
家業に専念したのは4年ほど前からだ。「幼い時からつくり方は頭に入っています。道具は多少変わっていますが、製造方法はそのままなんですよ」
麹は蒸した米や麦、大豆などに麹菌を繁殖させたもの。酒や味噌、醤油を醸造するのに使う。丸岡味噌麹製造所は県産米で麹を製造。その麹を使って味噌や甘酒をつくり店頭で販売している。ムシロの上で手作業を行う昔ながらの製造方法だ。
かつては町ごとに麹屋が1軒はあり、各家庭で麹を買って味噌や甘酒をつくることも珍しくなかった。そんな家庭が減ると麹屋も減り、麹そのものではなく加工品の味噌が求められるようになった。
風向きが変わったのは、5年ほど前に起こった塩こうじブームからだ。「九州の麹屋さんが麹に塩と水を混ぜて、塩こうじとして売り出したんです。それからうちでも麹を購入されるお客様が増えました」。丸岡味噌麹製造所の塩こうじや味噌、甘酒、もろみなどの詰め合わせは、三豊市のふるさと納税返礼品に選ばれている。

今では店舗の一角で麹を使った味噌や甘酒のつくり方、塩こうじの使い方を教えている。お客さんに「お味噌は買うものじゃない、つくるものよ」と言うのが口癖だ。
「うちは365日、毎日お味噌汁。食べたもので体は作られるから、若い人には良い物を食べてほしいな」。味噌づくりを体験すると、自分でできるんだと言って感激する人が多いそうだ。一度食べたら手づくりはやめられないと、敦子さんは太鼓判を押す。
英明さんは「子どもの頃はどこへ行っても麹屋と言われるのが嫌でしたが、今は良く知られていていいかと思えるようになりました」と笑う。広島県や兵庫県などからも麹や味噌を買いに来る人がいる。遠方からわざわざ来てくれたのに、店が開いていなかったら申し訳ないという理由で、休むのは1月1日だけだ。
「こうじ」は糀とも書く。字の通り、完成するとお米に花が咲いたようになる。「神様からの贈り物とも言われるんですよ。何年つくっても不思議」と敦子さん。英明さん、敦子さんが丹精した麹が、食卓に笑顔の花を咲かせている。
副編集長 鎌田 佳子
丸岡 英明 | まるおか ひであき
- 1948年11月 三豊市生まれ
- 写真
丸岡 敦子 | まるおか あつこ
- 1951年 8月 三豊市生まれ
- 写真
丸岡味噌麹製造所
- 住所
- 三豊市三野町下高瀬540
0875-72-5417 - 事業概要
- 麹、味噌、甘酒などの製造・販売
- 地図
- 確認日
- 2018.01.04
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