんて素晴らしい仕事だと思いました」

生き残っていくためには、自由な発想で新しいチャレンジをし続けないといけない。「今注目しているのは、幾多の障害物を乗り越える速さと技を競う『パルクール』という競技です」。常にアンテナを張って新しい分野を開拓する。「いつか世界中のアスリートに絶賛される製品をつくってみたいですね」

石川恭子

株式会社都村製作所

住所
香川県仲多度郡琴平町590番地
代表電話番号
0877・73・2251
設立
1893
社員数
75人
事業内容
体育器具、公園遊具の設計、製造、販売、施工
支社
東京支店:東京都新宿区高田馬場1-7-6
仙台営業所:宮城県仙台市青葉区昭和町3-20
㈱ツムラ札幌:札幌市白石区平和通10-11-7

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