イオンの力で酸化を防ぐ
塗装だけでなく、板金や印刷、資材調達などをグループで行う一貫生産が特徴の一つだが、四国塗装工業最大の強みは、下地を塗装する際に行う「電着塗装」にある。
電着塗装とは、塗料を入れた大型タンクに電気を流し、イオンの力で塗料を密着させる特殊な手法。塗装の最大の敵は“酸素”で、素材と塗料の間に酸素が入ると、酸化し、錆び、塗料が剥がれ落ちる要因となる。しかし、下地に電着塗装を施すと、「イオン分解した分子がまんべんなく広がり、ほぼ100%酸素がない状態で素材と塗料が密着する。さらに、その上から塗る別の塗料の“ノリ”も良くなります」
この“電着塗装ライン”。大掛かりな機械なので「地方や中小の塗装会社ではなかなかペイできず、持つところはほとんどない」が、2000年に「思い切って、自社設備として導入しました」
導入後は、ラインを持たない大手電機メーカーや同業者などからの引き合いが相次いでいる。
父を説得し「電気に特化」
近澤さんは「電気の持つ力」を信じて疑わない。「電気がなければ何もできない。昔は“一家に一つ”だったが、今は皆がスマホを持ち、“一人が一つ”モバイルバッテリーを持つ時代。毎日何回も充電する。電気に勝つもの、他に何かありますか?」
“電気に絞る”を巡っては、先代の父としばしば口論になった。「父は『一つに特化するのは好ましくない。リスクの分散が必要』というのが持論でした」
電気に絞り、33歳で社長を継いで間もなく20年。売上、利益率ともに順調に伸び、「成果が出て、父もようやく納得してくれました。あの時の見極めは間違っていませんでした」。覚悟を決め、会社の舵を切った当時を、近澤さんはしみじみと振り返る。
オーケストラの指揮者は社長と同じ
現在は、丸亀市の市民楽団「丸亀シティフィルハーモニックオーケストラ」をはじめとする、四国のアマチュア楽団の指揮や指導を行う。丸亀では、定期演奏会や子どもたちに音楽に親しんでもらう「0歳からのコンサート」など年間4つの大型公演を目標に活動を続けている。「楽団にも“経営”があります。行政や企業などと折衝して公演を開いたり、楽団員をまとめたりするのは、社長業と全く同じです」。社長業と同じなので……「楽しいこともありますが、一生懸命になり過ぎて、息抜きにならないこともあるんです」
自身が生まれた1973年に父が創業して50年余。一番の目標は「100年企業」に育てることだ。「会社を継続させるには、時代に対応し、時代に求められなければならない。100年続く会社のシステムをつくっていくのが、私の使命だと思っています」
篠原 正樹
近澤 裕明 | ちかざわ ひろあき
- 略歴
- 1973年 大阪府寝屋川市出身
1992年 善通寺第一高校 卒業
1996年 作陽音楽大学(現くらしき作陽大学)音楽学部 卒業
株式会社愛媛銀行 入社
1999年 四国塗装工業株式会社 入社
2006年 代表取締役
四国塗装工業株式会社
- 住所
- 香川県丸亀市川西町北1698番地1
- 代表電話番号
- 0877-24-0294
- 設立
- 1973年12月13日
- 社員数
- 115人(グループ)
- 事業内容
- 電着塗装、焼付塗装、金属塗装、スクリーン印刷
- グループ
- 竜王金属株式会社(薄板板金加工、各種溶接加工)
株式会社春日(電着塗装、海外調達)
協同組合エフォートかがわ(材料・資材の共同購入)
- 地図
- URL
- https://www.shikokutosou.co.jp/
- 確認日
- 2024.07.04
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