話を聞き、現場を知ることから

中小企業基盤整備機構 四国本部本部長 上川謙二さん

Interview

2021.06.03

中小企業、ベンチャー企業を、販路開拓や人材育成などさまざまな分野で支援する「中小企業基盤整備機構」(中小機構)は、3つの特殊法人等を統合し2004年に設立された。その3つのうちの一つ「地域振興整備公団」で技術職としてキャリアを積んだ。

エネルギーの主役が石炭から石油に移り、活気を失っていく九州の産炭地域に新たな企業や工場を誘致し、街を再生していく。事業の中で、工事の計画や工場・建物の設計などに携わった。造成工事担当として、現場での経験も積んだ。「工事期間中は、雨がひどくなると落ち着かず、休みの日に現場まで状況確認に行ったこともありました」

街づくりは、長期にわたる仕事。「少しずつ街が変わっていき、工業団地となり経済や人々の暮らしが動き始める。地図に残る仕事というと大げさですが、自分がかかわった工事が完成した時は、技術者として感慨深かった」

新たな分野へ

仮設店舗(熊本県上益城郡益城町)

仮設店舗(熊本県上益城郡益城町)

ずっと技術者として仕事を続けると思っていたが、中小機構の設立を機に経営支援に携わることになった。「最初はとまどいもありましたが、企業のトップの話を聞く機会は貴重です。何より、工場や企業の“現場”を知ることができるのはおもしろい」

整理整頓ができているか、会社の雰囲気はどうかなど、現場にはいろいろな情報がある。まずは、話をじっくり聞く。その上で、現場を見て確かめる。すると「企業が気づいていない課題が見つかることもある。そこに目を向けてもらい、解決の支援をするのが、私たちの役割の一つです」

東日本大震災や熊本地震が起こった際は、技術者としてのキャリアを生かし、店舗を失った事業者たちが入居する仮設事業所整備等の復興支援に携わり、技術面でのアドバイスも行った。「大変な状況の中、一歩ずつ進もうとしている姿に気持ちが引き締まりました」

チームで支援

災害支援の経験から、四国でも災害時にも事業を続けることができるようBCP策定の支援にも力を入れたいと考えている。「BCPというと災害時の対応というイメージが強いですが、コロナ禍のような感染症なども含めた対策、事業継続をサポートしたい」

コロナ禍が落ち着いたら地域の企業をまわり、課題やニーズを聞きたいという。「言われたことだけを受け取り『はい、この支援メニューがあります』というのでは意味がない」。そのためには、自分の担当業務中心になりがちな職員どうしがもっとコミュニケーションを取り、情報を共有しながら、専門家とともにチームで支援に取り組む。他機関の支援内容も理解し、連携を進めることが大切だと考えている。「地域に合った支援を行いながら、全国に発信できるような成功事例をつくっていきたいと思います」

石川恭子

上川 謙二 | かみかわ けんじ

略歴
1962年 福岡県生まれ
1980年 地域振興整備公団(現-中小企業基盤整備機構)入団
2016年 九州本部復興支援部長
2018年 九州本部企業支援部長
2021年 四国本部本部長

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