もっと面白い未来へ プラスチック製品メーカーの挑戦

川崎化工 社長 川崎 功雄さん

Interview

2024.12.05

川崎化工本社のプラスチック成形工場。「うどんヘルメット」を手に=観音寺市豊浜町

川崎化工本社のプラスチック成形工場。「うどんヘルメット」を手に=観音寺市豊浜町

“うどんヘルメット”誕生の理由

赤、青、緑……「U」の文字がプリントされた色とりどりのヘルメット。ひっくり返すと、うどんのどんぶりになり、つばの部分にはネギやショウガなどの薬味が入る。

川崎化工がつくった「うどんヘルメット」。今年7月から高速道路のSAや道の駅で売り出すと、瞬く間に話題になった。「『うどんヘルメットで儲けよう』というつもりは特にないんです。『香川ならではのユニークなものをつくりたい』。その思いから始まって、東京のデザイナーさんとタッグを組んで商品化したまでです」と、社長の川崎功雄さん(50)は控えめに話す。
ロール式ウェットティッシュボトル容器など 川崎化工がつくるプラスチック製品

ロール式ウェットティッシュボトル容器など
川崎化工がつくるプラスチック製品

川崎化工は、観音寺市に本社を構えるプラスチック製品メーカー。売上の8割を占めるのは、家庭などでおなじみのロール式ウェットティッシュが入ったプラスチックボトルだ。

年間200万本以上をウェットティッシュメーカーに出荷し、国産のボトル容器製造ではトップクラスのシェアを誇る。

「先代の父の頃から40年近く、ボトル容器をメインにやってきました」。製造量は安定して推移している。しかし、「決して安穏としていられる状況ではないんです」
“うどんヘルメット”を開発した大きな理由がそこにある。

「海洋プラスチックごみ問題やSDGs……。時代の“脱プラ”の流れの中、石油由来のプラスチックへの風当たりはどんどん強くなっています。どこでシフトチェンジが起こるか分かりません」

今、トウモロコシやサトウキビ、木材のチップなどを原料とする“バイオマスプラスチック”が注目されている。しかし、石油由来のプラスチックは、強度や軽さ、加工のしやすさなどに優れ、何より「バイオマスプラスチックは、石油由来のプラスチックに比べて、コストが2倍以上に膨れ上がるんです」
バイオマスプラスチック製の「うどんヘルメット」

バイオマスプラスチック製の「うどんヘルメット」

ボトル容器の材料をバイオマスプラスチックに転換するのは需要も読めず、今の時点では現実的ではない。そこで川崎さんが考えたのは、バイオマスプラスチックを使った“新たな商品”だ。

「うどんヘルメットは50%以上『お米』のバイオマス原料を使用しています。家畜の餌にもならない古米や事故米を使っています」。川崎化工では以前から、様々な自然由来のバイオマスや生分解性プラスチックなど環境にやさしい原料を使用し、いろいろなサイズ・形状の製品の試作に挑戦してきた。「うどんヘルメットは、私たちがこれまで培ってきたプラスチック加工と、多種多様な材料で試行錯誤してきた成形ノウハウの結晶です。『プラスチック成形でこんなものができるんだ』とアピールしていきたいと思っています」

“思い”次第でどこへでも

大学卒業後、13年余りを銀行マンとして過ごした。「仕事はとても面白かった。大小問わず様々な企業の経営者と出会い、上司や同僚にも恵まれ、まさに天職でした。当時は家業を継ぐことは考えておらず、このままいけるところまでいこうと思っていました」

だが、ある出来事が川崎さんの気持ちを大きく変えた。2011年の東日本大震災だ。「人生観が一変しました。いつ何が起こるか分からない。自分はこのままでいいのか。棺桶に入った時、後悔はしないのかと」

勤めていたのは地方銀行。どうしても活躍の場は限定的なエリアになる。一方、「中小企業は、規模は小さくても自分の思い次第でどこへでも行ける。リスクはあるが、やってみる価値はある。チャレンジしたい。そんな気持ちが抑えきれなくなったんです」

震災から半年余りの11年11月に家業に入った。「でも、銀行マンとしての経験は私の貴重な財産です。先輩やお客さんとの付き合いは続いていますし、いつか今の立場から恩返しできればいいですね」

でも……めちゃくちゃ面白いやん!

「ウェットティッシュボトルの時代はもう終わりに近づいている、と私の中では思っています」。川崎さんは強い言葉で話す。

しかし、「『そんな時代だから仕方ない』『脱プラなんてできない』と言っていても何も始まりません。脱プラと共存しながら、バランスを取り、良いものを供給していく。それがプラスチック製品メーカーの使命だと思っています」
「“脱プラ”なんてできない」と言っていても何も始まらない

「“脱プラ”なんてできない」と言っていても何も始まらない

掲げるテーマは“もっと面白い未来へ”。

「どうせやるなら、面白いことをやりたいですよね」

うどんヘルメットには、頭部を保護するほどの強度はない。「今のままだと、しょせん食器です」。だが、「植物由来のセルロースナノファイバーなど、材料を工夫すれば強度アップも可能です。『食器としても防災用としても役に立つ家族分のヘルメットがいつも台所にある』。そうなれば面白いですよね」。川崎さんは目を輝かせる。

「そんな商品、ウソやろ」「よう考えたな」……「でも、めちゃくちゃ面白いやん!」。たとえ万人受けしなくても、まずは一部の人に刺さる。そして、そこから始まっていく。「そんなユニークで面白いものをどんどんつくっていきたいですね」

篠原 正樹

川崎 功雄 | かわさき いさお

略歴
1974年 観音寺市豊浜町出身
1993年 香川県立観音寺第一高校 卒業
1998年 関西学院大学商学部 卒業
     株式会社中国銀行 入社
2011年 川崎化工株式会社 入社
2018年 代表取締役社長 就任

川崎化工株式会社

住所
香川県観音寺市豊浜町和田乙1248番地3
代表電話番号
0875-52-2929
設立
1986年10月
社員数
39人
事業内容
プラスチック成形、バイオマスプラスチック成形、
OEM生産、商品企画販売 他
創業
1967年11月
営業品目
ウエットティッシュ容器、化粧品容器、介護用品、
家具転倒防止器具等のプラスチック製品 他
地図
URL
https://kawasakikako.co.jp/
確認日
2024.12.05

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