刻々と変化する電力需要と、供給バランスを緻密に制御

四国計測工業

Tec✕Tec

2022.09.15

電力の需給は常に「同時同量」

電力は、消費する量以上に発電しても貯めておくことができず、消費量(需要)と発電量(供給)とが一致していないと、「周波数」(東日本50Hz・西日本60Hz)が乱れ、場合によっては大規模停電に至る可能性がある。そのため需要と供給は常に同じ時に同じ量である必要がある。つまり需要と供給は「同時同量」でなければならない。

しかし、電力需要は天候や気温などの様々な要因で時々刻々と変化する。常に需要と供給を一致させるのは至難の業だが、その需給を監視・コントロールし、電力の安定供給を支える中枢といえる施設「中央給電指令所」のシステム開発・更新や、「再生可能エネルギー(以下、再エネ)出力制御システム」を開発したのが四国計測工業だ。

これからのエネルギー施策にも対応

2011年の東日本大震災、その後の電力ひっ迫などをきっかけに、国の電力システム改革が進められた。この改革の進展による、小売りの全面自由化、電力会社の発送分離、電力市場の整備等により、各エリア・事業者間で電力を自由に売り買いできるようになった。そのため、全国で需給バランスをとる必要性を考慮し、日本全体の電力を管理・運用する「電力広域的運営推進機関」(以下、広域機関)が創設された。

広域機関は全国の需給状況を監視し、必要に応じて各エリアに電力の融通や発電量の増加等を指示する。エリア毎に設けられている中央給電指令所は、天候や気温などの様々な要因で変化する電力需要を予測するとともに、広域機関から連係される情報や指示を踏まえ、需要と供給が「同時同量」となるよう発電所に出力目標値を指令する。この広域機関と中央給電指令所は密接な情報連係が必要であり、広域機関が定めた運用ルールに則り、中央給電指令所のシステムを開発・更新する必要があった。そこで四国計測工業では、運用ルールに基づく詳細な機能仕様や更新手順を顧客と綿密に協議を重ねて取りまとめ、システムの設計・製造・検査を着実に進めた結果、四国エリアの中央給電指令所のシステム更新を、監視・制御などの運用業務に影響を与えることなく、運用開始日までに見事完遂した。

さらに、中央給電指令所の管理下にある「再エネ出力制御システム」を開発し、それに伴い情報連係が必要となる中央給電指令所のシステム更新も手掛けた。2012年7月のFIT(再エネの固定価格買取)制度の施行以降、太陽光などを中心に再エネの導入が急速に進展しており、春・秋などの需要が軽く発電量が需要を上回る特定の期間において、一部の再エネの出力を抑制することにより、再エネの電力系統への接続量が増加でき、年間ではより多くの再エネの発電が可能となる。本システムは、中央給電指令所のシステムから連係される再エネの必要抑制量に応じて、四国エリア内1万数千カ所(取材時点)の発電事業者に対し、前日および当日に自動電話・メール、インターネットで発電出力の抑制指示を配信するようプログラムされている。

天候によって発電量が左右される太陽光発電や風力発電は、導入拡大に伴い電源比率が高くなっていることから、今後もより緻密で精度の高い需給調整が求められる。四国計測工業が開発したシステムは、再エネを無駄なく活用しながら、四国エリア全体の電力の安定供給を支えている。

◆キーワード


周波数

家庭などで使う電気は、電流、電圧が周期的に変化する「交流」で、その変化を1秒間に繰り返す回数を周波数という。消費する電力が増えると発電機の回転速度が遅くなり、周波数が下がる。逆の場合は回転数が増え周波数が上がる。電気の品質(周波数)を維持するためには、需要と供給の量を合わせる必要があり、発電量を調整しながら需給バランスをとっている。


再エネ出力制御

気象情報や過去の蓄積データに基づいて予想したエリア需要や再エネ出力の予測値をもとに需給バランスを確認し、下げ調整力が不足または不足するおそれがあると判断した場合、広域機関のルールで定められた順番(優先給電ルール)に則り、①火力電源等の出力抑制、②揚水発電機の揚水運転、③連系線の活用(他エリアへの送電)といった対策を行う。これらの対策を行ってもなお、下げ調整力不足が解消されないと見込まれる場合には、再エネである④バイオマス発電、⑤太陽光・風力の順に出力を抑制する。

◆スタッフ・メッセージ

四国内の送変電・水力設備の監視・制御を行う「系統制御所」のシステム保守・開発業務を担当する村上さんと、中央給電指令所のシステム検査などに携わる笠井さん。発電所から家庭に届くまでの仕組みと、どれほど多くの人が関わっているかを知り、日々新たな知識を習得しています。自分たちが携わったシステムが電力の安定を支えていることに、やりがいと面白さを感じています。

村上大さん 観音寺第一高校 出身・写真左
笠井広務さん 多度津高校 出身・写真右

四国計測工業 株式会社

住所
香川県仲多度郡多度津町南鴨200番地1
代表電話番号
0877-33-2221(FAX. 0877-33-2210)
高松オフィス
高松市サンポート2番1号 高松シンボルタワー28階
TEL. 087-811-2501/FAX. 087-811-2502
創業
1951年12月
資本金
4億8000万円(四国電力株式会社の100%子会社)
従業員数
768名(2023年3月現在)
事業内容
自動計測制御装置・情報伝送システムの設計・製作・施工、
電力量計・変成器の製造、計装設備の設計・工事・保守、
産業用自動化・省力化装置の設計・製作、環境分析 他
地図
URL
https://www.yonkei.co.jp/
確認日
2023.09.21

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