海事から観光まで

四国運輸局長 瀬部 充一さん

Interview

2015.12.03

大学で造船を学んで旧運輸省に入省。主に、海事に携わってきた。「乗り物を造る仕事がしたいと思い、造船学科に進学したんです」。前任地は海上技術安全研究所。省エネ装置・プロペラの開発や、洋上風力発電の安全性の調査など、海上交通の安全と効率化、資源の有効利用、環境保全のための技術を研究するところだ。「管理部門で、どういう研究を行っていくか研究計画を立てていました」

オーストラリアとの縁

これまでで印象的だった勤務地はシドニーだ。オーストラリア製のアルミ船を、日本へ輸出する手助けをしていた。「日本は鉄船が得意。アルミ船の造船に関しては、オーストラリアの方が進んでいます。革新的な考え方は衝撃的でしたね」。オーストラリアでは航空機の設計、部品製造が盛んに行われており、その設計技術が造船にも生かされているそうだ。

シドニー駐在を終えて赴任したのは、北海道運輸局。ちょうどニセコに外国人観光客が増え始めているころだった。ニセコ人気に火をつけたのは、オーストラリア人なのだと言う。「スキーのインストラクターだった人が移住して、オーストラリアと日本の観光のマッチングが出来るようになったんです。向こうの方はレジャーを心から楽しみますから、他の人にもどうやって遊んでもらうかと考えたんですね」。冬のパウダースノーでのスキー、夏は乗馬にラフティング、コンドミニアムでの長期滞在など、オーストラリア人に合うレジャーのスタイルを提案したことで、観光客はどんどん増えた。

瀬部さんは船舶検査官として赴任したが、クルーズ観光やクルーズ船誘致など観光にも携わった。「観光の無限の可能性を感じましたね。ニセコでは日本人よりも外国人観光客の方が多いくらいじゃないでしょうか」

今年7月、組織改正に伴って四国運輸局に観光部が誕生した。四国霊場や日本の原風景とも言えるような里山など、四国には良い素材がそろっていると感じている。「うどん県やリョーマの休日など、宣伝もうまい。香川では直島や琴平が外国人観光客にも人気です。その人気の芽を大きなムーブメントにするお手伝いが出来れば。観光には"よそ者"の視点が効く。そういう意味では、自分はちょうどいいかなと思いますね」

基本を忘れず

常に意識しているのは「公」という字だ。特定の地域や人の利益のためではなく、広く多くの人が幸せを実感するにはどうすればいいかを考える。「運輸局の仕事のうち、観光が占める割合も大きくなりましたが、乗り物の安全を守るという基本も忘れてはいません。バス、鉄道、タクシー・・・地道な作業を間違いなくやり続けることが大切です。少子高齢化に伴い、公共交通の維持も命題ですね」

瀬部 充一 | せべ みちかず

略歴
1957年10月 東京都生まれ
1980年 3月 大阪大学工学部 卒業
1980年 4月 運輸省 入省
1994年 9月 海上技術安全局造船課補佐官
1997年 8月 日本貿易振興会シドニー・センター所員
2000年 7月 北海道運輸局船舶部 先任船舶検査官
2002年 7月 シップ・アンド・オーシャン財団
2004年 7月 海事局舶用工業課舟艇室長
2007年 5月 海事局舶用工業課長
2008年 7月 海事局船舶産業課長
2009年 4月 海上技術安全研究所企画部長
2013年 7月 海上技術安全研究所理事
2015年 4月 四国運輸局長

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