細長い板を円筒形に並べて金属の輪で締め、底板を入れて桶や樽を作る。材料はスギやヒノキ。水や食べ物の持ち運びに使う桶は水分を吸収しやすい柾目板(木目が平行のもの)、酒やしょう油の貯蔵に使う樽は水分を吸収しにくい板目板(木目が波形や山形のもの)を使う。
谷川木工芸が作るのは湯桶、寿司桶、飯櫃(めしびつ)など。「浴槽を作ってほしい」、「大きな桶をひっくり返して、バーカウンターに使いたい」という注文もある。大きさは違っても、作り方は同じ。すき間ができないよう、木材一つ一つの角度を調整しながらつなげ、磨いて仕上げる。近くで見ても板の継ぎ目は分かりにくい。木をくり抜いて作る器よりも、欠けにくく強度が高いという。
讃岐桶樽の技術を守っていきたい、経営に苦労してきた両親に少しでも楽をさせたいと思い、家業を継ぐと言ったところ、家族は猛反対。雅則さんはうれしい反面「子どもにはしんどい思いをさせたくない。家業を継いでほしいと思ったことは一度もなかった」と話す。讃岐桶樽の製造者は現在県内に2軒。雅則さんが20代の頃には10数軒あり、谷川木工芸にも10人近い働き手がいた。今は家族3人で切り盛りする。
清さんは「どんな仕事でも、人口が減れば先細りになる。それなら、今どん底のものを引き上げていくほうが面白い」と説得して、谷川木工芸に入った。夢の中でも桶を作っていたくらい、仕事を覚えるのに必死だった。ホームページをリニューアルし、SNSでの情報発信にも力を入れた。
「木で作った桶や樽は和のものだけれど洋にも合う。今の暮らしになじむものや、1つで何役もの役割を果たすものを作ってみたい。スマートフォンのスタンドがスピーカーになったり、持ち運べるケースにもなったり。パンを入れたらおいしくなるお櫃があってもいい」
雅則さんも「“桶はこうあるべき”というのはない。新しいものをどんどん作ってほしい」と応援している。
鎌田 佳子
谷川 清|たにかわ きよし
- 略歴
- 1984年 三木町生まれ
2003年 寒川高校 卒業
2005年 穴吹ビューティーカレッジ 卒業
介護職を経て
2017年 谷川木工芸 3代目
谷川木工芸
- 住所
- 香川県木田郡三木町下高岡1089-2
- 代表電話番号
- 087-898-0564
- 事業内容
- 讃岐桶樽の製造と販売
- 地図
- URL
- https://www.kinoibuki.com/
- 確認日
- 2019.11.12
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