人々の情熱を結んでいきたい

中小企業基盤整備機構 四国本部長 樋口 光生さん

Interview

2023.10.05

機構に入ったきっかけは、大学時代の夏休みに従事した造園業のアルバイト。「暑い中でのきつい仕事でしたが、会社の皆さんにかわいがってもらって、この人たちのような小さい企業で働く人たちのために何かできることはないかと思ったのがきっかけ」。中小機構で最初の配属は経営セーフティ共済の仕事。「採用面接で、倒産を防ぐことが最も意義のある仕事だと思うと伝え続けたら、直結する業務に携わらせてもらえ、貴重な経験ができたスタートでした」と振り返る。

とことん現場の声を聞く!

最初の転機は人材育成支援業務に携わっていた30代半ば、大幅な制度改正により、国家資格である「中小企業診断士養成課程」をゼロベースで見直すことになった時。約1年で教育プログラムの設計や教材を仕上げ、中小企業庁の了承を得る必要があるタイトなプロジェクトだった。3人のプロジェクトチームで取り組み、樋口さんは得意分野だった製造業のプログラム設計と教材作成を担当した。「中小企業支援を目指す人たちに必要なスキルを確実に習得していただくためのコースを企画・設計する重要なプロジェクトでした。それまで数多くの経営者に会いに行き、現場を見せていただき、いろんな話をうかがって現場目線で考えることを大切にしていたので、現場重視のプログラム設計には多少の自信がありましたが、中小企業の現場に役立つ本質的な理論は何かを見極めようと、毎週末に数冊ずつ本を購入して読みまくりました。人生で一番勉強し、中小企業を支援するためには学習し続けるのが大切だと噛みしめた1年でした」。

現場の声を徹底的に聞く姿勢は、その後も樋口さんの仕事を一貫して支える。東京・大阪で人材育成や経営支援、販路支援に携わる中でも、常に「経営者が何を必要としているか」という企業目線で考え、周囲や若手にもヒアリングの大切さを伝えてきた。

もう一つの転機は、販路支援部で製造業のオープンイノベーションを推進した時。なかなか思うように成果が出ないジレンマの中で、「技術やチャンスを生かすのは、人と人の出会いに尽きる」と学んだ。「どんなに企業間マッチングを進めても、そこに熱い思いを持つ人がいなければ面白いビジネスは生まれません。その経験を踏まえて考えると、香川は県外から来た人たちに『ここで何かしたい』と思わせるものがある土地柄だと感じており、そういう情熱を持つ方々と地域の思いと結び付けたら、きっと面白いことが起きるはず」と意気込む。「職員も同じです。一人一人が楽しんでいるか、義務感ではなく情熱を持って仕事をしているかを常に気にかけています。中小企業の皆さんと接する時も、一方的な支援・被支援関係ではなく、企業や経営者と一緒に考え成長していこうとする熱いマインドを四国本部でも大切にしていきたい」

情熱のつながりが 新しい可能性を生む

4月の着任以降、地域企業を支える支援機関や地域のリーダー的存在と対話することが多く、「担当者の顔が見えにくい大都市圏と違って、密なコミュニケーションで本当のネットワークが生まれそうな手応えがあります。広い視野で柔軟に事業の枠を超えていく取り組みが、いずれ何か形になれば」と期待を込める。「大都市圏とは違った難しい課題があり、今までのやり方ではフィットしない。やはり原点に戻って、どんどん人に会って話を聞き、現場を見て、汗をかいて一緒に解決策を考えるのが大事。1人では無理でも、多くの熱い思いを結べばいろんな可能性が広がります。みんながワクワクできる土壌をつくって、地域に貢献したい」と語った。
四国本部のスタッフと

四国本部のスタッフと

戸塚 愛野

樋口 光生 | ひぐち みつお

略歴
1968年生まれ
1991年 中小企業事業団 入団
2004年 中小企業基盤整備機構に組織統合
2015年 同 販路支援部 参事(マッチング担当)
2020年 同 近畿本部 企業支援部長
2023年 同 四国本部長

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