笑顔咲かせる 手づくり麹

丸岡味噌麹製造所 丸岡 英明さん 敦子さん

Interview

2016.07.21

丸岡味噌麹製造所は、三豊市内に唯一残る麹屋だ。表にかかる「明治2年創業」の看板。格子戸を開けると縁台が目に入る。腰掛けて店主とゆっくり話したくなるような雰囲気だ。
5代目の丸岡英明さん(67)は、大学卒業から60歳で定年退職するまで商社に勤める会社員だった。会社員時代も、製造所の仕事が忙しい時には手伝っていた。

家業に専念したのは4年ほど前からだ。「幼い時からつくり方は頭に入っています。道具は多少変わっていますが、製造方法はそのままなんですよ」

麹は蒸した米や麦、大豆などに麹菌を繁殖させたもの。酒や味噌、醤油を醸造するのに使う。丸岡味噌麹製造所は県産米で麹を製造。その麹を使って味噌や甘酒をつくり店頭で販売している。ムシロの上で手作業を行う昔ながらの製造方法だ。

かつては町ごとに麹屋が1軒はあり、各家庭で麹を買って味噌や甘酒をつくることも珍しくなかった。そんな家庭が減ると麹屋も減り、麹そのものではなく加工品の味噌が求められるようになった。

風向きが変わったのは、5年ほど前に起こった塩こうじブームからだ。「九州の麹屋さんが麹に塩と水を混ぜて、塩こうじとして売り出したんです。それからうちでも麹を購入されるお客様が増えました」。丸岡味噌麹製造所の塩こうじや味噌、甘酒、もろみなどの詰め合わせは、三豊市のふるさと納税返礼品に選ばれている。

英明さんを支えるのが、妻の敦子さん(64)だ。結婚後に英明さんの両親を手伝い、麹づくりを始めた。「サラリーマンの妻になった気でいたから、自分で商売するなんて思いもしませんでした」。見よう見まねで作業を始めて、次第に感覚をつかんでいった。

今では店舗の一角で麹を使った味噌や甘酒のつくり方、塩こうじの使い方を教えている。お客さんに「お味噌は買うものじゃない、つくるものよ」と言うのが口癖だ。

「うちは365日、毎日お味噌汁。食べたもので体は作られるから、若い人には良い物を食べてほしいな」。味噌づくりを体験すると、自分でできるんだと言って感激する人が多いそうだ。一度食べたら手づくりはやめられないと、敦子さんは太鼓判を押す。
昨年10月、4代目だった英明さんの父が92歳で亡くなった。90歳まで作業場に立ち続けていた。敦子さんは「まずはつくり手が健康でないと。体が続く限り、手づくりでやっていきたい。大変だけど、手伝ってくれている娘が続けてくれたらいいなとは思いますね」と話す。

英明さんは「子どもの頃はどこへ行っても麹屋と言われるのが嫌でしたが、今は良く知られていていいかと思えるようになりました」と笑う。広島県や兵庫県などからも麹や味噌を買いに来る人がいる。遠方からわざわざ来てくれたのに、店が開いていなかったら申し訳ないという理由で、休むのは1月1日だけだ。

「こうじ」は糀とも書く。字の通り、完成するとお米に花が咲いたようになる。「神様からの贈り物とも言われるんですよ。何年つくっても不思議」と敦子さん。英明さん、敦子さんが丹精した麹が、食卓に笑顔の花を咲かせている。

副編集長 鎌田 佳子

丸岡 英明 | まるおか ひであき

1948年11月 三豊市生まれ
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丸岡 英明 | まるおか ひであき

丸岡 敦子 | まるおか あつこ

1951年 8月 三豊市生まれ
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丸岡 敦子 | まるおか あつこ

丸岡味噌麹製造所

住所
三豊市三野町下高瀬540
0875-72-5417
事業概要
麹、味噌、甘酒などの製造・販売
地図
確認日
2018.01.04

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