ワイナリーとコラボで農業の課題解決
規格外果実を有効活用したワインをシリーズ化

農業経営高校

Interview

2024.12.19

食品ロスへの関心が高まる中、形や大きさなどが基準に満たない“規格外農作物”の廃棄が問題視されている。多様な果樹を栽培する農業経営高校でも、規格外の果実が多数出ており、実習でその有効活用に取り組んでいる。その一つが、さぬき市の「さぬきワイナリー」とのコラボワイン「主基(すき)の恵み」シリーズ。生徒たちは、地域社会と連携し、社会課題の解決を目指す中で学びを深めている。

シリーズ最初のコラボワインは、イチゴ「さぬき姫」を使用して2022年に誕生した。同校では、“農経ブランド”として、収穫した野菜や果物を一般消費者に向けて出荷している。イチゴでは、その1、2割程度、小さいサイズや傷物といった規格外が発生。それらの活用について、同ワイナリーに相談し、開発へとつながった。

商品化には、「県の特産品なので、素材の味や香りを残してほしい」「お酒が苦手な人も飲みやすいワインに」といった生徒の要望が反映された。果実の香りを損なわないよう時間をかけて低温発酵させ、アルコール度数は低めに抑えられた。商品名は、同校創設時の「主基農林学校」に由来する。

販売は好調で、本年は6月に「柿ワイン」、9月に温州ミカンを使った「みかんワイン」をリリース。同ワイナリーによると、特にミカンは、搾るだけでは物足りない仕上がりで、試行錯誤が必要だった。皮を乾燥させ、香りをしっかりと引き出してから醸造することで、香料など使用することなく、高校生が望む柑橘の良い香りを表現した。

発売に合わせ、果樹専攻の3年生は、同ワイナリー売店で試飲販売を実施しPRする。「生徒が消費者と触れ合える貴重な機会。日ごろの実習への向き合い方も変わって来る」と農業生産科果樹部担当の山村智之教諭。

農業就業人口は減少し、高齢化は深刻化。農業を学ぶ同校でも、卒業後の進路に農業を希望する生徒が少ないという現実がある。今回の取り組みを通して、「一人でも多くの生徒が、将来のキャリアに農業という選択肢を加えてくれたら…。または農業を応援する気持ちをはぐくめたら、業界を少しでも盛り上げられる」と期待する。

「みかんワイン」は、500ミリリットル1320円。9月製造分は売り切れ、新たに温州ミカンと富有柿で醸造中、完成次第販売予定という。

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