
善通寺市弘田町のコスモテック本社
“難”素材でも鮮やかに印刷
トイレットペーパーがいくつも入った大きなパッケージを手にすると、袋の薄さや柔らかさを感じる。コスモテックが得意とするのが、この“薄くて柔らかくて伸びる”素材「軟包材」を使ったパッケージ。ユニ・チャームの海外マーケティング事業などを経て4年前に社長に就いた橋本道昭さん(60)は「全国にはたくさんのパッケージメーカーがありますが、薄い素材に印刷する技術は、おそらく我が社が一番じゃないでしょうか」と自信を見せる。「大手メーカーでも軟包材は敬遠します。でも、私たちは『軟包材100%』。大手と争わない戦略をとっています」

コスモテックがつくる各種パッケージ
印刷で熱を加えると素材がどう伸びるのか、この表面処理の場合はどうなるのか、インクの量はどう調整すればいいのか……。「重要なのは“見当を合わせる”技術」と橋本さんは話す。「この素材なら印刷機の設定をこう変えれば」「この厚さの場合はこうすれば」と見当を合わせることで、「全くブレずに印刷できます。どんなに性能の良い印刷機でもこれはできない。熟練の技術をしっかり受け継いでいるのが、私たちの最大の強みだと思っています」
海外で磨いたマーケティング術
1987年、当時急成長していたユニ・チャームに入社。主にマーケティング畑を歩んだ。特に印象深いのは「海外勤務ですね」
30代になって間もなく、タイにマーケティングの責任者として赴任した。任務は「生理用品を売ること」。異国の地でどうやって商品を売るか。テレビCMをつくろうと思ったが、予算は限られていてミスは許されない。そこで……「商品CMの絵コンテ(イラストなどで構成した広告案)を数パターンつくり、どんなCMなら受け入れられるか、ショッピングセンターのお客さんに片っ端から聞いて回りました」。足繁く通い、主婦ら数百人の意見をもとにCMを決定。無事、ヒットに繋げた。「デリケートな商品について外国人男性が質問する……嫌悪感を持たれないか心配でしたが、こちらの真剣さが伝わったのか、皆さんに真摯に答えてもらえたのがとても印象に残っています」
当時はユニ・チャームが海外に本格的に乗り出していた頃。インドネシア、フィリピン、中国など計6カ国に赴任し、販売網の開拓や工場の立ち上げなど、海外展開の土台を築いたのが橋本さんだ。
「世のため、人のため」に
社長就任時に決めたことがある。
「今後新しく出す商品は、設備や加工の仕方など何らかの形でSDGsに貢献する。SDGsに関係ないものはつくらない」
昨年、コスモテックが自社開発した真空パック「フレッシュ・プロ」。包装袋の内側などに特殊な抗菌成分を塗装加工することで、通常なら数日程度しか持たない生鮮食品の消費期限を2~3週間に延ばせる優れものだ。「肉を熟成させて旨味を増す効果もあります」

自社開発した「フレッシュ・プロ」が昨年、
「日経優秀製品・サービス賞」最優秀賞を受賞
試行錯誤を重ねて新開発。日本経済新聞社が毎年、あらゆるジャンルの中から優れた製品やサービスを選ぶ「日経優秀製品・サービス賞」の最優秀賞を受賞し、デパートや焼肉店などからの引き合いも相次いでいる。「これからも他社がまだやっていないことを、SDGsを意識して探っていこうと思っています」

マーケティングも企業経営も「根本の心理」は同じ
製造や営業出身ではないので“売上を10倍にする”といった大きなことは言えない。でも、「“どうすれば世の中に喜んでもらえるのか”をずっと考えながらマーケティングをやっていたので、それに向けた舵取りはできるんじゃないかと思っているんです」
篠原 正樹
橋本 道昭 | はしもと みちあき
- 略歴
- 1963年 福島県須賀川市出身
1982年 福島県立安積高校 卒業
1987年 武蔵大学経済学部 卒業
ユニ・チャーム株式会社 入社
マーケティング部門、海外部門などを経て
2020年 コスモテック株式会社 出向
代表取締役 就任
コスモテック株式会社
- 住所
- 香川県善通寺市弘田町910番地
- 代表電話番号
- 0877-62-1200
- 設立
- 1966年3月
- 社員数
- 163人(2022年1月)
- 事業内容
- 包装パッケージの企画・制作、
合成樹脂包装材の印刷・加工・販売などのグラビア・デジタル印刷業務全般 他 - 営業所
- 東京営業所、静岡営業所、四国営業所
- 地図
- URL
- https://www.uc-cosmotec.co.jp/
- 確認日
- 2024.05.02
おすすめ記事
-
2015.05.21
菓子木型の 可能性に賭ける
菓子木型職人 市原 吉博さん
-
2012.09.20
「あっと驚く」ケーキの化学讃岐の不思議なマドレーヌ
アン・クール オーナーパティシエ 奥村 一心さん
-
2013.05.16
船大工の父から受け継いだ「海」と「陸」の家具づくり
優和木装株式会社 代表取締役 岡 弘二さん
-
2019.11.21
職人の技術で庵治石に絵を描く
サンドブラスト加工を応用/二宮石材
-
2019.11.21
暮らしになじむ桶を作る
谷川木工芸 3代目 谷川 清さん
-
2017.12.21
❝ハイブリッド刺繍(ししゅう)❞で、新たな表現を
せと刺繍 オーキッド
-
2015.07.16
包装紙
桜製作所 社長 永見 宏介
-
2018.07.19
精度の高い加工技術で、新分野に挑戦
水銀ターゲット容器 香西鉄工所
-
2016.07.21
笑顔咲かせる 手づくり麹
丸岡味噌麹製造所 丸岡 英明さん 敦子さん
-
2016.10.20
「らしさ」が光る 菓子作り
菓匠芝山 専務 鈴木 晴雄さん
-
2025.08.21
「ここに来て良かった」 生徒一人一人に寄り添って
学校法人村上学園 理事長
村上学園高等学校 校長
村上 太さん
最新紙面情報
Vol.412 2025年08月21日号
「ここに来て良かった」 生徒一人一人に寄り添って
学校法人村上学園 理事長 村上学園高等学校 校長 村上 太さん
モニタリングの知見を生かし 地域と「顔の見える対話」を
日本銀行 高松支店長 稲村 保成さん
諸機関と柔軟に連携し 四国の中小企業に寄り添う
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 四国本部長 田中 学さん
まち全体を一つの「宿」に見立て 古民家を核に日常風景の魅力を発信
NIO YOSUGA 代表取締役 竹内 哲也さん/菅組 社長 菅 徹夫さん
生徒の「やってみたい」が地域とつながる 進化するボランティア団体「TSUNAGU」
大手前丸亀中学・高等学校