技術者集団が挑むLEDとレタス

四国計測工業 社長 和田 弘道さん

Interview

2016.07.07

完全閉鎖型の植物工場「さぬき野菜工房」=多度津郡南鴨の四国計測工業本社

完全閉鎖型の植物工場「さぬき野菜工房」=多度津郡南鴨の四国計測工業本社

人工の光を浴びて育ったレタスが青々と茂る。栽培しているのは四国電力グループの四国計測工業だ。本業は、家庭や企業の電気使用量を測る電力メーターなど計測制御機器の製造やエンジニアリングだが、国内有数の生産量を誇る低カリウムレタスの栽培工場も本社敷地内に構えている。

「まさかレタスを作ることになるとは思ってもみませんでした」

1年前に社長になった和田弘道さん(64)が掲げるテーマは新たな事業への挑戦だ。主力商品の一つだった半導体事業は昨年撤退に追い込まれ、売上のほとんどを占める四国電力からは、電力自由化に伴ってコストダウンを強く求められている。

「親会社におんぶにだっこではダメだ。社会に存在感を示していかなければならない」。独自技術でケタ外れな明るさを実現したLED照明の新事業も進行中だ。

四国電力出身で営業畑を歩んできた新社長は、技術者集団の仲間たちと共に新たな市場の開拓に挑む。

培った技術でレタス栽培

後方にあるのは大光量のLED投光器「MIRACH-LED」

後方にあるのは大光量のLED投光器「MIRACH-LED」

完全閉鎖型の植物工場を昨年、約4億円をかけて建設した。全くの畑違いにも思えるが、そうではない。「レタス栽培には、私たちがこれまで培ってきた計測や制御の技術が凝縮されています」

レタスは外気に触れないクリーンルームで水耕栽培され、光の明るさ、温度や湿度、養液の濃度など栽培に関する全てをコンピューターで制御管理している。種まきから育苗、収穫、包装までの全工程が工場内で完結し、カリウムの含有量が低く体に優しいリーフレタスを、一日4500株、年間100トン生産できる。「農薬も使っておらず、安全安心です。露地物と比べると、細菌の数は5ケタくらい少ないと思います」

レタスの種や養液、栽培ノウハウなどを持つドクター・ベジタブルジャパン社とフランチャイズ契約を結ぶやり方で、西日本を中心に約200店舗のスーパーなどで四国計測工業産のレタスが販売されている。

売れ行きは少しずつ伸びているが、「養液だったり空調だったり、贅沢な野菜なのでコストがかかるのが悩みの種です」。露地物の小売価格は1束150円程だが、植物工場で育てたレタスは300円くらいになってしまう。「販路を広げ、生産量を上げればコストは下げられる。将来的には付加価値の高い別の野菜にも挑戦していきたいと思っています」

新しい事業にかける和田さんの思いは強い。

社長に就任する3カ月前、四国計測工業は全体の1割に当たる年間20億円を売り上げていた半導体事業から撤退した。「前社長のつらい決断だったと思います」

愛媛県西条市の工場で自動車関連の半導体部品などを作っていたが、厳しいコストカット要請を受け、事業を続けられなくなった。工場を閉鎖し、勤務していた社員150人には早期退職を求めざるを得なかった。「次の事業がなかった。社員の行き場がなくなったんです。こんなことは二度と繰り返してはならない。私たちには事業が足りないと痛感しました」

主力事業の電力メーターも逆風の真っただ中にある。4月から始まった電力小売りの自由化には、電気使用量を自動計測し通信機能も併せ持つ「スマートメーター」が不可欠とされ、国が急ピッチで導入を進めている。

スマートメーターへの参入は大量生産が可能な大手メーカーに分があると言われ、現在の電力メーター事業は縮小が避けられない状況だ。

「だからこそ新たな事業に挑戦し、育てていかなければならないんです」
クリーンルームで栽培されているレタス

クリーンルームで栽培されているレタス

この会社に来た意味

松山市出身で、地元の役に立てる仕事をしたいと四国電力に入社した。ずっと営業畑を進んだが、「電力会社の営業と言ってもよく分かりませんよね。社内の人間にもあまり理解してもらえませんでした」

大口の法人を相手に電気料金を交渉し、レートを決める業務もあった。料金交渉と言っても、当時はライバル不在で売り手市場にも思えるが、「そんな簡単な話じゃないんです。月額数億円規模の電気を買ってもらう顧客と、1銭のレートを巡ってせめぎ合う。互いの立場を理解して、信頼関係を崩さないよう折り合いをつけていくという難しい仕事でした」

電力営業のプロフェッショナルになりたい。キャリアを重ねても、その思いは変わらなかった。それだけに四国計測工業の社長を言い渡された時は、「えっ、なんで私が?という戸惑いしかありませんでした。歴代の社長も技術のエキスパートがほとんどでしたから」

社員も9割以上が技術者で、会話には専門用語が飛び交う。「まるで英語を聞いているような感覚です」。技術者集団の中に入り、知識のなさに落ち込むこともあった。だが、「この会社は技術者側の目線が強い。社会のニーズをとらえるにはマーケット側の視点に立たないといけない。それが、営業マンだった私がこの会社に来た一番の意味だと思うんです」

大量の長ネギを自動で束にする機械、インフルエンザワクチンを作るための卵を識別する機械、工業用ゴムの巻き取り機・・・・・・「社内には何これ?何に使うの?と思うものがたくさんあります。技術が持つ面白さや可能性を日々、感じていますね」

300メートル先を照らすLED

LED投光器でライトアップされた丸亀城

LED投光器でライトアップされた丸亀城

現在売り出し中の商品は、他社を圧倒するほどの明るさを実現したLED照明だ。夜間に300メートル先から照らしても新聞が読めるというのが売り文句で、「実際にやってみたので間違いありません」

強くて明るい光を出そうとすると、機器が発光熱で高温になる。「照明器具の開発では、いかに放熱するかというのが常について回る課題でした」。鹿児島大学との共同研究で、瞬時に熱を拡散させる放熱システムを開発した。「省エネ性にも優れた画期的なやり方です。特許も取得しました」

早速、5月の丸亀お城まつりで丸亀城を鮮やかに夜空に浮かび上がらせた。山奥でのダム建設の工事現場、ゴルフ場や造船所などからも問い合わせが相次いでいる。「LEDを作る会社は全国にいっぱいありますが、明るさではどこにも負けません」

社長になってちょうど1年が過ぎた。「この会社はもっと社会に評価されてもいい。それだけの力を持っていると思うんです」

現在、売上の約7割は親会社の四国電力からの仕事が占めている。将来、自社オリジナルの事業を半分にまで持っていきたい。大きな目標を思い描く。

「私とは価値観も経験も考え方も違う。でも社員はみんな真面目で一生懸命です。確かな技術を持つ仲間たちと、地域の役に立てる会社にしていきたいと思っています」

編集長 篠原 正樹

和田 弘道 | わだ ひろみち

1952年 松山市生まれ
1975年 京都大学経済学部 卒業
    四国電力 入社
2005年 営業推進本部営業部部長
2011年 常務執行役員 東京支社長
2013年 常務取締役 お客さま本部長
2015年 四国計測工業 取締役社長
写真
和田 弘道 | わだ ひろみち

四国計測工業 株式会社

住所
仲多度郡多度津町南鴨200番地1
TEL:0877-33-2221/FAX:0877-33-2210
創業
1951年
資本金
4億8000万円
(四国電力株式会社の100%子会社)
従業員
714人(2016年3月現在)
事業内容
電力用計測制御装置
産業用メカトロ・熱加工機器の設計・製造・施工・保守 他
地図
URL
http://www.yonkei.co.jp
確認日
2018.01.04

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