高品質ツーリングで “全てのものづくり”を支える

大東精工  社長 原田 一正さん
     取締役 原田 康弘さん

Interview

2022.11.03

原田一正社長(右)と原田康弘取締役営業技術部部長=東かがわ市白鳥の大東精工四国第2工場

原田一正社長(右)と原田康弘取締役営業技術部部長=東かがわ市白鳥の大東精工四国第2工場

高精度で機能を引き出す

東かがわ市の大東精工は、四国で唯一、全国でも十数社ほどしかないツーリングメーカーだ。

「ツーリング」とは、工作機械に必要不可欠な機械工具。金属を切ったり削ったりする切削工具やドリルなどの工具を工作機械に取り付けるための「アダプター」の役割を担う。「スマートフォンやデジタルカメラ、自動車や家電製品など、世の中のあらゆるものは工作機械によってつくられます。その工作機械に欠かせないツーリングは、まさに『ものづくりのインフラ』。極めてニッチな分野ですが、私たちは縁の下で『全ての産業を支えている』。それぐらいの気概でやっています」。親子で会社を引っ張る、社長の原田一正さん(73)と、長男で取締役営業技術部部長の康弘さん(39)は口をそろえる。
自社ブランドのツーリング(精密保持工具)

自社ブランドのツーリング(精密保持工具)

大東精工がつくるツーリングは、OEM製品や独自ブランド品など数100種類以上。それらが大手工作機械メーカーから町の小さな鉄工所まで、全国いたるところの“ものづくりの現場”に届く。

ツーリングは「精密保持工具」とも呼ばれ、精度が高ければ高いほど、工作機械や切削工具の機能がより引き出される。「大手メーカーが手を出さない規格でも、小ロット多品種で対応するのが私たちの強み。1ミクロン単位でつくる品質には自信を持っています」と康弘さんは胸を張る。

週2回の大切な時間

2人から話を聞いていると、親子とは言え、性格がかなり違うのが見えてくる。

一正さんはチャレンジ精神旺盛。東かがわ市の地元中学を卒業後、大阪へ。研磨業を営む親せきのもとで4年ほど修業を積み、19歳の時に大阪で独立した。「営業は苦手だったので、ほとんどやらなかった」が、研磨業以外にもツーリングメーカーの下請けなどで仕事の幅を広げ、腕一本でコツコツと取引先を増やしていった。苦境は何度もあったが、「なにくそ、という思いでやってきた。『やればできる』という自信もありましたね」

1994年、45歳の時に製造拠点を故郷の東かがわ市に移した。うどん店の経営や和三盆づくりに挑んだこともあったが、「家族全員に反対され、長くは続きませんでした……」と頭をかく。

康弘さんが2004年に合流し、以来、二人三脚で会社を切り盛りしてきた。「父の行動力は半端なくすごいと思う。でも、チャレンジと失敗を繰り返す姿をずっと見てきたので、その反動からか、私は慎重で保守的な性格になりましたね」と康弘さんは笑う。

2人は必ず週に2回、一緒にランチに行ったりカフェに行ったり、「コミュニケーションをとることを心がけています」。康弘さん曰く、その目的は「世代間ギャップを埋めるためです」

一正さんは、“メーカーの聖地”と呼ばれる大阪で高度成長期の荒波をくぐり抜けてきた。近く2代目を任せる康弘さんに仕事を引き継いでいく中で、「やり方が少し甘いなあ」と感じることもある。しかし、一方で康弘さんも「今は今なりの大変さがある」と反論する。「父の大変だった時代のこともよく分かる。でも、世の中の価値観は大きく変化してきた。会社が目指す方向性を共有し、これからも2人でしっかり意見をぶつけ合っていこうと思っています」

良い機械、良い人と巡りあって

「従業員は宝」。2人に共通する、決して揺らぐことのない信念だ。大東精工では、東かがわ市内に家を建てた従業員に50万円を補助している。「地元を愛し、地元に根付いてほしいんです」

この試みの根っこには「地域をもっと元気にしたい」という康弘さんの思いがある。「地域を元気にするのは企業の経営者だと思うんです。経営者が元気だと会社が元気になる。地元企業が元気になれば、地域が元気になります」

従業員を大切にして、生き生きと働いてもらい、「大東精工は元気だ」と地域に見せつける。「東かがわ市が誇る手袋産業などとも互いに刺激し合いながら、一緒に盛り上げていきたいですね」
今年8月に稼働を始めた四国第2工場・ヘッドオフィス

今年8月に稼働を始めた四国第2工場・ヘッドオフィス

自社ブランド製品の開発や生産性アップを目指してつくった新工場が、今年8月に稼働を始めた。真新しい工場の一角では、一正さんが50年以上前、創業間もない20歳の頃に買った研磨機が未だ元気に動いている。それを見る度に康弘さんは「父は本当に良い機械や良い人と巡りあってきたんだなあと思うんです」

一正さんは「そんなに大きな会社にならなくてもいい。一つずつ丁寧に良いものをつくり、世の中に出していってほしい」と次期社長にエールを送る。「いつでも会社を継ぐ覚悟はできている」と口元を引き締めながらも「でも、父がまだまだ元気なので、バトンタッチはしばらく先になりそうです」と康弘さんはうれしそうに笑った。

篠原 正樹

原田 一正 | はらだ かずまさ

略歴
1949年 東かがわ市生まれ
1964年 大川中学校 卒業
     大阪府東大阪市の研磨加工会社勤務を経て独立
1970年 現大東精工 創業
1990年 代表取締役

原田 康弘 | はらだ やすひろ

略歴
1982年 大阪府東大阪市生まれ
2000年 津田高校 卒業
2004年 四国職業能力開発大学校 卒業
     大東精工に入社したのち、
     大手工作機械メーカー勤務などを経て
2008年 大東精工 取締役営業技術部部長

株式会社大東精工

住所
香川県東かがわ市白鳥1827-2
代表電話番号
0879-24-1501
設立
1990年設立(1970年創業)
社員数
20人
事業内容
マシニングセンター用ツーリング製作、
マシニングセンター用プルスタッドボルト各種製作、
NC・汎用フライス盤用ツーリング製作、
精密機械部品製作、再生可能エネルギー発電事業 他
拠点
四国第1工場:東かがわ市帰来193番地1
四国第2工場:東かがわ市白鳥1827番地2(ヘッドオフィス)
大阪本社:大阪府東大阪市新鴻池町12番地7
地図
URL
http://www.daito-tool.com
確認日
2022.11.03

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ