四国を存在感のある地域にしたい

四国地方整備局 局長 丹羽克彦さん

Interview

2020.12.03

1996年以来、二十数年ぶりに四国に着任した。「20年前と比べて今は四国をつなぐ高速道路“8の字ネットワーク”の整備が進み、人やモノの交流が盛んになった。街が洗練された印象をもちました」。コロナ禍で一極集中を是正しようとする動きがあり、地方に目が向き始めた今こそ、ピンチをチャンスに変えるとき。「自然をはじめとした財産を生かしながら、ほかのどこよりも四国を存在感のある地域にしていきたいと思っています」

そのためにまず必要だと考えているのが、インフラの整備だ。8の字ネットワークの完成や、国際的な視点をもった港湾など、基盤を整備することで地域経済の発展にもつながる。「インフラとは、文明をつくるものだと思います。太古の『世界4大文明』といわれた地域で土木技術が発達していたように、社会が変わるためにインフラは欠かせません」

同時にインフラは、防災時にも重要な役割を果たす。防波堤や、緊急車両の通行・物資輸送にも必要な道路。被害を最小限に抑えるために施設を整備するとともに、老朽化対策も視野に入れている。「今後、修繕が必要な施設が増えてくるが、市町村には技術職系職員が少ないことも課題の一つ。管轄する道路、河川などの整備、維持管理、防災などの業務を手掛ける整備局として、技術面でも支援していきたい」

震災時の対応を経験して

就任会見の様子

就任会見の様子

横浜港の設計にも携わったという曾祖父から代々「技術職」。自身も技術職で現場の経験も豊富だ。一方で、阪神大震災や東日本大震災の際は、本省で対応にあたった。

緊急車両の通行や物資の輸送に欠かせない阪神高速の一部が倒壊。代わりにどのルートを使うか、どう復興させるのか、予算の調整は……。数カ月ほど泊まり込みでの業務が続いたが、「あれほど災害対応に集中したのは貴重な経験でした。自分が現場の責任者だったらどうふるまうべきか、考える機会にもなりました」

防災について感じているのは、インフラだけでは対応できないということ。「職員も含めて災害時はどう行動すべきか常に考え、自治体とも連携して訓練しておかなければならない。何度も繰り返して」

その上で、地域の人にも積極的に情報を発信していきたいと考えている。「技術職の人間は『いいものをつくればわかってくれるだろう』という意識があるかもしれません。これからは、『なぜこの事業をやるのか』『私たちの施策は』などについて、日ごろから伝えるべきだと思います」。そうすることが、災害時にも生きてくるという。

「多・長・根」が大切

「日下川新規放水路工事現場」(高知県)を視察

「日下川新規放水路工事現場」(高知県)を視察

仕事をする上で「多・長・根」を心がけている。さまざまな角度から多面的にものを見る、目の前のことだけではなく長期的な視野をもつ、根本的な問題は何なのかを常に考える。例えば、新しい建設技術について考えるとき、建設業界ではなく医療分野の人と話をすると最新の医療技術が建設分野に生かせることもある。

「職員を含め若い世代には、専門分野以外の幅広い知識を勉強して、同じ会社、業界以外の人とも交流を深めてほしいと思います」

石川恭子

丹羽 克彦 | にわ かつひこ

略歴
1964年 東京都生まれ
1990年 早稲田大学大学院理工学研究科 修了
    建設省入省
1996年 四国地方建設局土佐国道工事事務所調査第二課長
1998年 四国地方建設局企画部企画課長
2005年 近畿地方整備局京都国道事務所長
2009年 国土交通省道路局国道・防災課国道事業調整官
2017年 関東地方整備局道路部長
2019年 国土交通省道路局企画課長
2020年 四国地方整備局長

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