特許で実現 オンリーワンの強く、美しい屋根

川上板金工業所 代表取締役 川上 正城さん

Interview

2016.02.04

家業を継ぐ覚悟は子どもの頃から出来ていた。川上正城さん(48)は2013年、川上板金工業所の代表に就任した。同社は、金属加工会社で修業を積んだ川上さんの祖父が1934年に創業。板金の技術を生かし、金属屋根材の開発や施工を手掛けてきた。

「祖父や父が家でも板金の作業をしていたので、よく手伝っていましたね」。川上さんは大学卒業後、建築会社で4年働いて川上板金工業所に入社した。職人は見て覚えろ、手で覚えろ、体で覚えろ。それが現場で教わったことだ。見て覚えたものを昼休みや仕事が終わった後に、自分でも作ってみた。作っては失敗し、また作り・・・を繰り返して勉強した。
ここ5年ほど続けているのは早朝に出社することだ。5時に起きて6時には会社にいる。「遠方の現場になると、従業員の出勤が早い。自分も同じ時間に出ようと始めたのがきっかけです」。四国、中国、近畿地方を中心に物流倉庫や商業施設、工場などの屋根の施工を行う。県外の仕事も多く手掛けるようになったのは「クローザールーフ」の誕生が大きく影響していると言う。

自然災害に強い屋根材を目指して開発した「クローザールーフ」が、2011年にグッドデザイン賞を受賞。更に進化させた「New Z500 クローザールーフ」が13年に、「クローザーZ」が15年に同賞に輝いた。クローザーシリーズは優れた建材・製品としてHEADベストセレクション賞も受賞した。「昨年は2つも賞をいただいて、本当に良い1年でした」。受賞を知った時は思わずガッツポーズが出た。

クローザーシリーズの開発に至ったのは、04年の台風を経験したからだ。この年、四国に6つの台風が上陸した。川上板金工業所は、強風ではがれた体育館の屋根の復旧を依頼された。現場で飛散した屋根を目の当たりにして、台風の恐ろしさを痛感。「台風ゼロ災害」を目標に掲げ、新しい屋根材の開発に取り掛かった。

大きな屋根は、屋根材の「ハゼ」という部分を互いにはめ込んで横につなげて作る。下からの風で吹き上げられた屋根は、吹き上げに抵抗する力を超えると屋根材が左右に広がり、ハゼが外れる。ハゼが外れると屋根は強度を失いバラバラになってしまう。そこで川上板金工業所では、屋根材の側面に吹き上げ防止金具を取り付けられるよう、「リブ」と呼ばれるくびれを施した。金具とリブがかみ合うことで、吹き上げに強くハゼが外れにくくなる。

「様々なメーカーから屋根材が販売されているため、各社の特許に抵触しないよう弁理士のアドバイスを受けながら開発を進めました」。どうせ作るならオンリーワンの商品をと、5年かけてクローザールーフが完成。「抑え投手」を意味するクローザーから名付けた。
課題はやはり技術の継承だ。月に一度は勉強会を開いている。メーカーから講師を招き、新しい屋根材の研究にも余念がない。川上さんは強度と機能とデザイン性を偏りなく備えたものが良い屋根だと考える。「屋根は雨風から人を守るシェルターのようなもの。商品開発を続けて、革新的な屋根を作りたい。将来は東日本まで展開出来れば」

社長室に飾ってある色紙には、川上さんの好きな言葉が書かれている。「一日生きることは、一歩進むことでありたい」。ノーベル物理学賞受賞者の湯川秀樹博士の言葉だと言う。川上さん自身はもちろん、クローザーシリーズもたゆまぬ進化を目指す。

川上 正城 | かわかみ まさき

1967年3月 琴平町生まれ
1989年3月 福山大学工学部建築学科 卒業
1989年4月 株式会社森組 入社
1993年5月 有限会社川上板金工業所 入社
2013年1月 株式会社川上板金工業所 代表取締役 就任
写真
川上 正城 | かわかみ まさき

株式会社川上板金工業所

住所
香川県まんのう町四条858-1
代表電話番号
0877-75-5156
社員数
55人(協力業者25社・120人)
事業の概要
金属製屋根工事業・設計・製造・販売・施工
地図
URL
http://www.kawakamibankin.co.jp/index.html
確認日
2022.09.01

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