強烈なにおいと辛さにんにくパワーで町を元気に！

アートな門前町活性化プロジェクト　特産品開発リーダー　西村　直記さん

Interview

2010.12.16

地域活性化

地元食材

観光

ビンのふたを開けると強烈な香りが漂ってくる。観光資源や特産品の開発に取り組む琴平町商工会内「アートな門前町活性化プロジェクト」が手掛けたニンニクたっぷりのみそ「ガーリック侍」だ。
開発を指揮した西村直記さんは楽しそうに語る。「臭すぎて辛すぎる。インパクトがあって面白いじゃないですか！」―

「こんぴらさん」だけじゃない

「『こんぴらさん』だけに頼っていた町を何とかしたかったんです」。去年4月、土産物店、飲食店、観光業、それに琴平町など、異業種の若きリーダーや女性ら約20人が、食や芸術をテーマに「アートな門前町活性化プロジェクト」を立ち上げた。

「磨けば輝くものを町内で探して活性化につなげよう」

そこで注目したのが、琴平町が香川県内一の生産量を誇るニンニクだ。

「琴平が有数のニンニク産地だとは実は知らなかったんです。畑で目にしていた緑の葉っぱはネギだと思っていました･･････」。そこで逆に火がついた。「琴平の特産はニンニクだとみんなに知らせたい」と―。

「丁度いい」は却下

「こんぴらにんにく」。

その特徴は「強烈なにおい」と「強烈な辛さ」だ。

辛さはまだしも、においはどうにかして抑えられないかと考えそうなものだ。しかし、土産物店を営む家庭で育った西村さんは違った。

「ニンニクだと、臭い、辛いといったネガティブな意見は必ず出てきます。そこで敢えて、もっと臭く、もっと辛くしたんです」

試作途中に「おいしい」「丁度いい」という感想があがったものは全て却下。「臭すぎる」「辛すぎる」という意見のものだけを残していった。するとごく一部から「めちゃくちゃおいしい」という声が出始めた。「よし、この方向だ」。西村さんは確信したという。

「嫌いな人は嫌いでいいんです。好きな人にとことんハマってもらおうと。『万人受け』を求めていたら面白いものってできないでしょう?　話のネタになる、インパクトがある、そして遊び心がある。土産物ってそういうものなんです」。試食モニターをお願いしたある女性からは･･････「私たちの意見は何だったの?って怒られました･･････」。

こうして生まれたのが「ガーリック侍」だ。

「規格外」を有効活用

ガーリック侍シリーズにはみそ、しょうゆ、ごまふりかけの3種類がある。

「みそ」は調味料としてではなくそのまま食べる「おかずみそ」。山椒と青唐辛子を利かせ、温かいご飯に、そして肉にも野菜にも合う「焼き肉のたれ」をイメージした。

「しょうゆ」は肉料理の味を引き立てる無着色・無添加の濃い口。

「ごまふりかけ」は麺類などにも合わせられるよう塩分を控えた。

侍シリーズに使っているのは、品質自体に問題はないが傷などがついたため規格から外れてしまったニンニクだ。農家から一定程度の高値で買い取って加工用原料として有効活用している。

また、町内の心身障害者小規模作業所「ねむ工房」の通所者らがニンニクの皮を剥いたり、変色した部分を削ったりする作業を担当してくれている。

ニンニク加工が農家の収入アップや障害者の自立支援なども生み出している。

視野を広げてブランド力強化へ

現在、ガーリック侍シリーズの販売は土産物店や飲食店など琴平町内に限定している。今年7月の発売以来、「みそ」は半年足らずで約1万本を出荷。予想を大幅に上回った。大阪の商社や県外のスーパーなどから「取り扱いたい」という問い合わせも相次いでいる。

ガーリック侍目当てに琴平町へ来てもらうために、今後も町内だけで販売すべきだという声もある。しかし、西村さんは来年からは積極的に外へも売り出していきたいと話す。

「琴平だけを見ていたらダメなんです。農家の人たちも、自分たちが作ったニンニクがたくさん売れると喜んでくれます。視野を広げて、こんぴらにんにくのブランド力をもっと高めていかないと」

そして新たなアイデアもある。来年秋頃の販売を目指して「ニンニクみそ入り肉まん」を現在試作中だ。さらに、中国など海外市場への興味もあるという。

西村さんがまたも楽しそうに語った。

「『食』は大きな武器なんです。地元の味、日本の味を世界にも広めていきたいんです。だって･･････面白いじゃないですか」―