スモールはメリットだ!

四国電力 代表取締役社長 常盤 百樹さん

Interview

2008.06.05

電力の自由化で、電力会社同士が競争相手になった。そればかりか、「総合エネルギー企業」を目指す石油やガス、製鉄会社などの新規参入で電力市場の競争はさらに激しくなった。おまけに電力会社自体、化石燃料の高騰や、CO2排出抑制、原子力発電所の耐震安全性など課題もいっぱい抱えている。 四国電力は地元では大企業だが、電力会社10社の中で規模は最小レベルだ。取締役社長 常盤百樹さんは、大手の電力会社に真似できない「スモールメリット」で立ち向かう。いつも笑顔を絶やさない常盤さんは淡々と語る。

電力会社同士の競争は始まっている

自由化前から電力会社同士の競争はあった。
「大手メーカーは製造コストの安い所に工場を設けます。だから他の電力会社に負けない、安い料金にしないと工場に逃げられます」。
自由化で電力各社の送電線が開放されて、全国どこのエリアからでも区域外の顧客に電気を送ることが可能になったからだ。

安定供給と安全性×コストダウン

「東京電力は四国電力の10倍もの電力を売っています。工業地帯や大都市の電力需要も桁違いですが、10倍もの人はいりません」…スケールメリットでは大手に歯が立たないのだ。 
「スモールには、大きいものには無いメリットがある」と常盤さんはいう。社員とお客様、社員同士、社員と設備の距離が近い。それが強みだ。
安定供給と安全性が電力会社の使命。そのうえコストダウンできないと勝ち目はない。 
「自由に提案できる風通しの良い職場風土にして、社員の知恵と工夫を総動員します」。その決め手が”社員を巻き込む“トップの人柄だ。「現場こそが事業力の源泉。現場からのアイデアの一つひとつが財産です」・・・常盤さんの信念はわかりやすい言葉で社内にスピーディーに波及する。
昨年度は、全事業所65カ所をすべて訪問し、直接社員と語り合った。組織の機動力は包容力あふれる”トキワ効果“でさらに徹底する。

※ 電力10 社は4月28日、7~9月の電気料金の引き上げ幅を発表した。各社の値上げは標準家庭で月額60円~159円。四国電力の上げ幅は60円。

伊方方式=原発トラブルの公表基準を明確化

大手電力では原発トラブルで「事故隠し」との批判が相次いだ。
「伊方発電所で不具合を発見した社員が、公表するかしないか悩まなくて済むようにしました。報告基準を明確にしたからです」。1999年、愛媛県や伊方町と結んでいた安全協定を改訂し、新たにトラブルの報告基準を決めた。まず自治体へ正常状態以外の状況をすべて連絡する。その上で基準どおり、トラブル内容に応じて自治体と四国電力が公表する・・・これが伊方方式だ。
どこの電力会社も安全協定は結んでいるが、情報公開の基準を明解にしたのは四国電力だけだ。

ガス供給事業に進出

電力会社が新規参入にただ手をこまねいているわけではない。発電燃料でLNGを大量に使う電力側が、ガス供給事業にも乗り出している。電源の多様化や経年化した既設火力発電所の更新、CO2対策のために、坂出発電所にLNGを導入する四国電力も、LNG販売事業に進出する。
「地球温暖化への関心の高まりもあり、市場は油や石炭からLNGへ転換が進んでいます」。新たな商品を武器に、顧客の利便性向上と収益力強化を図る。

提案型「コンサル業務」

蒸気や熱の効率利用から、省エネや環境対策まで、提案型「コンサル業務」が好調だ。
営業推進本部長時代に顧客から省エネの相談を受けたことがあった。
「部下が『電気が売れなくなる』と心配しましたが、積極的に取り組むよう指示しました。お客様にとって何が最適かを考えるのが、私どもの使命です。エネルギー使用に関する悩みは、私どもが解決します」。初年度34件だったのが、7年後の2007年度には702件と、採用件数は増え続けている。

楽観主義者で感激屋

子どもの頃、父の影響で浪曲や旅回り芝居の「義理人情」に親しんだ。京大で歌舞伎研究会を設立、会長も務めた。「歌舞伎の持つ色や音、古典なのにいつも新しい奥深さに惹かれました」。
29歳のとき病気で左足が不自由になった。「口惜しいのは、そこまで来た通勤バスに、走れないから乗り遅れるんです」。しかし、ものは考えようで、一病息災と割り切っている。
「楽観主義者で感激屋なんです。芝居を見て育った影響かもしれません」。 
高松営業所の課長時代に、塩江温泉郷が雪のため停電した。「雪の中を、断線箇所を直しながらホテルにたどり着いて電燈が点いた時、大広間で蝋燭の火を頼りに復旧を待っていた宿泊客から、歓声と拍手が上がった…若い作業員が眼を輝かせて報告してくれたんです。胸にジンと来ました」。素直で一途なことへの感性、常盤さんの魅力だ。

常盤 百樹 | ときわ ももき

略歴
1942年 1月1日 香川県坂出市生まれ
1964年 3月 京大法学部 卒業
1964年 4月 四国電力入社
1995年 6月 取締役
1998年 6月 常務
2001年 6月 副社長
2005年 6月 社長

四国電力株式会社

住所
香川県高松市丸の内2-5
代表電話番号
087-821-5061
社員数
4489人
事業内容
総合エネルギー分野(電気事業、海外事業、LNG販売事業他)
情報通信分野(情報システム事業、通信サービス事業他)
ビジネス・生活サポート分野(介護事業、商事・不動産事業他)
設立
1951年5月1日
資本金
1455億円
地図
URL
http://www.yonden.co.jp/
確認日
2019.10.09

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