船大工の父から受け継いだ「海」と「陸」の家具づくり

優和木装株式会社 代表取締役 岡 弘二さん

Interview

2013.05.16

オーダーメード家具 優和木装

木造船から船舶用家具、そして店舗用家具へ。優和木装株式会社では、時代の流れとともに、需要の変化に対応してきました。しかし、代表取締役の岡弘二さん(55)が、先代から学んだ職人の心意気は変わることなく受け継がれています。先代社長は、岡さんの父で、船大工でした。「優しくて怖い」。そんな父の言葉はとても力のあるものだったそうです。
携帯電話に「ありがとうございます」のステッカー。笑顔と感謝の気持ちを常に忘れないよう、岡さんが貼ったものだ。「人生は『ありがとう』の繰り返しです」。仕事に向かう姿勢は、父が手本になっている。

父の地元・津田はかつて、サケ・マス漁に向かう船でにぎわっていた。船大工の父は、漁に使う木造船をつくっていたが、時代はやがて木造から鉄鋼に。船の内装「艤装」も手掛けるようになり、工務店「岡組」を経て優和木装株式会社を設立。津田のサケ・マス船「優勝丸」の一字をもらい、社名を「優和」とした。
船舶用家具は、住宅などで使う家具とはつくりが違う。船の入り口が小さいため、工場でつくった家具を一度ばらして船内に持ち込み、再び組み立てる。家具が船内の壁にぴったりと沿うようにつくるため、背板がない。壁が家具の背になる。

岡さんは高校卒業後、造船所へ修行に出た。「動け。動きながら考えろ」。父は口数少ないが、的確なアドバイスをくれた。「道に迷えば道を覚えるという感覚だったんでしょう。初めて一人で、艤装を完成させたときはうれしかったですね」。艤装や家具づくり、営業を経験し、39歳で代表になった。
父はめったに怒らない「優しいけれど怖い」人だった。小学生の時、父と一緒に山歩きに出掛けた。何気なく道端の柿の実に触れたところ、いきなり怒鳴られた。「人様に後ろ指をさされるようなことはするな」。勘違いされるような行動は慎め。心の中で今も生きている父の言葉だ。「怒られていたのではなく、愛情を持って叱られていたんだと感じますね」
優和木装では現在、船舶用に加え、ショッピングモールや学校、病院など店舗用の「陸上の家具」製造も手掛ける。その場所に合う家具づくりはもちろん得意だ。自宅で眠っている家具のリメイクやリフォームなども受け付けている。買い物に出掛けると、自社の家具に出合うことがある。傷んでいない様子を見ると「大事に使ってくれてありがとう」と、感謝の気持ちでいっぱいになる。
栗林公園の木造遊覧船・千秋丸。30分かけて南湖を1周する。  「殿様気分が味わえる」と人気だ=朝日新聞社提供

栗林公園の木造遊覧船・千秋丸。30分かけて南湖を1周する。
 「殿様気分が味わえる」と人気だ=朝日新聞社提供

2010年、うれしい出来事があった。財団法人松平公益会から、栗林公園で池周辺の清掃に使う木造作業船の制作を依頼されたのだ。古くなった和船の代わりに同会が新しいものを県に寄贈するとのことだった。久しぶりの木造船づくり。父が生きていれば、どんなに喜んだか分からない。12年には木造遊覧船の就航が計画され、この制作も請け負った。父が残してくれた技術と職人、人脈があって完成にこぎ着けた。

当面の目標は次代を担う職人の育成。「家具は安くない買い物です。お客様の注文に合ったものがつくれるよう、職人が家具に愛着を持つことが大事でしょう。家具をつくる面白さを知ってほしいですね」

岡 弘二 | おか こうじ

優和木装 株式会社

住所
香川県さぬき市小田669
代表電話番号
087-896-0221
沿革
1964年 岡組 設立

1968年 優和木装株式会社 設立
地図
確認日
2013.05.16

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ