「4欲」見逃さず たくさんの笑顔を紡ぐ

フクシン 社長 福﨑 二郎さん

Interview

2023.10.05

ファッション手袋など自社ブランド商品が並ぶサンプルルーム。福﨑さんが着けているのは人気ブランド「ecuvo, (エクボ)」。 指先にスリットが入っているため、スマホの操作も可能=東かがわ市白鳥のフクシン本社

ファッション手袋など自社ブランド商品が並ぶサンプルルーム。福﨑さんが着けているのは人気ブランド「ecuvo, (エクボ)」。
指先にスリットが入っているため、スマホの操作も可能=東かがわ市白鳥のフクシン本社

看板商品は“サステナブル”

欲しいもの、欲しい価格、欲しい時、欲しい方法。これら顧客が求める4つの欲、『4欲』を敏感に感じ取ることが重要だと、フクシン社長の福﨑二郎さん(55)は話す。「最近は『4欲』の変化のスピードが極めて速い。お客さんの変化に合わせて私たちも、提供する商品や会社の形を柔軟に変えていかなければなりません」

東かがわ市でファッション手袋の企画・製造・販売などを手掛けるフクシンは常に変化している。ここ数年での大きな変化は「SDGsへの取り組み」だ。「気候に左右される商品を扱う会社だからこそ、地球環境や社会に優しい会社であるべきです」

工場で使う電力の100%を太陽光発電など再生可能エネルギーで賄い、材料の切れ端や糸くずなど製造過程で出るゴミを極限まで削減する「ゼロゴミ編み立て法」に取り組む。さらに3年前には、SDGsを象徴するヒット商品も生まれた。
サステナブルブランド「ecuvo,」秋冬商品

サステナブルブランド「ecuvo,」秋冬商品

「みんなを笑顔にしたい」という思いで開発したオリジナルブランド「ecuvo,(エクボ)」。手袋に加え、ニット帽やマフラー、Tシャツにブラウスなど様々なアイテムを揃える。原材料はリサイクル素材や天然素材にこだわり、コーヒー豆やブルーベリーなど廃棄予定の食品から抽出した染料で染色。商品が傷むと無料で修理し、“片手”“片足”でも販売する。会社としては新しく買ってもらった方が良いのではとも思われるが、「愛着を持って使ってほしいし、商品との付き合い方も提案していきたい。それに、修理してでも使ってくれると、つくっている職人さんのモチベーションもアップします」

「ecuvo,」は、優しい肌触りで、飽きのこないシンプルなデザイン。そして何より“サステナブル”な商品コンセプトが評判となり、一昨年には「グッドデザイン賞」を受賞、北米など海外でも人気を集めている。

大ヒット!「モコモコ5本指」

フクシンには、さらに大きな変化がある。創業当初から一部で手袋をつくってはいたが、元々は“卸売”がメイン。だが、10年ほど前から本格的に“製造”へと舵を切った。

きっかけは些細なことだった。老人ホームに入っている102歳の祖母を見舞った際、「足先をマッサージしていたら、とても冷たいんです。手袋を足の5本指にはめてあげると、『暖かい』と喜んでくれて」。当時、手袋に使われる“もこもこ”の太い糸の5本指靴下はほとんど無かった。「もしかしたら…」と思った。ただ、「靴下は“3足1000円”などの廉価商品が普通。手袋素材でつくるとなると、1足2000円くらいになるので…」
手袋製造の様子

手袋製造の様子

しかし、福﨑さんは変化を怖れなかった。“もこもこ”で“ふわふわ”な肌触りで、手袋のように暖かい「5本指ソックス」は爆発的にヒットした。「シリーズ累計で82万足もお買い上げ頂いています」

ヒット商品の誕生は、思わぬ反響も生んだ。「靴下がつくれるのなら、マフラーもつくれるのか?」「こんな商品をつくってもらえないか?」…。「メーカーとして業界に認められ、『製造』が軌道に乗る大きな転機になりましたね」

手袋産業が忙しくなるのは秋から冬にかけて。年間を通して商品を提供していくのが大きな課題だ。「UVをカットする手袋やアームカバー、接触冷感性や抗菌効果があるマスクなども開発。今では夏場の売り上げを支える大事な商品になっています」。全国に広がるフクシンの取引先は現在500社4000店舗。扱う商品の約8割を自社製品が占めている。

“笑顔循環企業”目指して

趣味は「プロギング」。ジョギングをしながらゴミ拾いをする、新しいスタイルのフィットネスだ。「何気なく街を歩いていても『汚れているなぁ』とは感じません。でも『ゴミを拾おう』と思っていると、吸い殻や小さなゴミが見えてきます。『見よう』としないと見えないものなんです」

“鳥の目”で広い視野を持ち、“魚の目”で時代の流れを読み、“コウモリの目”であらゆる角度から社会を見つめていきたいと話す。「既成概念にとらわれず、いつまでも素直な目を持ち続けたいと思っています」
「既成概念にとらわれず、素直な目を持ち続けたい」

「既成概念にとらわれず、素直な目を持ち続けたい」

10月に入り、少しずつ季節が進んできた。今年は暖冬が予想されている。「暖冬、新型コロナ、円安に材料費の高騰…最近はあまりにも不確定な要素が多い。でも、一つ一つに一喜一憂していても身が持たない。今は、そういった目まぐるしい変化を楽しもうと心掛けています」

創業者の父からバトンを受け10年余り。父が掲げた社是「明るく楽しく元気よく」に、「笑顔」を加えた。「笑顔で仕事をすれば、商品を受け取るお客さんも笑顔になり、その笑顔がまた私たちに返ってくる。お客さんの『4欲』を見逃さず、たくさんの笑顔を紡いでいく。そんな“笑顔循環企業”を目指していきます」

篠原 正樹

福﨑 二郎 | ふくざき じろう

略歴
1968年 東かがわ市出身
1987年 津田高校 卒業
1992年 武蔵大学経済学部経営学科 卒業
     生命保険会社勤務を経て
1995年 株式会社フクシン 入社
2011年 代表取締役 CEO

株式会社フクシン

住所
香川県東かがわ市白鳥78番地1
代表電話番号
0879-25-2285
設立
1978年4月設立(福新手袋株式会社)
社員数
76人
事業内容
ファッション手袋等の企画・製造・販売・輸出入
関連会社
CEBU FUKUSHIN CO,LTD(フィリピン)
地図
URL
https://www.fukushin.co.jp/
確認日
2023.10.05

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