マーケティング思考でつくるSDGsなパッケージ

コスモテック 社長 橋本 道昭 さん

Interview

2024.05.02

善通寺市弘田町のコスモテック本社

善通寺市弘田町のコスモテック本社

“難”素材でも鮮やかに印刷

トイレットペーパーや紙おむつ、生理用品など家庭紙を中心とした包装パッケージを印刷・加工・販売するコスモテック。取引先は親会社のユニ・チャームをはじめ、大手家庭紙メーカーなど全国に100社以上。年間に6000アイテムをつくる西日本有数のパッケージメーカーだ。

トイレットペーパーがいくつも入った大きなパッケージを手にすると、袋の薄さや柔らかさを感じる。コスモテックが得意とするのが、この“薄くて柔らかくて伸びる”素材「軟包材」を使ったパッケージ。ユニ・チャームの海外マーケティング事業などを経て4年前に社長に就いた橋本道昭さん(60)は「全国にはたくさんのパッケージメーカーがありますが、薄い素材に印刷する技術は、おそらく我が社が一番じゃないでしょうか」と自信を見せる。「大手メーカーでも軟包材は敬遠します。でも、私たちは『軟包材100%』。大手と争わない戦略をとっています」
コスモテックがつくる各種パッケージ

コスモテックがつくる各種パッケージ

軟包材は印刷する過程で伸びたり縮んだりするため、デザインを設計通りに印刷するのが難しい。だが、「私たちには、これまで培ってきた職人の技術があります」

印刷で熱を加えると素材がどう伸びるのか、この表面処理の場合はどうなるのか、インクの量はどう調整すればいいのか……。「重要なのは“見当を合わせる”技術」と橋本さんは話す。「この素材なら印刷機の設定をこう変えれば」「この厚さの場合はこうすれば」と見当を合わせることで、「全くブレずに印刷できます。どんなに性能の良い印刷機でもこれはできない。熟練の技術をしっかり受け継いでいるのが、私たちの最大の強みだと思っています」

海外で磨いたマーケティング術

「勢いがすごかった。大手にどんどん迫っていたので面白そうだと思ったんです」

1987年、当時急成長していたユニ・チャームに入社。主にマーケティング畑を歩んだ。特に印象深いのは「海外勤務ですね」

30代になって間もなく、タイにマーケティングの責任者として赴任した。任務は「生理用品を売ること」。異国の地でどうやって商品を売るか。テレビCMをつくろうと思ったが、予算は限られていてミスは許されない。そこで……「商品CMの絵コンテ(イラストなどで構成した広告案)を数パターンつくり、どんなCMなら受け入れられるか、ショッピングセンターのお客さんに片っ端から聞いて回りました」。足繁く通い、主婦ら数百人の意見をもとにCMを決定。無事、ヒットに繋げた。「デリケートな商品について外国人男性が質問する……嫌悪感を持たれないか心配でしたが、こちらの真剣さが伝わったのか、皆さんに真摯に答えてもらえたのがとても印象に残っています」

当時はユニ・チャームが海外に本格的に乗り出していた頃。インドネシア、フィリピン、中国など計6カ国に赴任し、販売網の開拓や工場の立ち上げなど、海外展開の土台を築いたのが橋本さんだ。

「世のため、人のため」に

パッケージは、包んでいる中身が消費されれば一転してゴミになる。「プラスチックの使用量を減らすため、業界ではパッケージをより薄くする薄膜化の流れにあります。軟包材に強い私たちだからこそ、できることは多いと思っています」

社長就任時に決めたことがある。

「今後新しく出す商品は、設備や加工の仕方など何らかの形でSDGsに貢献する。SDGsに関係ないものはつくらない」

昨年、コスモテックが自社開発した真空パック「フレッシュ・プロ」。包装袋の内側などに特殊な抗菌成分を塗装加工することで、通常なら数日程度しか持たない生鮮食品の消費期限を2~3週間に延ばせる優れものだ。「肉を熟成させて旨味を増す効果もあります」
自社開発した「フレッシュ・プロ」が昨年、 「日経優秀製品・サービス賞」最優秀賞を受賞

自社開発した「フレッシュ・プロ」が昨年、
「日経優秀製品・サービス賞」最優秀賞を受賞

実はこの商品のアイデアは、橋本さんがユニ・チャーム時代から温めていたものだった。「15年ぐらい前でしょうか。当時は注目されていませんでしたが、SDGsやフードロス削減が叫ばれるようになり、『今ならできるんじゃないか』と思ったんです」

試行錯誤を重ねて新開発。日本経済新聞社が毎年、あらゆるジャンルの中から優れた製品やサービスを選ぶ「日経優秀製品・サービス賞」の最優秀賞を受賞し、デパートや焼肉店などからの引き合いも相次いでいる。「これからも他社がまだやっていないことを、SDGsを意識して探っていこうと思っています」
マーケティングも企業経営も「根本の心理」は同じ

マーケティングも企業経営も「根本の心理」は同じ

マーケッターから経営者へ。大きく方向転換したのかと思うが、「マーケティングとは経営そのもの」と橋本さんは話す。「生産、開発、経理……会社のことを全部知らないとマーケティングはできません。さらに大事なのが『世のため、人のため』という気持ち。つまりマーケティングも企業経営も、根本の心理は同じなんです」

製造や営業出身ではないので“売上を10倍にする”といった大きなことは言えない。でも、「“どうすれば世の中に喜んでもらえるのか”をずっと考えながらマーケティングをやっていたので、それに向けた舵取りはできるんじゃないかと思っているんです」

篠原 正樹

橋本 道昭 | はしもと みちあき

略歴
1963年 福島県須賀川市出身
1982年 福島県立安積高校 卒業
1987年 武蔵大学経済学部 卒業
     ユニ・チャーム株式会社 入社
     マーケティング部門、海外部門などを経て
2020年 コスモテック株式会社 出向
     代表取締役 就任

コスモテック株式会社

住所
香川県善通寺市弘田町910番地
代表電話番号
0877-62-1200
設立
1966年3月
社員数
163人(2022年1月)
事業内容
包装パッケージの企画・制作、
合成樹脂包装材の印刷・加工・販売などのグラビア・デジタル印刷業務全般 他
営業所
東京営業所、静岡営業所、四国営業所
地図
URL
https://www.uc-cosmotec.co.jp/
確認日
2024.05.02

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