『瀬戸の都』ブランドの確立を

香川県観光協会 専務理事 佐藤 今日子さん

Interview

2023.12.07

友人に誘われて受験した公務員試験に合格し、香川大学卒業後は香川県庁へ。県税事務所からキャリアをスタートし、20代で観光振興課に配属されて以来、県庁で過ごした38年間の半分は観光事業に携わってきた。2020年から3年間、県庁初の女性部長として交流推進部長を務める。22年8月から県観光協会専務理事も兼務し、23年度からは専任としてかかわる。

地域おこしから瀬戸芸へ 観光事業の現場で奔走

初めて観光振興課に配属されたのは、官製イベントが地域活性化につながるとされた地域おこし・町おこしの草創期。「多くの県民が『香川の観光資源は何ちゃない』と口をそろえた時代です。地域に誇りを取り戻そうと、イベント係として地域行事や文化資源の復活に走り回りました」。年間イベントをまとめたガイドブックを制作したり、伝統の復活に向けて地域住民と夜なべで討論したり、香川の文化資源を1990年「国際花と緑の博覧会」会場で紹介したりと、今の観光事業のルーツともいえるさまざまな現場で汗を流した。こうした動きは2010年前後から「まちあるき」ブームにつながり、派手なイベントから、地域の人々の話を通じて文化歴史に親しむ「学びの場」となった。
クルーズでの洋上観光を推進中

クルーズでの洋上観光を推進中

一方で、1998年時点では全国47位に甘んじていた香川の知名度向上のため、サンポート開発に伴い高松の拠点性を高める活性化事業にも従事。まちあるきや離島振興、瀬戸大橋記念公園などの活性化、大型クルーズ客船の誘致、5つの地元スポーツチームの支援などを通じて、地域のアイデンティティ確立を目指した。

2008年からにぎわい創出課、11年から観光振興課で副課長を務めた時期は、瀬戸内国際芸術祭の始動と重なる。観光の立場から芸術祭のPR活動や島の活性化、香川全体ににぎわいを呼ぶさまざまな取り組みを進めた。「うどん県・アート県のプロモーションもスタートし、香川の知名度は全国23位まで上がりました。いろんなことをやってきましたが、一つ一つの成果は見えにくくても、人の役に立つことを考え続けるうちに、いろんな縁が生まれ、次のステージが見えてくるものです。今もまだまだ道半ば、たゆまず努力を重ねるのが大事だと思っています」

高松の拠点性を高めたい

観光協会は観光関連事業者の集まりだが、香川県観光協会の執行体制は専従8人を除く48人が県職員の兼務という珍しい体制。「県と協会が同じ方向を向き、香川をPRして地域も業界も発展させようとしています。限られた観光資源を過大でも過少でもなく正しく認識し、価値や魅力が伝わりやすい発信方法を探すのが大事。時代とともに発信ツールも変わる中で、民間から生まれた新しいものをいちはやくキャッチする力が必要です。官民コラボも含めて、柔軟にチャンスをつかみたい」

今の佐藤さんにとってのキーワードは「新幹線」と「クルーズ」と「アート」。四国へは車移動がメインだが、新幹線の四国乗り入れで「四国のハンデを取り除く」ことを夢見ている。また瀬戸内海のクルーズは、これまで何度もチャレンジしてきた長年の課題。2025年、コロナ後の思い切り楽しめる瀬戸芸を前に、「来るに値するものをつくり、アクセスを整えてPRし、来た人をきちんともてなすのが観光振興の基本です。香川の観光と発展のためには、高松のウォーターフロントは重要拠点。四国の顔、瀬戸内海・アート観光の拠点としてのサンポート高松周辺の魅力を高めて『瀬戸の都』のブランドを確立していきたいですね」と意気込む。

佐藤 今日子 | さとう きょうこ

略歴
1962年生まれ
1985年 香川大学法学部卒
    香川県採用
2014年 商工労働部労働政策課長
2015年 交流推進部観光振興課長
2016年 交流推進部次長 兼 観光振興課長
2017年 文化芸術局次長
2019年 同 局長(瀬戸芸実行委員会事務局長)
2020年 交流推進部長
2022年 香川県観光協会専務理事兼務
2023年 同 専任

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