“現場”を観光スポットに
2013年に社長に就いた川上正城さん(55)は「ものづくり」が何よりの生きがい。「幾多の苦難と困難を乗り越えて完成へと辿り着く。その時の喜びはたまらないものがあります」
工場見学のメインターゲットは「子どもたちです」。小中学生にも足を運んでもらい、『紙(るび:かみ)育』『屋根育』と題し、見学に加えてものづくりも体験してもらう。毎週金曜日には地元高校の生徒が就業体験に訪れたり、地元中学校で出前講座をしたりと、人的交流も行いながら『紙育』『屋根育』は拡大し続けている。「若い頃にものづくりに触れ、知的好奇心を満たすことはとても大切。長い目で見て、業界の人手不足解消の一助になれば、と期待しています」
『板金ミュージアム』では、戦前戦後に使用された工具や機械など、歴史的・文化的価値のある産業遺産や、金属屋根の変遷や構造を説明するパネルなどを展示。川上板金工業所が過去に4度受賞した「グッドデザイン賞」について紹介している『グッドデザインミュージアム』では、「お〜いお茶」「木工用ボンド」「『はらぺこあおむし』の絵本」などジャンルを問わず、これまでグッドデザイン賞を受賞した様々な商品の展示のほか、建物内に隠された「グッドデザイン」を探す『グッドデザインを探せ』コーナーなどユニークな仕かけもある。川上さんは「これからは『産業観光』にも力を入れていきたい。“ものづくりの現場”を観光スポットとして育てたいですね」と目を輝かせる。
後始末から始まる次の一歩
大学卒業後は大阪のゼネコンに入社。マンション建設などにやりがいを感じ、「そのままずっと勤めるつもりでした」。だが、先代の父や母から「帰ってきて手伝ってくれ」と懇願され悩みに悩み抜いた末、26歳で帰郷した。だが戻って来た途端、目が点になった。
「いわゆる田舎の町工場。足の踏み場もないほど物が散らかっていて。しかも“やんちゃ”な社員ばかりで……」
川上さんはまず、倫理観、道徳観から立て直すことにした。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」を徹底し、「挨拶」「返事」「後始末」を繰り返し呼びかけた。「『後始末』にもいろいろな意味があります。不要なものを処分する、心を整理する……後始末がきちんとできていれば、“次の一歩”を踏み出しやすくなります」
“屋根一筋”で磨きをかける
自然環境も目まぐるしく変化する現在、川上さんは「その時代その時代に適した一番のものをつくっていきたい」と決意を語る。「いつの時代も雨や風をしのぐシェルターとして、建物が人の暮らしを守ってきた。『その建物を守るのが屋根なんだ』という自負を持って、これからも社員たちと一緒に頑張っていこうと思っています」
篠原 正樹
川上 正城 | かわかみ まさき
- 1967年3月 琴平町生まれ
1989年3月 福山大学工学部建築学科 卒業
1989年4月 株式会社森組 入社
1993年5月 有限会社川上板金工業所 入社
2013年1月 株式会社川上板金工業所 代表取締役 就任
- 写真
株式会社川上板金工業所
- 住所
- 香川県まんのう町四条858-1
- 代表電話番号
- 0877-75-5156
- 社員数
- 55人(協力業者25社・120人)
- 事業の概要
- 金属製屋根工事業・設計・製造・販売・施工
- 地図
- URL
- http://www.kawakamibankin.co.jp/index.html
- 確認日
- 2022.09.01
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