エネルギーの波に乗り 地域に愛される企業へ

Wave Energy 相談役 佐伯 一郎さん

Interview

2023.12.07

Wave Energy四国事業所第1工場=三豊市詫間町

Wave Energy四国事業所第1工場=三豊市詫間町

「太陽光発電システム」で成長

三豊市に製造拠点を持つ配電盤メーカーのWave Energy。工場やビル、病院など大量の電気を必要とする大規模施設が効率良く電気を使えるよう、受配電設備を設計・製作している。

「最大の強みは技術力」と佐伯一郎さん(51)は力を込める。創業は1972年。「元々は大手電機メーカーの下請け、いわゆる『町工場』としてスタートしました」。ハイレベルな製品づくりが要求される大手メーカーとの取引の中で専門的な技術力を蓄積。そして2008年、大きな転機を迎えた。「太陽光発電システム」事業への参入だ。「会長が工場の屋上に太陽光パネルをつけたのがきっかけです。で、『これを使って何をやろうか』と模索し始めました。今思えば、読みが当たっていましたね」

12年、太陽光発電向けに、集電回路や高圧盤、変圧器などを一体化し、コンパクトに設計した新システム「SOLAR SPEC」シリーズを自社開発。この頃始まったのが、太陽光発電など再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定の価格で一定期間買い取ることを国が保障する「FIT制度」だった。
拡張性と省スペース性を兼ね備えた高圧受電設備「SMART SPEC EVQ」

拡張性と省スペース性を兼ね備えた高圧受電設備「SMART SPEC EVQ」

時代を先取りした「SOLAR SPEC」は全国47都道府県に2000台以上が導入される大ヒット商品に。「町工場」が「メーカー」へと変貌を遂げた瞬間だった。「配電盤メーカーとして培った技術とノウハウと先見性が生きました。当初は大手メーカー1社向けのOEM製造が売上のほぼ100%を占めていましたが、今では10%程度。取引先も大きく広がりました」

まさに時代の“波”に乗り、会社は成長。太陽光発電システムの遠隔監視や遠隔制御、電気自動車の急速充電器向け配電盤設備、発電した電気を自社で使う「自家消費」と発電した電気を蓄える「蓄電」を一体化したシステムなど、常に社会を見通しながら、さらなる技術開発も進めている。

技術に「アイデア」を加えて

Wave Energyには技術力に加え、もう一つの強みがある。「アイデア」だ。「私たちはメーカーではありますが、全てを一からつくるわけではありません。基本的には『買い物』をしたものから、新しいものをつくり出しているんです」

高圧盤や変圧器、電気を直流から交流に変換するパワーコンディショナーなどを“買って”きて、それらを組み合わせたり、つくり変えたり、新たに加えたりして、これまでになかった製品を生み出すのがWave Energyのやり方だ。

例えば、太陽光発電所向けの配電システム。高圧盤や配電盤を別々に設置するのが一般的だが、Wave Energyの手にかかると「それぞれ違った箱に入れていたものを一つの箱に入れ直します。コンパクトに一体化することでケーブルも短くて済み、省スペースや省エネにつながります」

佐伯さん曰く、「配電の分野は実は“ローテク”で、技術革新はほとんどない世界。でも、今ある技術にちょっとしたアイデアを加えることで、飛躍的に便利になったり効率が良くなったりするんです」。従業員からは「面白いアイデアが次々に飛び出してくる。どのアイデアを採用するか、絞る作業が大変なんです」と、うれしそうに話す。「現在は電気代の高騰が企業の経済活動や人々の暮らしを直撃しています。私たちが持つ技術力とアイデアで、いかにしてうまく電気を使うか。そういった問題をクリアするのが我が社の最大の使命だと思っています」。佐伯さんは力強く語る。

従業員が暮らすまちとともに

「全てのステークホルダーに感謝し、信頼を得られる企業へ」
全ての従業員に感謝し、信頼を得られる経営者へ

全ての従業員に感謝し、信頼を得られる経営者へ

従業員に示している会社の方針。だが、佐伯さんは文言を少し変えて、常に自分自身に言い聞かせている。

“全ての従業員に感謝し、信頼を得られる経営者へ”

「やはり大事なのは従業員です。それぞれが思い描く夢を叶えられるよう、やりたいことには自由にチャレンジしてほしい。『この会社でずっと働きたい』と思ってもらえる会社にしていくのが私の役目だと思っています」
創立50周年記念祝賀会で=2023年10月

創立50周年記念祝賀会で=2023年10月

Wave Energyは昨年、創業50周年の節目を迎え、今年10月に記念の祝賀会を開いた。

「従業員や家族のみなさん、たくさんの人が出席してくれて本当にうれしかった」。佐伯さんは目を細める。

Wave Energyは広島県で創業した。だがその後、丸亀に営業所を持ったことで香川との縁が生まれ、現在は製造拠点を三豊市に構える。従業員のほとんどが地元の人たちだ。

「SDGsやカーボンニュートラルなど環境経営にも力を入れ、地元のAIベンチャーなどとも連携していきたい。『電気をつくる、つなぐ、まもる。香川から未来を照らすWave Energy』を目指して、従業員が暮らすこのまちに愛される企業にしていきたいですね」

篠原 正樹

佐伯 一郎 | さえき いちろう

略歴
1972年 芦屋市出身
1990年 甲南高校 卒業
1994年 甲南大学経済学部 卒業
     建設会社勤務を経て
2005年 株式会社ヒロセー(現Wave Energy)入社
2014年 代表取締役社長
2023年 相談役

株式会社Wave Energy

住所
香川県三豊市詫間町松崎2790-4
代表電話番号
0875-83-4100
設立
1972年11月
社員数
170人
事業内容
配電盤の設計・製作、太陽光発電システム設計・制作・施工、
再生可能エネルギー事業向け受配電設備、
電気自動車用(EV)急速充電器向け受配電設備 他
拠点
四国事業所第1工場・第2工場・第3工場
東京本社、関西支社
地図
URL
https://wavee.co.jp/
確認日
2023.12.07

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ