大同ガス産業社長の楠本浩一さん(54)は関連業者と共にチームを組み、1.6ヘクタールほどの土地に7680枚の太陽光パネルを取り付けた。この発電所は1メガワット、一般家庭約300世帯分の発電を見込んでいる。
9月中旬から5週間、残暑の中、社員達による休日返上の突貫工事でできあがった。これだけ出るのか、と思うほど汗を流した。
「ライフラインの一端を担う、メガソーラー発電所の誕生に関われて幸運だ」。建設に参加した社員達が言った。
全国で2社目、香川県で3番目
パネルにカモメの糞も落ちるし塩害もある。メンテナンス費用が今後どのくらいかかるのかも、まだ分からない。
ライバルも認めた「安全と安定供給」
嫌がられると思ったが、四国電力グループの四電エンジニアリングに相談したら、同じエネルギー供給者として信頼できると社内で一番の新エネルギー専門家を紹介してくれた。
「儲けるつもりなら手伝いません。メガソーラー発電所はライフラインです」と言われて、確かにその通りだと改めて思った。
高松港湾地区の港湾条例に、発電所設置の規定が無いため手間取ったが、県の企業立地推進課の後押しもあって経産省の許可が下りた。
国も県も四国電力も、創業以来50年間24時間365日、LPガスを安全に安定的に消費者に届けてきた事業者なら、台風が来て停電しても対応できると信頼してくれた。
社員も参加して突貫工事
「チームに私共も加わりました。配送、営業、検査の男性社員は日曜日もローテーションを組んでくれて、突貫工事でした」。工事現場の斜め前にLPガスの充てん所がある。配送係がガス充てん中の体が空いた時間に手助けに来てくれた。1000枚ずつ届くパネルを荷ほどきするだけで大変だった。出来上がりの形が見えないから、いつになったら終わるのかと思った。苦しかったが辛くはなかった。
工程計画では、7680枚のパネル取り付けに8週間を予定していたが5週間で完了した。奇麗で見事だった。社員達は歓声を上げた。
発電所が社員の意識を変えた
目指しているのは、サザエさんに登場する三河屋の御用聞きのように、「今日は何か注文はないですか」と勝手口から入って聞く、親しまれ信頼される企業になることだ。
6年前、顧客ニーズの変化に応じて商品の幅を広げようと、家庭用ソーラー発電パネルの販売を始めた。「ガスを職業としてきた社員達には驚きで、不快感を隠しませんでした」
その社員が変わった。大同ガスの一員であることが幸せだとさえ言ってくれた。高松港メガソーラー発電所は、港に出入りするフェリーや、高松シンボルタワー、JRホテルクレメントから眺めると濃紺の絨毯を敷き詰めたように見える。やがて高松市のランドマークになると思っている。
自然エネルギー買い取り制度
太陽光発電は1キロワット時当たり42円の固定価格で、発電事業は20年間、家庭用は10年間、政府が保証する(2012年度の場合)。買い取り額は13年度には総額3千億円を超える可能性もある(13年2月26日朝日新聞「教えて!電気料金」)。
先行するドイツでは、自然エネルギーが原発を上回り20%に達したが、電力料金に占める消費者負担の割合が10%を超えるレベルになり、買い取り価格の引き下げなどの対策を行っている(12年10月17日ドイツ視察報告書自然エネルギー財団)。
楠本 浩一 | くすもと こういち
- 1958年 和歌山県生まれ
1981年 東京電機大学理工学部卒業
松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)入社
1992年 大同ガス産業株式会社入社
2004年 代表取締役社長に就任
- 写真
大同ガス産業株式会社
- 所在地
- 高松市伏石町708番地1
TEL:087−869−1313 - 設立
- 1962年4月
- 資本金
- 1000万円
- 代表者
- 楠本浩一
- 従業員
- 70人
- 事業内容
- 家庭用・工業用LPガスの製造・販売、LPガスプラントの設計・施工・検査、太陽光発電システム販売
- 確認日
- 2018.01.04
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