技術力と発想力で “エジソン”のような会社に

四国計測工業 社長 寺井 昇二さん

Interview

2022.10.06

2月に高松シンボルタワー28階に開設した高松オフィス=高松市サンポート

2月に高松シンボルタワー28階に開設した高松オフィス=高松市サンポート

“盲点”突いた画期的装置

多度津町に本社を構え、“よんけい”の愛称で親しまれる四国計測工業。電力量計や電力設備監視制御システムの製造、発電所のメンテナンスなど 「四国電力グループの一員」としての役目を果たしつつも、よんけいの領域はその枠に全くとらわれない。培ってきた技術力と発想力で次々と画期的な製品を生み出していく。「“エジソン”のような会社になりたい」と社長の寺井昇二さん(62)は熱く語る。

そして、今売り出し中なのが「エイジングブースター」。食肉など食材の熟成を促進させる装置だ。その目の付けどころは「業界関係者から『盲点だった』と絶賛されました」

「ネギ計量結束システム」は、農家がこれまで手作業で行っていたネギの計量と結束を電子天秤などを用いて自動化。労力を50%以上カットし、ニラやワケギなどの長尺野菜にも対応できる。

「自動検卵機」は、様々な角度から卵を撮影。血管を浮き出させるなどの画像処理を行うことで、良卵なのか不良卵なのか、スピーディーかつ正確に判別する。
食材の熟成を促す「エイジングブースター」

食材の熟成を促す「エイジングブースター」

これまで大学の研究室向けに、マイクロ波を使って化学反応を促進する実験用の加熱装置などをつくっていた。その「マイクロ波」に、ある社員が注目した。「冷蔵庫の中に電子レンジがあるイメージです」

冷蔵庫のように冷やした装置内で、食肉に数十㍗程度のマイクロ波を当てる。肉の表面は0℃前後の低温を保ったまま、内部は10℃前後まで温度を上げる。内部で酵素が活性化して熟成が進み、肉の旨味が増すという仕組みだ。2週間以上かかっていた熟成期間を、肉を傷めることなく1週間程度に短縮でき、「全国の一流シェフからも高い評価を得ています。魚やチーズ、ワインなどにも活用できそう」と寺井さんは自信を見せる。「これからも時代の変化に合わせて、新たな価値を生み出していきたいと思っています」

新しいものには“旬”がある

その柔軟でユニークな発想はどこから来るのか。

「アイデアの募集は年中やっています」

5年前には社内に「アイデア道場」をつくった。エンジニア、営業職や事務職など部署の垣根を越えた5人程でチームを組み、新規事業のアイデアを練る。「専門の講師に指導してもらい、泊まり込みで研修することもあります」。斬新な製品が次々と生まれるわけではないが、「新しいものを創り出していくという社内風土を醸成したい。普段接することの少ない他部署の人とコミュニケーションを取ることは、視野を広げ、多様性を知ることにもつながります」
四国計測工業本社・多度津工場=多度津町南鴨

四国計測工業本社・多度津工場=多度津町南鴨

四国電力出身の寺井さん自身、40代の頃は新規事業を立ち上げる部署でリーダーも務めた。「新規事業では様々な業界とのコラボレーションも多い。 違う業界の人から知識を吸収し、異分野の専門用語や常識を猛勉強しました」

新たなビジネスの開発に携わる中で感じたのは「新しい製品やサービスの提供には『旬』がある」こと。「人々のライフスタイルや意識の変化、技術の進展など、環境が違えば結果も違ってくる。タイミングとチャンスを見極めることがとても重要」と口調を強める。「難しいけれど面白い。それが新規事業の大きな魅力ですね」

「何とかならない?」に応える

経営者として心がけているのは、社員とのコミュニケーションや働きやすい環境づくり。 子育てサポートに積極的な企業だとして国から「くるみん」認定を受け、女性の活躍を推進する「えるぼし」の3つ星認定も受けている。

さらに今年2月には、サンポートに高松オフィスを開設。フリーアドレスで、28階の大きな窓からは瀬戸内海が一望できる。「高松から多度津の本社に通勤している社員も多く、高松の業者さんとの打ち合わせも多い。時間を節約し、生活にゆとりを持ってもらえれば」

いくつもの新たな試みが常に進行中だ。AIを活用した熱画像解析で火力発電設備の異常を早期発見する仕組みを、四国電力、香川高専と共同開発している。「私たちが担当するのは全体のシステム構築と試験環境の整備など。12月から実証実験を始める予定です」

また、徳島大学とは「宇宙などの極限環境での野菜栽培」 に取り組む。「宇宙飛行士の宇宙での長期滞在などに備えた研究です。空間や資源が限られる中での、難しくて面白い挑戦です」

今までになかったものを、誰も目を付けなかったやり方で、そして、自分たちが得意とする技術で創り出していく。「『よんけいさん、これ何とかならんかな?』と頼られる。『これはこうしたらどうでしょう?』と提案できる。そんな、社会や地域の課題と期待に応えられる会社にしていきたいですね」

篠原 正樹

寺井 昇二 | てらい しょうじ

略歴
1978年 丸亀高校 卒業
1982年 大阪大学経済学部経営学科 卒業
     四国電力株式会社 入社
     事業企画部新規事業グループリーダー、
     総合企画室環境部長などを経て
2017年 四国計測工業株式会社
     常務取締役経営戦略本部長
2019年 代表取締役専務取締役
2020年 代表取締役社長

四国計測工業 株式会社

住所
香川県仲多度郡多度津町南鴨200番地1
代表電話番号
0877-33-2221(FAX. 0877-33-2210)
高松オフィス
高松市サンポート2番1号 高松シンボルタワー28階
TEL. 087-811-2501/FAX. 087-811-2502
創業
1951年12月
資本金
4億8000万円(四国電力株式会社の100%子会社)
従業員数
768名(2023年3月現在)
事業内容
自動計測制御装置・情報伝送システムの設計・製作・施工、
電力量計・変成器の製造、計装設備の設計・工事・保守、
産業用自動化・省力化装置の設計・製作、環境分析 他
地図
URL
https://www.yonkei.co.jp/
確認日
2023.09.21

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